腫瘍が免疫療法で「一時的に大きくなっても」治療が効いている場合があり、誤って中止すると生存期間が約4週間短縮するリスクがあります。
治療反応性(treatment response)とは、患者が受けている特定の治療法に対して、疾患・病変がどの程度の改善効果を示すかという「性質・程度」を指します 。同じ病名・同じ病期のがん患者でも、使用する薬剤によって奏効する人とまったく効かない人が存在します。これが臨床現場で「治療反応性」という概念が重要視される最大の理由です。 oogaki.or(https://oogaki.or.jp/gan/classification/cancer-staging/treatment-response-classification/)
つまり「同じ薬でも患者ごとに効果が異なる」が基本です。
現場では「この薬が効くかどうかを治療前に知りたい」というニーズが非常に高い分野です。
固形がんにおける治療反応性の評価では、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)が世界標準となっています 。2009年に改訂されたRECIST v1.1では、腫瘍の最長径の合計を基準に、以下の4段階で効果を判定します 。 oncolo(https://oncolo.jp/dic/recist)
| 判定 | 略称 | 定義 |
|---|---|---|
| 完全奏効 | CR | すべての標的病変が消失 |
| 部分奏効 | PR | 腫瘍径の合計がベースラインより30%以上縮小 |
| 安定 | SD | PRにもPDにも該当しない状態 |
| 進行 | PD | 腫瘍径の合計が最小値より20%以上増大、かつ5mm以上増大 |
精神疾患領域では、抗うつ薬において「評価尺度(HAM-Dなど)が50%以上改善」した状態を治療反応とすることが多く、がんとは基準がまったく異なります 。 keiwakai-ohda(https://keiwakai-ohda.jp/byoin/greeting/incho_blog/category1/197)
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の普及により、治療反応性の解釈が大きく変わってきました。免疫療法では治療開始後に一時的に腫瘍が大きくなる「偽増悪(pseudoprogression)」という現象が起きることがあります 。 microncro(https://microncro.com/archives/works/blog20231031/)
これは治療が効いていないのではなく、免疫細胞が腫瘍に集積することで画像上の腫瘍サイズが増大して見える現象です。従来のRECIST v1.1でそのままPD(進行)と判定してしまうと、本当は効いている治療を誤って中止してしまうリスクがあります。
これを防ぐために、免疫療法専用の評価基準としてiRECISTが導入されています 。iRECISTでは「仮のPD(uPD)」という概念を設け、4〜8週後の再評価で本当に進行しているかを確認してから治療中止を判断する手順が定められています。偽増悪への対応が、患者の転帰を左右します。 microncro(https://microncro.com/archives/works/blog20231031/)
参考リンク(iRECIST・免疫療法の治療反応性判定基準について詳しく解説)。
がん免疫療法の治療効果判定基準(irRC、irRECIST、iRECIST)| マイクロン
治療反応性を「治療前」に予測することが、現代の個別化医療(精密医療)の核心です。バイオマーカーには目的別にいくつかの分類があり、特定の治療への反応を事前に予測するものは「予測マーカー(predictive marker)」と呼ばれます 。 pmda.go(https://www.pmda.go.jp/files/000155946.pdf)
がん領域では、特定の遺伝子変異(例:EGFR変異、HER2増幅など)の有無が分子標的薬への治療反応性を強く規定します 。遺伝子パネル検査でこうした変異を事前に調べることで、「効く薬から始める」治療戦略が取れるようになりました。これが治療反応性予測の最大のメリットです。 oogaki.or(https://oogaki.or.jp/gan/classification/cancer-staging/treatment-response-classification/)
参考リンク(治療反応性とバイオマーカーの関係を表形式でわかりやすくまとめた解説)。
治療反応性による分類 – あなたのがんに最適な薬を見つけるために | 大垣市民病院
参考リンク(PMDAによるバイオマーカーの使用目的別分類(予測マーカー・代替マーカーなど)の公式資料)。
バイオマーカーの使用目的別の分類と対象 | PMDA
「バイオマーカーが1つあれば治療反応性を予測できる」と考えている医療従事者は少なくありません。しかし実際には、単独マーカーの予測精度には明確な上限があります。
たとえばPD-1抗体治療において、治療前後のPGC-1αの変化率という単独バイオマーカーでの予測率はAUC 0.80でした 。十分に見える数値ですが、複数のリンパ球マーカーを組み合わせたところ、AUC 0.92まで向上したという研究結果があります。これは大きな精度の差です。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19K17673/19K17673seika.pdf)
組み合わせが条件です。
さらに炎症性腸疾患(IBD)の領域では、生物学的製剤への治療反応性の定義が試験ごとに異なり、「同じ薬なのに評価時期や基準がバラバラ」という問題が指摘されています 。この不一致が臨床試験間での比較を難しくしています。日常診療でも、評価基準の選択が治療継続・中止の判断に直結するため、使用する評価ツールを確認する習慣が重要です。 hokuto(https://hokuto.app/post/1TkkZnM6vwzZj282Civ3)
精神科領域での治療反応性は、内科系疾患とは異なる評価フローをとります。治療抵抗性統合失調症(TRS)では、「2種類以上の適切な用量の抗精神病薬を4週間以上使用しても反応が得られない」場合に治療抵抗性と判断します 。抗精神病薬の「適切な用量」の目安はクロルプロマジン換算で600mg/日以上です 。 goryokai(https://goryokai.com/files/libs/3091/202411092011537131.pdf)
この基準は数字として明確です。
重要なのは、治療反応性が「不良」と判断される前に用量と期間が基準を満たしているかを確認することです。用量不足・期間不足のまま「効かない」と判断して次薬に移行するケースは、現実の臨床で起こりやすいミスです。TRS向けの治療薬(クロザピン等)は適切な症例選択がなければ重篤な副作用リスクを高めるため、治療反応性の「正しい評価プロセス」を踏むことが安全な薬物療法につながります 。 goryokai(https://goryokai.com/files/libs/3091/202411092011537131.pdf)
うつ病領域では、症状クラスターによって治療反応性が異なることも示されています。中核的な感情症状クラスターは非定型症状クラスターと比較して抗うつ薬への反応率が有意に高く、薬剤の種類・用量によって奏効率が大きく変化します 。たとえばSSRIでは20〜40mg(フルオキセチン換算)まで効果増加が見込まれ、それ以上はほぼ横ばいという用量反応データが得られています。 keiwakai-ohda(https://keiwakai-ohda.jp/byoin/greeting/incho_blog/category1/197)
症状の種類で戦略を変えることが原則です。
参考リンク(抗うつ薬の用量反応性と症状クラスター別の治療反応率を詳しく解説)。
症状クラスタリングと治療反応性(2)| 石東病院院長ブログ
参考リンク(治療抵抗性統合失調症(TRS)の定義・評価基準・クロザリル適応についての解説資料)。
治療抵抗性統合失調症 治療薬クロザリル | 五稜会病院
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