女性ホルモンとエストロゲンプロゲステロンの働き

女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンは、月経周期や更年期症状、骨粗しょう症予防など女性の健康に重要な役割を果たしています。ホルモンバランスの乱れは様々な不調を引き起こしますが、どのような対策が有効なのでしょうか?

女性ホルモンの基本的な働き

女性ホルモンの重要な役割
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エストロゲンの機能

子宮内膜の増殖、骨形成促進、血管の健康維持

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プロゲステロンの機能

着床環境の整備、基礎体温上昇、乳腺発達

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月経周期の調節

視床下部-脳下垂体-卵巣の連携による精密な調整システム

女性ホルモンエストロゲンの多彩な機能

女性ホルモンのエストロゲンは「美人ホルモン」と呼ばれることもあり、女性の健康と美容に広範囲な影響を与えています 。エストロゲンの主要な働きには、子宮内膜を厚くして妊娠の準備を整える機能、乳房の発育を促進する作用、骨を形成する働きがあります 。
参考)https://ena-nihonbashi.com/column/kounenki/2524/

 

さらに、エストロゲンは自律神経を調整し、肌のつやを良くする美容効果も持っています 。血管や骨などを健康な状態に保ち、コラーゲンの生成を促進することから、女性の若々しさを保つ重要な役割を担っています 。最も多く分泌されるのは20代で、更年期になると徐々に分泌量は低下していきます 。
エストロゲンには骨の形成を促し、骨の吸収(古い骨を壊す)を抑える働きがあるため、骨粗しょう症の予防に重要な役割を果たしています 。また、排卵前に精子が通りやすくなるよう子宮頸管の分泌液を増やし、妊娠中に乳汁が出るのを抑える機能も持っています 。
参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/bijin/shittemiyo/body.html

 

女性ホルモンプロゲステロンの重要な役割

プロゲステロンは黄体から分泌されるため黄体ホルモンと呼ばれ、基礎体温のコントロールや子宮内膜の維持などの重要な役割を持っています 。生理周期において基礎体温と同じタイミングで分泌量を変化させるのが特徴です 。
プロゲステロンの主な働きには、基礎体温を上げる機能、子宮内膜の環境を整えて着床しやすい状態を維持する作用、乳腺を発達させる働き、排卵を止める機能があります 。排卵後の卵胞は黄体化し、プロゲステロンが分泌され、妊娠しなければ黄体は白体化し、エストロゲンもプロゲステロンも低下します 。
参考)https://www.meno-sg.net/health/life_career/1054/

 

プロゲステロンは、エストロゲンによって厚くなった子宮内膜に作用して、受精卵が着床しやすい状態に整える重要な機能を持っています 。妊娠時には子宮内膜を維持し、体温を上昇させる働きがあるため、その変化によって排卵の有無やその時期のチェックができます 。

女性ホルモン分泌の精密な調節メカニズム

女性の体は、視床下部-下垂体-卵巣-子宮が協調して働くことにより、正常月経周期が成立しています 。この調節は上位中枢から下位へ向かう一方向のみでなく、卵巣で分泌されたステロイドホルモン(エストロゲン)が上位中枢に上行性に作用する複雑なシステムです 。
参考)https://www.jaog.or.jp/lecture/7-%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%91%A8%E6%9C%9F%E3%81%A8%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0/

 

視床下部で合成されたGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)は、刺激によって下垂体門脈中に分泌されます 。下垂体門脈を通って下垂体前葉に達したGnRHはGnRHレセプターに結合してLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)の合成、分泌を促します 。
このエストラジオールは視床下部および下垂体に作用し、GnRHおよびLH、FSHの分泌を調節しています 。この機構をフィードバック機構といい、視床下部-下垂体-卵巣系がそれぞれに影響しながら、微妙な調節系を作っています 。

女性ホルモンの月経周期による変動パターン

女性ホルモンの分泌は28日周期を基準として周期的に変化し、生理期間、卵胞期間、排卵期、黄体期の4つの段階に分けられます 。生理期間(1-5日目)では、エストロゲン、プロゲステロンともに分泌量は少ない状態です 。
参考)https://www.torch.clinic/contents/1848

 

卵胞期間(6-14日目)には、エストロゲンが徐々に増加して11日目を過ぎた頃にピークを迎えます 。この時期に卵巣内の卵胞が成長し、子宮内膜の厚みが増加します 。プロゲステロンの分泌量は少ないままを維持しています 。
排卵期(14日目前後)では、エストロゲンは排卵日後急激に減少し、プロゲステロンは排卵日後に急激に増加します 。黄体期(15-28日)には、エストロゲンは一度低下した後、再び緩やかに増加して減少していきます 。プロゲステロンは排卵後に急激に分泌量が増加してピークを迎え、子宮内膜を着床しやすいように変化させ、基礎体温が上がり高温期になります 。

女性ホルモン減少による骨粗しょう症リスクの増加

女性ホルモンのエストロゲンには骨芽細胞を活発にする働きがあるため、エストロゲンの分泌が減少すると骨形成が低下して骨吸収が上回ってしまいます 。40代以降になるとそれまで骨を守っていたエストロゲンの分泌が減少するために、骨密度が低下し骨の質も劣化して骨がもろくなります 。
参考)https://ko-nenkilab.jp/equol/about05/boneloss/

 

もともと女性は男性に比べて骨量が低いうえに、加齢による影響に更年期のエストロゲンの減少も重なって、50代以降には骨粗しょう症の発生が急増します 。女性ホルモン補充療法(HRT)は、閉経後の女性において骨粗しょう症の予防に効果的であることが示されています 。
参考)https://www.kameda.com/pr/osteoporosis/post_53.html

 

骨粗しょう症治療目的には、エストロゲンのもつ女性ホルモン作用を抑えた、SERMと呼ばれている選択的エストロゲン受容体修飾薬が用いられています 。このSERMは女性ホルモン特有の副作用を軽減しながら、骨への良い効果を維持できる治療法として注目されています 。