免疫反応とは、体内に侵入したウイルス、細菌、真菌などの異物(抗原)に対して、免疫システムが働く一連の防御機構のことです 。この反応は、自分の細胞と異物を見分け、異物を取り除こうとする生体の重要な機能として機能します 。
参考)https://www.macrophi.co.jp/special/1451/
免疫反応の特徴として、抗原特異性(特定の抗原にのみ反応する)、免疫記憶(一度感染した病原体を記憶する)、自己と非自己の識別(自分の細胞を攻撃しない)があります 。これらの特性により、人体は多様な病原体から効率的に身を守ることができるのです 。
参考)https://www.macrophi.co.jp/special/1538/
現代医学では、免疫反応の異常が多くの疾患と関連していることが分かっています 。免疫系の機能低下は感染症やがんのリスクを高め、逆に免疫系の過剰反応はアレルギーや自己免疫疾患を引き起こします 。
参考)https://www.macrophi.co.jp/special/1406/
免疫システムは大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2つに分類されます 。自然免疫は生まれた時から備わっている基本的な生体防御システムで、病原体など体に異物が侵入した時、いち早く反応し排除する働きをしています 。
参考)https://www.imini-immunity.jp/care/2021/08/post-4.html
自然免疫の特徴は反応の速さにありますが、特異性が低いという特徴があります 。マクロファージ、好中球、NK細胞などが主要な担い手となり、幅広い異物に対して迅速に対応します 。一方で、血液中に入った小さい病原体や細胞内に侵入した病原体に対しては対処が困難とされています 。
参考)https://pid-patients.csl-info.com/pid/knowledge/list/
獲得免疫は自然免疫だけでは対処できない場合に活動を開始する、より高度な防御システムです 。反応は遅いものの特異性が高く、特定の抗原を正確に識別し、抗体産生やキラーT細胞による攻撃を行います 。
免疫細胞は白血球を中心とした多様な細胞群で構成されており、それぞれが特別な役割を担っています 。白血球の内訳は、顆粒球が54~60%、リンパ球が35~41%、マクロファージが5%の割合で構成されています 。
参考)https://dojin.clinic/column/3527/
マクロファージは免疫反応の最前線で活動する重要な細胞です 。体内に病原菌やウイルスなどの異物が侵入すると、まずマクロファージが発見し、それらを食べて死滅させます 。さらに、異物の情報を集めて免疫の司令塔であるヘルパーT細胞に伝達する抗原提示機能も持っています 。
参考)https://www.macrophi.co.jp/special/2045/
リンパ球にはT細胞、B細胞、NK細胞が含まれ、それぞれが特別な機能を持ちます 。ヘルパーT細胞は免疫反応全体の司令塔として働き、B細胞に抗体産生の指令を出します 。B細胞は形質細胞に分化して抗体を大量生産し、キラーT細胞やNK細胞は感染細胞やがん細胞を直接攻撃します 。
参考)https://www.hus.ac.jp/hokukadai-jiten/detail/46af43cb46ebb006c7765f2083fb07b579c2b9b6-17711/
抗原抗体反応は獲得免疫における中核的なメカニズムであり、高度に洗練された分子認識システムです 。抗体は免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質で、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類に分類されます 。
参考)https://www.macrophi.co.jp/special/1440/
一次応答では、初回の抗原侵入時にB細胞がIgM抗体を最初に産生し、その後より強力なIgG抗体を作り出します 。しかし、IgGの産生には時間がかかるため、初回感染時は症状の軽減に時間を要します 。
二次応答では、メモリーB細胞が同じ抗原を迅速に認識し、大量のIgG抗体を速やかに産生します 。この免疫記憶により、再感染時には効率的な防御が可能となり、ワクチンの予防効果もこの仕組みを利用しています 。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2199/
抗体の機能として、中和作用(毒素の無毒化)、オプソニン効果(食細胞の貪食促進)、補体活性化(膜侵襲複合体の形成)、ADCC(抗体依存性細胞傷害)があります 。
免疫反応の異常は大きく3つのカテゴリーに分けられます:免疫不全、過剰反応(アレルギー)、そして自己反応(自己免疫疾患)です 。
アレルギー反応は、本来無害な物質(アレルゲン)に対する過剰な免疫反応です 。IgE抗体が関与するI型アレルギーが代表的で、花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどが該当します 。サイトカイン・ストームのような重篤な過剰反応では、TNF-αやインターロイキンの大量分泌により全身に炎症が波及し、生命を脅かすことがあります 。
参考)https://neurotech.jp/saiseiiryou/what-are-cytokains-and-cytokain-storms/
自己免疫疾患では、免疫系が自己の細胞や組織を異物と誤認して攻撃します 。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病などが代表例で、自己抗体や自己反応性T細胞の産生が病態の中心となります 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/12-%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%AD%A6-%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%80%A7-%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%85%8D%E7%96%AB-%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E9%81%8E%E6%95%8F%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%96%BE%E6%82%A3
興味深いことに、自己免疫疾患とアレルギー疾患には遺伝的に共通した要因が存在することが明らかになっています 。特にヘルパーT細胞の異常が両疾患群に共通して認められ、Th1/Th2バランスの崩れが様々な免疫異常を引き起こします 。
参考)https://crest-ihec.jp/public/epigenome_allergy.html
免疫不全は原発性(先天性)と続発性(後天性)に分けられ、HIV感染、悪性腫瘍、免疫抑制薬の使用などが原因となります 。免疫不全状態では日和見感染や悪性腫瘍のリスクが著しく増加し、腫瘍免疫監視機能の低下も問題となります 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%8D%E7%96%AB%E4%B8%8D%E5%85%A8
サイトカインは免疫細胞間のコミュニケーションを担う重要な分子で、「免疫システムの司令官」とも呼ばれます 。ギリシャ語の「cyto(細胞)」と「kinos(動き)」を組み合わせた名称が示すように、細胞の動きを制御する中心的な役割を果たします 。
参考)https://reprocell.co.jp/archive/cytokine/
炎症反応において、マクロファージなどの免疫細胞が病原体を感知すると、TNF-α、IL-1、IL-6といったサイトカインを放出します 。これらのサイトカインは周辺細胞に危険信号を送り、発熱や倦怠感などの全身症状を引き起こします 。風邪の際に感じるだるさは、ウイルス自体ではなくサイトカインの働きによるものです 。
サイトカインには炎症を促進する「アクセル」の機能と、過剰な免疫反応を抑制する「ブレーキ」の機能があります 。このバランスが崩れると、サイトカイン・ストームのような致命的な状態を引き起こすことがあります 。
インターロイキン、インターフェロン、ケモカインなど多種類のサイトカインが存在し、それぞれが特別な機能を持っています 。免疫調節作用により、同一細胞や近隣細胞への局所的影響から、発熱のような全身への影響まで幅広い作用を示します 。