イフェクサー(ベンラファキシン塩酸塩)には、医療従事者が必ず把握しておくべき重大な副作用が複数存在します。
セロトニン症候群(0.2%)では、不安、焦燥、興奮、錯乱、発汗、下痢、発熱、高血圧、固縮、頻脈、ミオクローヌス、自律神経失調等の症状が現れます。特に他の抗うつ薬との併用時に注意が必要で、体冷却や水分補給等の全身管理が重要です。
悪性症候群(頻度不明)では、無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等があらわれ、これらに続いて発熱がみられる場合があります。高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、急性腎障害を伴い、死亡した例が報告されています。
**抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)**では、低ナトリウム血症、痙攣、意識障害等があらわれることがあり、高齢者や利尿剤との併用時には特に注意が必要です。
心血管系ではQT延長や心室頻拍(torsade de pointesを含む)、心室細動が報告されており、定期的な心電図モニタリングが推奨されます。
国内臨床試験において、イフェクサーが投与された総症例1255例中1028例(81.9%)に副作用が発現しており、その発現率の高さが注目されます。
最も頻度の高い副作用は以下の通りです。
これらの症状は多くの場合、服用開始から数日~数週間で現れ、継続服用により軽減することが多いとされています。しかし、症状が重篤な場合や改善しない場合は、用量調整や薬剤変更を検討する必要があります。
特に消化器症状については、食後投与や制酸剤の併用により軽減可能な場合があります。傾眠やめまいに関しては、転倒リスクの増加に注意し、患者への生活指導が重要です。
ベンラファキシンはノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、心血管系への影響が特に懸念される薬剤です。
血圧上昇は用量依存的に生じる可能性があり、収縮期血圧で平均2-4mmHg、拡張期血圧で平均1-3mmHgの上昇が報告されています。高血圧の既往がある患者では、より顕著な血圧上昇が見られる場合があります。
頻脈も重要な副作用で、心拍数の増加(平均3-5拍/分)が認められます。動悸として患者が自覚する場合も多く、不整脈のリスクも考慮する必要があります。
高血圧クリーゼ(頻度不明)は生命に関わる重篤な副作用で、血圧の推移等に十分注意しながら投与することが必要です。特に高血圧の既往がある患者や、他の昇圧作用を有する薬剤との併用時には注意深い監視が必要です。
監視方法として、投与開始時および増量時には定期的な血圧測定と脈拍測定を実施し、異常が認められた場合には投与中止や適切な降圧治療を検討します。
イフェクサーの投与中止時には、特徴的な離脱症候群が現れる可能性が高く、適切な中止プロトコルの遵守が重要です。
中止後症状として以下が報告されています。
これらの症状は突然の中止により現れやすく、brain zapと呼ばれる特有の電撃様感覚も特徴的です。症状は中止後24-48時間以内に現れることが多く、数日から数週間持続する場合があります。
適切な中止方法として、国内第3相試験では以下のプロトコルが用いられました。
中止時症状が強い場合は、前の用量に戻して症状の改善を図り、より緩やかな減量スケジュールを検討することが推奨されます。
イフェクサーでは、重篤な血液系副作用の発現に注意が必要で、定期的な血液検査による監視が重要です。
無顆粒球症(頻度不明)は、白血球数、特に好中球の著明な減少により感染症のリスクが高まる重篤な副作用です。発熱、咽頭痛、口内炎などの感染症状が初期症状として現れることがあります。
再生不良性貧血(頻度不明)では、骨髄の造血機能低下により赤血球、白血球、血小板のすべてが減少します。疲労感、息切れ、出血傾向、感染しやすさなどの症状が現れます。
汎血球減少症(頻度不明)も同様に全血球系統の減少を特徴とし、早期発見・治療が重要です。
好中球数減少(0.2%)および血小板数減少(0.2%)も報告されており、これらは比較的軽度であることが多いものの、継続的な監視が必要です。
検査スケジュールとして、投与開始前、開始後1-2週間、1ヶ月、その後は3ヶ月毎の血液検査実施が推奨されます。異常値が認められた場合は、検査頻度を増やし、重篤な場合は投与中止を検討します。
臨床検査値異常では、肝機能検査値異常が10.0%の頻度で報告されており、AST、ALT、γ-GTPの定期的な監視も重要です。