総合感冒薬は、風邪の11症状(頭痛・発熱・のどの痛み・筋肉の痛み・関節の痛み・悪寒・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・せき・たん)を総合的に緩和する目的で設計された医薬品です 。これらの薬には、症状別に効果を発揮する複数の有効成分が組み合わせて配合されています 。
参考)https://www.apha.jp/faq/entry-33.html
解熱鎮痛成分としては、アセトアミノフェン、アスピリン、エテンザミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリンなどが使用されています 。これらの成分は熱を下げ、喉・筋肉・関節の痛みを改善する効果があります 。特にイブプロフェンは他の成分に比べ炎症をおさえる作用が強く、イソプロピルアンチピリンは解熱作用が強力なピリン系の成分です 。
抗ヒスタミン成分には、クロルフェニラミンマレイン酸塩やジフェンヒドラミンなどがあり、鼻水やくしゃみをやわらげる働きをします 。ただし、これらの成分は眠気や口の渇きといった副作用を引き起こすことが知られています 。
鎮咳成分として、デキストロメトルファン、ノスカピン、チペピジンが一般的に使用されています 。さらに効果の強い麻薬系鎮咳薬として、リン酸コデインやジヒドロコデインがあり、これらは咳止め効果が強力です 。
2018年より、12歳未満の小児はコデイン類を含む製剤の服用が禁忌となりました 。また、メチルエフェドリンは気管支を広げる作用があり、喘鳴(ぜいぜい)がある時に有効な成分です 。
去痰成分としてはグアイフェネシンが配合されることが多く、痰の排出を促進する働きがあります 。これらの成分により、咳や痰といった気道症状への総合的なアプローチが可能となっています 。
参考)https://www.komedayakuhin.jp/products/%E6%96%B0%E7%B7%8F%E5%90%88%E6%84%9F%E5%86%92%E8%96%ACa%E5%BE%AE%E7%B2%92/
総合感冒薬には、カフェインやリボフラビン(ビタミンB2)なども配合されることがあり、風邪の時に消耗しやすい栄養素の補給や、眠気の軽減に役立っています 。
総合感冒薬で最も多い副作用は皮膚の発疹などのアレルギー反応です 。重篤な場合にはショック症状を起こし、冷や汗、血圧低下、息苦しさが出現することもあります 。特にピリンアレルギーや薬剤アレルギーの既往がある方は、非ピリン系の風邪薬を選択することが推奨されます 。
抗ヒスタミン成分による眠気は頻繁に見られる副作用であり、車の運転時には十分な注意が必要です 。また、稀に排尿障害や閉塞隅角緑内障の患者では眼圧上昇が認められる場合があります 。
解熱鎮痛成分により胃腸の調子が悪くなることがあるため、食後の服用が基本とされています 。コデイン系の鎮咳成分を含む製剤では便秘が起こることもあります 。
まれに重篤な症状として、ショック(アナフィラキシー)や皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)を起こすことが報告されており、これらの症状が現れた場合は直ちに服用を中止し、医療機関での治療が必要です 。
参考)https://www.jsmi.jp/selfmedication/qa/kanbou.html
高齢者における総合感冒薬の使用には、特に注意が必要な点があります 。全日本民医連の副作用モニターによると、過去1年間に報告された総合感冒剤の副作用症例24件のうち、70歳以上の高齢者の報告は12件で、そのうち半数の6件がせん妄などの精神神経系の副作用でした 。
参考)https://www.min-iren.gr.jp/news-press/shinbun/20110718_15241.html
高齢者では、抗ヒスタミン薬による眠気がより強く現れる傾向があります 。実際に80歳代の患者が市販の風邪薬を昼に服用したところ、夕方になっても強い眠気が続いた事例も報告されています 。
参考)https://amanuma-naika.jp/blog/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AF%E9%A2%A8%E9%82%AA%E8%96%AC%EF%BC%88%E7%B7%8F%E5%90%88%E6%84%9F%E5%86%92%E8%96%AC%EF%BC%89%E3%82%92%E6%9C%8D%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%BB%E3%81%86
体内のアセチルコリンの量は加齢とともに減少するため、高齢者は抗コリン作用を起こしやすくなります 。その結果、抗コリン作用薬を服用するとアセチルコリンが高率に遮断され、せん妄などの精神症状が現れやすくなります 。
高齢者で特に問題となるのは、第一世代抗ヒスタミン薬による転倒リスクの増加です 。眠気やだるさにより歩行時の転倒リスクが高まる可能性があり、また前立腺肥大症の高齢男性では尿が出にくくなる副作用により、腹痛を起こして救急搬送される事例も報告されています 。
参考)https://www.yokohamakouhokujibika.jp/weblog-2022-09-15/
総合感冒薬を選ぶ際は、主な症状に応じて成分の配合を確認することが重要です 。頭痛・発熱・のどの痛み・筋肉の痛み・関節の痛み・悪寒には消炎鎮痛解熱剤系の成分が多く含まれる薬が適しており、くしゃみ・鼻水・鼻づまりには鼻炎系の成分、せき・たんには鎮咳去痰系の成分が多く配合された薬を選択すると効果的です 。
参考)https://osakahu.com/20241203-kazeadobaisu/
常備薬として選ぶ場合は、家族全員が使用できる年齢範囲をカバーしているかを確認しましょう 。例えば、5歳から服用できる製剤であれば、家族全員で共有して使用することができます 。
参考)https://24.rakuten.co.jp/healthcare/campaign/column/14/
服用回数や剤形も重要な選択要因です 。1日2回で効果が持続する持続型の総合感冒薬は、仕事で忙しい社会人にとって便利な選択肢となります 。また、眠気の有無を確認し、運転や重要な作業がある場合は眠気の少ない成分を選ぶことが大切です 。
参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/cold-medicine-ranking/
漢方成分を配合した総合感冒薬もあり、生薬の効果を期待する場合には葛根湯エキスなどが含まれた製剤を選択することもできます 。症状が4~5日続いても改善しない場合や、黄色の鼻汁・痰やリンパ腺の腫れ、高熱などの細菌感染が疑われる症状がある場合は、医療機関での診察を受けることが推奨されます 。