ナルサス(ヒドロモルフォン徐放)は、院内の「オピオイド製剤換算表」では、経口モルヒネに対してナルサスが1/5で整理されていることが多く、たとえば経口モルヒネ60mg/日がナルサス12mg/日に相当する並びで示されています。
実務では「換算比=絶対値」ではなく、①痛みの質(安静時痛か、突出痛が主体か)、②直近の増量スピード、③眠気や呼吸抑制リスクを見込み、少し控えめに開始して評価→増量、という運用が事故を減らします。
換算表が役に立つ代表場面は次の通りです。
※参考リンク(換算比「ナルサス1/5」やレスキュー設定、注意事項の記載)
国立がん研究センター中央病院「オピオイド製剤換算表」:ナルサス1/5、ナルベイン注1/25、レスキュー用量の目安がまとまっています
「ナルサス⇔ナルベイン」は、経口→注射と注射→経口で換算比が同じではない、と明記している施設資料があり、ここが最重要の落とし穴です。
具体的には、経口ナルサスから注射ナルベインへは“5分の1”で換算し、逆に注射ナルベインから経口ナルサスへ戻すときは“2.5(~4)倍”で換算する、という注意が示されています(往復で同じ比にしない)。
たとえば、経口ナルサス12mg→注射ナルベイン2.4mg、注射ナルベイン2.4mg→経口ナルサス6mg(~10mg)という例が提示されており、「戻し」は幅を持つ前提で再評価が必要です。
この“非対称”は、単純な計算ミスより怖いタイプのエラーを生みます。
※参考リンク(非対称換算の注意点と具体例がある部分)
聖隷三方原病院 症状緩和ガイド「オピオイドの等価換算表」:ナルサス⇒ナルベインは5分の1、ナルベイン⇒ナルサスは2.5(~4)倍、具体例つき
換算表だけで“定期”を揃えても、レスキューが弱すぎる(痛みが追いつかない)/強すぎる(眠気・呼吸抑制に寄る)と、結局安全に運用できません。
資料では、経口・坐薬のレスキュー計算の表が提示され、ナルサス(mg/日)に対してレスキューとしてナルラピド(速放ヒドロモルフォン)の目安が並記されているものがあります。
また、徐放性オピオイド(例:ナルサスなど24時間製剤)を疼痛悪化時のレスキューとして使ってはならない、という注意も明確に書かれており、ここは医師・看護師・薬剤師で共通認識にしておくべきです。
実装上のチェックポイント(病棟の運用で“効く”もの)を挙げます。
「注射モルヒネ→ナルベイン」の換算は、資料によって“8分の1”が示される一方で、経口モルヒネを経由して換算すると“12分の1になる”という説明もあり、どの経路で換算を組むかで数字が変わり得ます。
実際に、モルヒネ注30mg→ナルベイン3.75mg(1/8)という並びと、モルヒネ注30mg→経口モルヒネ60mg→ナルサス12mg→ナルベイン2.4mg(経口経由で小さくなる)という具体例が同じ資料内で提示されています。
この差は、単に計算の好みではなく、「経口の利用率」「製剤・投与経路の違い」「安全側に倒す設計」の混在で起きやすく、換算表を“1枚だけ”見て決めると齟齬が出ます。
現場での独自の工夫としては、スイッチ検討時に次の2つを一度メモに落とすと、チームでの説明が通りやすくなります。
こうしておくと、夜間帯の当直・オンコールでも「なぜこの量なのか」が再現でき、過量投与・過小投与の両方を避けやすくなります。
検索上位の換算表は、数字の一覧としては非常に有用ですが、事故が起きるのは「計算」より「伝達」と「監査」の部分が多い印象です(特にナルサス⇔ナルベインの非対称が絡むと、説明が抜けやすい)。
そこで、チームで共有しやすい“オーダー監査のテンプレ”を作っておくと、換算表を見た人が同じ結論に到達しやすくなります。
以下は、電子カルテのコメント欄や薬剤師の疑義照会メモに、そのまま貼れる粒度の例です(必要に応じて施設用に調整してください)。
この“文章化”は地味ですが、①換算の前提が固定され、②他職種に説明でき、③後から見返して改善できる、という点で、換算表を臨床の意思決定に落とし込む最後のピースになります。