IL-18阻害薬はアトピー性皮膚炎でも炎症型の場合にのみ効果を発揮します。
IL-18の過剰産生が関与する代表的な疾患には、成人発症スティル病(AOSD)、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデスなどがあります。特にAOSD患者では血清IL-18が著しく高値を示すことが知られており、疾患活動性のバイオマーカーとしても注目されています。 jichi.ac(https://www.jichi.ac.jp/alle/%E6%95%99%E6%8E%88%E3%81%B6%E3%82%8D%E3%81%90%EF%BC%88%E8%B6%85%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E6%8E%B2%E8%BC%89%EF%BC%89/%E7%A7%81%E7%9A%84%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%AD%A6%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81-52%E3%80%80%E3%83%92%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%80%803-%E4%B8%80/)
IL-18は、肥満細胞や好塩基球に直接作用してアレルギー応答の効果分子であるヒスタミンの放出を誘導します。また、IL-12と協働してインターフェロン-γ(IFN-γ)を誘導する因子としても同定されており、Th1型免疫応答の促進にも関与します。 jst.go(https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei14/pdf/pdf08/08_1/004.pdf)
アトピー性皮膚炎患者の血清IL-18は有意に高値であることが複数の研究で判明しており、IL-18がアトピー性皮膚炎の引き金を引く可能性が示唆されています。皮膚ケラチノサイトからの過剰なIL-18産生は、IgE非依存的に直接的に肥満細胞や好塩基球を刺激してヒスタミン産生を誘導することでアトピー性皮膚炎を発症させることが動物実験で明らかになっています。 jst.go(https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei16/pdf/pdf12/12_1/004.pdf)
これらの知見から、過剰なIL-18を標的とした治療戦略が、従来の治療法で効果不十分な患者に対する新たな選択肢として期待されています。
IL-18阻害薬として最も開発が進んでいるのは、Tadekinig alfa(タデキニグアルファ)です。Tadekinig alfaは遺伝子組み換えヒトIL-18結合タンパク質製剤で、過剰に産生されたIL-18に特異的に結合することでIL-18に関連する免疫・炎症反応を抑制します。 nippon-shinyaku.co(https://www.nippon-shinyaku.co.jp/news/news.php?id=3284)
この薬剤は主要な炎症メディエーターであるIL-18に高親和性で結合する組換えインターロイキン-18結合タンパク質(r-hIL-18BP)であり、皮下投与で使用されます。Tadekinig alfaの投与により、遊離IL-18を除去することで、IL-18/IL-18BPのバランスを回復させ、炎症を抑制する仕組みです。 value-press(https://www.value-press.com/pressrelease/264343)
現在、スイスのAB2 BIO社がNLRC4異常症およびXIAP欠損症を期待適応症として欧米で開発を進めています。NLRC4異常症とXIAP欠損症は、多くが乳幼児期に発症し、生涯にわたり炎症が持続する疾患です。両疾患に対する特異的な治療薬はこれまで上市されておらず、新たな治療法が強く求められていました。 iyakutsushinsha(https://iyakutsushinsha.com/2025/01/28/nlrc4%E7%95%B0%E5%B8%B8%E7%97%87%E3%83%BBxiap%E6%AC%A0%E6%90%8D%E7%97%87%E6%B2%BB%E7%99%82%E8%96%AC%E3%81%AE%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%A7%E3%81%AE%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E7%9A%84%E5%95%86%E6%A5%AD%E5%8C%96/)
開発状況としては、AB2社が北米と欧州における第III相試験を既に終えており、現在、米国での承認申請に向けて準備を進めています。本剤は米国でオーファンドラッグ指定、ブレイクスルーセラピー指定および希少小児疾患指定を受けているほか、欧州でもオーファンドラッグ指定を受けています。 nippon-shinyaku.co(https://www.nippon-shinyaku.co.jp/ir/ir_news.php?id=3284)
2025年1月には、日本新薬がAB2社と米国における独占的な商業化に関するオプション契約を締結したことが発表されました。日本新薬がオプション権を行使し、AB2社が米国で承認を取得した場合、日本新薬の米国子会社が販売することになります。 answers.and-pro(https://answers.and-pro.jp/pharmanews/29468/)
これは本邦で発見されたIL-18を、癌免疫応答を増強する医薬品として実用化することへの臨床医学的意義がきわめて大きいという背景もあります。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07305/)
IL-18阻害薬のアトピー性皮膚炎に対する治療効果については、基礎研究と臨床試験の両面から明らかになってきています。
基礎研究では、アトピー性皮膚炎の病態を「炎症型アトピー性皮膚炎」と提唱する知見が報告されています。この炎症型アトピー性皮膚炎に対しては、IL-18中和抗体あるいはIFN-γ中和抗体の投与により、臨床的にも組織学的にも強く抑制されることが動物実験で確認されました。つまり炎症型に限られます。 jst.go(https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei16/pdf/pdf12/12_1/004.pdf)
重要な点として、IL-13のシグナルを阻止しても皮膚炎は軽減しなかったという結果から、炎症型アトピー性皮膚炎に対しては、IL-18やIFN-γを標的とした治療法が有用であることが示唆されています。IL-18中和抗体を投与することで、SpA誘導性アトピー性皮膚炎が臨床的にも組織学的にも完全に抑制されたという報告もあります。 jst.go(https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei17/pdf/a17/f01/s004.pdf)
臨床試験では、抗IL-18抗体であるアレテキツグ(aretekitug)がアトピー性皮膚炎に対する効果を示しています。生物学的製剤未使用または既存治療で効果不十分な患者を対象とした臨床試験において、アレテキツグの効果が24週間持続することが確認されました。 academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/77695ccb-366a-4b53-a740-2c0a9a497ed0)
IL-18はアトピー性皮膚炎患者の血清および皮膚組織で上昇が認められており、疾患活動性との関連が指摘されています。IL-18はマスト細胞や好塩基球に直接作用してヒスタミンの放出を促進するため、IL-18を阻害することで掻痒感の軽減にもつながると考えられています。 note(https://note.com/sakatotakashi/n/naad2d0cd6869)
ただし、すべてのアトピー性皮膚炎患者にIL-18阻害薬が有効というわけではなく、IL-18の過剰産生が主な病態メカニズムとなっている炎症型のアトピー性皮膚炎に特に効果が期待されます。従来のTh2型免疫応答が主体の典型的なアトピー性皮膚炎とは異なる病態であることを理解しておく必要があります。
成人発症スティル病(AOSD)は、IL-18の過剰産生が最も顕著に認められる疾患の一つです。AOSD患者では血清IL-18が著しく高値を示し、疾患活動性と相関することが知られています。 jichi.ac(https://www.jichi.ac.jp/alle/%E6%95%99%E6%8E%88%E3%81%B6%E3%82%8D%E3%81%90%EF%BC%88%E8%B6%85%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E6%8E%B2%E8%BC%89%EF%BC%89/%E7%A7%81%E7%9A%84%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%AD%A6%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81-52%E3%80%80%E3%83%92%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%80%803-%E4%B8%80/)
興味深いことに、AOSD患者が「血清IL-18が高値なのに、IL-6経路を抑制しておけば何の自覚症状も示さなかった」という臨床観察があります。これはIL-6の下流にIL-18があるということではなく、IL-18とIL-6が独立した経路で病態に関与していることを示唆しています。 jichi.ac(https://www.jichi.ac.jp/alle/%E6%95%99%E6%8E%88%E3%81%B6%E3%82%8D%E3%81%90%EF%BC%88%E8%B6%85%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E6%8E%B2%E8%BC%89%EF%BC%89/%E7%A7%81%E7%9A%84%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%AD%A6%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81-52%E3%80%80%E3%83%92%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%80%803-%E4%B8%80/)
Tadekinig alfaは、成人型スティル病の治療薬としても治験が行われています。本剤は遺伝子組換えインターロイキン-18結合タンパク質製剤として、IL-18/IL-18BPのバランスを回復させることで炎症を抑制します。 value-press(https://www.value-press.com/pressrelease/264343)
IL-18結合タンパク質(IL-18BP)は、IL-18の自然内因性阻害剤であり、治療剤としての使用のための理想的な候補と考えられています。IL-18BPはIL-18に高親和性で結合し、IL-18が受容体に結合するのを阻害することで、その生物学的活性を中和します。 dbsearch.biosciencedbc(https://dbsearch.biosciencedbc.jp/Patent/page/ipdl2_JPP_an_2010119645.html)
IL-18阻害薬は、従来の免疫抑制療法やステロイド療法で十分な効果が得られないAOSD患者に対する新たな治療選択肢として期待されます。特に、IL-18が高値で疾患活動性が高い患者において、より大きな治療効果が期待できる可能性があります。
IL-18と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との関係は、がん免疫療法の文脈で重要な意味を持ちます。
IL-18は免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を増強することが研究で示されています。IL-18の併用により誘導される活性化NK細胞がI型樹状細胞の局所への動員を通じて抗腫瘍効果の増強に重要な役割を果たすことが明らかになりました。また、IL-18は抗腫瘍免疫を損なうことなく、肝臓における自己免疫性組織障害に対する保護作用を示すことも確認されています。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07305/)
しかし一方で、免疫チェックポイント阻害薬による治療には、免疫関連有害事象(irAE)という特有の副作用があります。irAEには肝傷害、内分泌障害、大腸炎などの重篤なものに加えて致死例も報告されています。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19K07741/19K07741seika.pdf)
免疫チェックポイント阻害薬による肝傷害は、炎症性細胞の浸潤に伴う自己炎症性の組織破壊であることが、マウスモデルを用いた解析から明らかになっています。また、肝臓においてIL-18が自然リンパ球を介して組織障害に関与していることも示されました。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19K07741/19K07741seika.pdf)
これらの知見から、IL-18阻害薬はがん免疫療法において二つの側面を持つことがわかります。一方では、IL-18の適切な活性化が免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を増強する可能性があり、他方では、過剰なIL-18産生がirAEの発症に関与する可能性があります。
したがって、がん免疫療法におけるIL-18阻害薬の使用は、抗腫瘍効果を損なわずにirAEを軽減できるかどうかという観点から、慎重に検討する必要があります。現時点では、IL-18を癌免疫応答を増強する医薬品として実用化することの臨床医学的な意義がきわめて大きいと考えられています。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07305/)
IL-18阻害薬の開発において、構造生物学的アプローチは極めて重要な役割を果たしています。
今後は、この構造情報を基に、より高い特異性と親和性を持つ次世代IL-18阻害薬の開発が期待されます。また、特定の疾患における病態メカニズムに応じて、IL-18シグナル経路の特定のステップを選択的に阻害する戦略も考えられます。