医療従事者向けに「自作お薬手帳」を説明する際は、まず“形より中身”を強調すると通りが良いです。厚生労働省資料では、お薬手帳は「服用歴を記載し、経時的に管理するもの」であり、医師・薬剤師が確認することで相互作用防止や副作用回避に役立つ位置づけが示されています。
自作で最低限押さえる「必要事項」は、厚生労働省の定義(手帳欄として備える事項)に沿って整理するのが安全です。具体的には、①氏名・生年月日・連絡先等、②アレルギー歴・副作用歴等、③主な既往歴等、④日常的に利用する保険薬局の名称や連絡先等です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/93d89e106e116321f35ae840df74d935ca787d7f
現場で実際に困りやすいのは「情報があるのに探せない」状態なので、必要事項ページは先頭固定を推奨します。自作の自由度を活かし、先頭見開きに“医療者が一瞬で拾える順番”で配置すると、救急外来・休日当番薬局の場面で効きます(例:氏名→緊急連絡先→アレルギー→副作用→既往歴→抗凝固薬など注意薬の有無)。
意外に盲点なのが「連絡先」の扱いで、患者本人の携帯だけでなく、同居家族やキーパーソンの連絡先も同欄に収めると“服薬継続が難しい状況”で支援につながります。厚労省の“連絡先等”は形式を限定していないため、自作では欄設計で補強できます。
参考:お薬手帳の法令上の定義、必要事項(①〜④)の具体的な列挙
厚生労働省「お薬手帳について」(PDF)
自作お薬手帳の運用で最優先は「一人一冊」です。All About(薬学部教授の解説)でも、家族で一冊にまとめると情報の取り違いが起きるため避けるべき、と明確に注意されています。
医療現場では、混在が起きると相互作用チェック以前に「この薬剤情報が誰のものか」という同定作業が発生し、確認コストが跳ね上がります。結果として“せっかく持参したのに使い切れない”状況になりやすく、患者の期待も外れてしまいます。
自作ならではの対策として、表紙・背表紙・最初のページに氏名(ふりがな)を大きく、同じ書式で繰り返すのが有効です。さらに、小児や高齢者では「写真(顔)」を貼る運用も、介護者交代や施設入退所の場面で取り違えを減らします(個人情報なので管理は慎重に、持ち歩き範囲の合意を取る)。
一人一冊を徹底した上で、家族全体の薬剤情報を俯瞰したいニーズがある場合は、手帳を共有するのではなく“家族用の別紙一覧”として管理し、受診時に必要な人の手帳だけを提示する運用が安全です。自作の自由度は「混ぜる」ではなく「分けて持つ」を支える方向で使うのがコツです。
参考:自作のお薬手帳は可能だが「一人一冊」など注意点、必要項目の例
All About「自作OK! オリジナル『お薬手帳』を作るときのポイント・注意点」
自作お薬手帳は、薬局で受け取る薬剤情報の「シール」を貼る運用と相性が良いです。All Aboutでも、自作手帳であっても窓口でシール貼付を先にお願いすれば通常通り対応してもらえる、またはシールを受け取って後で自分で貼ってもよい、とされています。
医療従事者として患者へ案内するなら、どちらの運用にもメリット・デメリットがある点まで伝えるとトラブルが減ります。窓口貼付は“貼り忘れが減る”一方、ページのこだわりが強い人は“貼る場所を決めたい”ので受け取り貼付の方が継続しやすいです。
自作のページ設計は、シールの標準サイズと貼り替えを前提にすると実務的です。具体的には、1受診(または1処方)を1ブロックにして、シールを貼った横に「服用開始日」「中止理由」「眠気・胃部不快感などの体感」「残薬」を短く追記できる余白を用意します(医療者が読める粒度で、短文が良い)。
また、意外に効果が高いのが“貼る順番ルール”です。時系列(古い→新しい)を統一するだけで、救急時に「最新の薬はどれか」が瞬時に判別でき、患者説明の時間も短縮できます。厚労省資料でも“経時的に管理”が核なので、自作では時系列の視認性を最優先に設計します。
自作お薬手帳の価値が最も出やすいのは、処方薬だけでなく市販薬やサプリメントまで含めた“生活側の情報”を同じ場所に集約できる点です。All Aboutでは、市販薬やサプリメント、健康食品などの商品名や利用歴をお薬手帳に書いておくと、併用リスクを薬剤師が確認できる、と具体例付きで推奨されています。
医療従事者向けの観点では、ここは患者教育の伸びしろです。患者は「病院の薬だけ伝えれば十分」と思いがちですが、実務ではNSAIDsの重複、総合感冒薬の成分重複、鎮静系サプリの追加などが“思わぬ副作用”や“効き過ぎ”につながることがあります(個別薬剤の是非判断は医師・薬剤師へ、という前提で、記録の必要性を伝える)。
自作の記載欄は、商品名だけでなく“目的”もセットにすると医療者が解釈しやすくなります。例として「眠れない→睡眠目的サプリ」「花粉→抗ヒスタミンOTC」「胃もたれ→制酸薬」など、患者の主観的な目的が分かると、同系統薬の重複や生活背景の推測がしやすくなります。
さらに“意外な情報”として、厚生労働省資料では電子版お薬手帳の文脈で、処方・調剤情報に加えてOTC医薬品情報も含めた一元管理が可能であること、OTC登録を簡便にする仕組み(JANコード読み取り機能の活用)が触れられています。紙の自作でも、バーコード部分を切り抜いて貼る、購入レシートを貼って商品名を担保するなど、低コストで“同じ発想”を再現できます。
参考:電子版お薬手帳で、OTC情報も含めた一元管理や、JANコード読み取り活用に言及
厚生労働省「お薬手帳について」(PDF)
自作お薬手帳を“医療者の仕事を増やすもの”にしない独自視点として、私は「観察ログを短文化して残す」運用を勧めます。厚労省資料が示す通り、お薬手帳の中核は服用歴の経時管理と、副作用回避・相互作用防止への寄与なので、患者の体感変化が時系列で残るだけで臨床判断の材料が増えます。
ポイントは、長文の日記ではなく、医療者が拾える定型フォーマットに落とすことです。例えば、✅「飲み忘れ:週1回」、✅「眠気:開始2日目から」、✅「便秘:増悪」、✅「中止:自己判断ではなく相談」など、短いラベルで記載します(読み手が医療者なので、主観はOKだが“いつから”“どれくらい”を添えると使える情報になります)。
自作なら「色のルール」も実装しやすいです。例:副作用っぽい症状は赤、効果実感は青、生活上の困りごとは緑、のように単純化すると、再診時にページをめくるだけで要点が浮き上がります(カラーペンが難しい人は、シールや絵文字でも代替可能)。
最後に、医療従事者が患者に伝えるべき“線引き”も明確にしておくと安全です。自作お薬手帳は受診・調剤の質を上げる補助ツールであり、自己判断での中止・増減を正当化する道具ではないこと、異常があれば医師・薬剤師へ相談することを、最初のページに注意書きとして入れると運用が安定します。