抗生物質は作用機序により大きく3つに分類されます 。
参考)https://todokusuri.com/column/post_20231227/
細胞壁合成阻害薬は最も代表的なグループで、ペニシリン系・セフェム系・カルバペネム系が含まれます 。これらは細菌が持つ細胞壁の合成を阻害することで殺菌効果を発揮し、人間には細胞壁がないため比較的安全性が高い特徴があります 。
参考)http://e-matsumoto.ftw.jp/u38044.html
参考)https://www.jda.or.jp/park/trouble/index25_04.html
参考)https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/luncheon_2020_03.pdf
タンパク質合成阻害薬には、マクロライド系・アミノグリコシド系・テトラサイクリン系があります 。細菌の増殖に必要なタンパク質合成を妨げることで効果を発揮し、細胞壁を持たないマイコプラズマなどの非定型細菌にも有効です 。
抗生物質の適切な選択には、病原菌の種類と薬剤感受性を考慮することが重要です 。
参考)https://amr.jihs.go.jp/medics/2-5-1.html
感染症の種類別に第一選択薬が決められており、例えば呼吸器感染症ではアンピシリンやアモキシシリン、尿路感染症ではニューキノロン系やST合剤が推奨されます 。マイコプラズマ肺炎のような非定型肺炎では、ペニシリン系やセフェム系では効果が期待できないため、マクロライド系抗生物質が第一選択となります 。
参考)https://www.matsuyama.jrc.or.jp/wp-content/uploads/pdfs/mr2_05.pdf
PK-PDパラメータに基づいた投与方法の最適化も重要です :
抗生物質の副作用で最も頻繁に見られるのは消化器症状、特に下痢です 。これは腸内細菌叢のバランスが崩れることにより生じ、特に小児に多く見られます 。
参考)https://www.premedi.co.jp/%E3%81%8A%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3/h00055/
主な副作用。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/495daee8ee0da05a9570e4ff8549d7aea5ca13b7
ペニシリン系・セフェム系抗生物質では、交差過敏反応のリスクがあるため、過去にアレルギー歴がある患者では慎重な投与が必要です 。また、妊娠中の抗菌薬使用では胎児への影響を考慮し、安全性の確立された薬剤を選択することが重要です 。
参考)https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3098249
薬剤耐性(AMR)は現在、世界的な健康脅威として「サイレントパンデミック」と呼ばれています 。2050年には年間1,000万人がAMR関連で死亡すると予測されており、がんによる死亡者数を上回る深刻な問題です 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html
耐性化のメカニズムには4つの主要な経路があります :
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfm/31/2/31_57/_article/-char/ja/
対策と予防。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001155035.pdf
参考)https://www.mdpi.com/2079-6382/10/11/1284/pdf
近年注目されているのは、抗菌薬以外の代替治療法の開発です。従来の抗菌薬治療に加え、プロバイオティクス、ファージセラピー、CRISPR技術を用いた新たなアプローチが研究されています 。
参考)https://www.mdpi.com/2079-6382/11/2/200/pdf
食品安全の観点からも抗生物質の使用には注意が必要で、畜産業での抗菌薬使用が食品を介した耐性菌の拡散につながる可能性があります 。このため「ワンヘルス」アプローチとして、人・動物・環境を包括的に捉えた対策が国際的に推進されています 。
参考)https://www.mdpi.com/2673-947X/4/3/24/pdf?version=1722505414
医療経済的影響も深刻で、耐性菌による感染症は治療期間の延長、医療費の増加、患者予後の悪化を招きます 。この問題を解決するため、迅速診断技術の向上や新規抗菌薬の開発が急務となっていますが、製薬企業の開発意欲が低下している現状もあり 、官民連携による取り組みが重要となっています。
参考)https://credentials.jp/2024-02/special/
抗生物質は現代医療に欠かせない重要な薬剤ですが、適正な使用により将来世代にも有効な治療選択肢を残すことが私たち全員の責任といえます 。
参考)https://amr.jihs.go.jp