生物学と分子生物学と細胞生物学の基礎

生物学は生命現象を研究する学問で、分子生物学や細胞生物学などの分野に分かれています。現代の生物学研究がどのように発展し、医療分野に応用されているかご存じですか?

生物学とは何かとその分類

生物学の基礎と主要分野
🧬
分子レベルの研究

遺伝子やタンパク質の構造と機能を解明

🔬
細胞レベルの研究

生命の基本単位である細胞の働きを理解

🌿
個体・生態系研究

生物同士の関係や環境との相互作用を分析

生物学の定義と研究対象

生物学(せいぶつがく、英: biology)は、生命現象を研究する自然科学の一分野です 。研究対象は「命あるものすべて」で、バクテリアから人間まで、自然界の生命の本質とそのあり方を解明します 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6

 

現代の生物学は、生体を構成する分子の働きを研究する「分子生物学」「生化学」から、生物群全体のしくみを研究する「集団生物学」「生態学」まで、階層的に広がっています 。これらの階層には密接な関係があり、各レベルでの研究の進歩が他のレベルでの新発見につながっています 。
参考)https://www.gyakubiki.net/gnr/gbn0304.html

 

特に近年は、あらゆる生命現象に対して遺伝子レベルで解明しようとする傾向が強まっており、生理学、行動学などの分野においても遺伝子工学を絡めて研究するなど、総合的な学問になりつつあります 。
参考)https://benesse.jp/juken/201508/20150805-4.html

 

分子生物学の基礎と遺伝情報解読

分子生物学は、1953年にワトソンとクリックによりDNA(デオキシリボ核酸)の分子構造が提唱されたときに誕生しました 。生命活動にとって重要な生体分子として蛋白質が挙げられ、これらの多彩な機能は全て20種類のアミノ酸の並び方で定まります 。
参考)https://www.molbiol.saitama-u.ac.jp/molecularbiology.html

 

DNA分子のもつ遺伝情報が、RNA(リボ核酸)を経て、蛋白質に翻訳されることにより、複雑で多岐にわたる生命現象が営まれています 。分子生物学は、ゲノム上の遺伝情報を解読することと、その遺伝情報の発現がどのように調節されているかを解明することを目指しています 。
現在では、細菌、酵母、ショウジョウバエ、線虫、シロイヌナズナ、イネ、ヒトなど数多くの生物のゲノム全塩基配列が決定されており 、解読された膨大な塩基配列情報をもとに、生化学・分子遺伝学のほか情報科学を活用した研究が活発に行われています 。

細胞生物学の役割と研究アプローチ

細胞生物学は、生命の基本単位である細胞の構造と機能に着眼し、原生生物から植物、さらには動物にいたる多様なモデル生物を活用しながら細胞機能の獲得・発揮・調節や細胞機能の破綻病理に関する基礎研究を行っています 。
参考)https://www.mbs.life.tsukuba.ac.jp/file/pamphletJP2023.pdf

 

従来の生化学・分子生物学は分子の単離と解析的アプローチを中心とするのに対し、細胞生物学は主として形態学的アプローチに重点をおきます 。しかし、遺伝子工学、発生工学などの実験手技は相当重なっており、教室間の研究交流も進んでいます 。
参考)https://www.m.u-tokyo.ac.jp/mms/major1.html

 

細胞レベルから分子レベル(ミクロ)へ、また個体から群集レベル(マクロ)への階層的な研究により、細胞から個体レベルの生命活動の恒常性や基礎分子病理を探求できる研究力が養われています 。

発生生物学と進化生物学の統合

発生生物学は、受精卵から始まって個体が完成するまでの発生過程を研究する分野です 。一方、進化生物学は、共通祖先からの種の起源や進化、繁殖、生物多様性などについて研究を行う生物学の一分野です 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E5%8C%96%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6

 

これらの分野を統合したのが進化発生生物学(Evolutionary developmental biology、通称: evo-devo)で、異なる生物の発生過程を比較してそれらの系統関係を推測し、発生過程がどのように進化したかを示す研究分野です 。初期の重要な発見は、広範囲の真核生物における発生を制御するホメオティック遺伝子の発見でした 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E5%8C%96%E7%99%BA%E7%94%9F%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6

 

進化の過程で変化した遺伝情報や発生プログラムの変化、体づくりのプロセスの変化について答えるのが現代の進化発生生物学と言えます 。
参考)https://catalog.he.u-tokyo.ac.jp/detail?code=0541049amp;year=2021

 

生物学における医療応用と社会貢献

現代の生物学研究は、医療分野への応用が期待される重要な分野となっています。特にゲノム研究や遺伝子の配列を書き換えるゲノム編集が可能になり、バイオに関する研究が急速に進んでいます 。
参考)https://studyu.jp/feature/theme/biotechnlogy/

 

一人ひとりの遺伝子に合わせて個別の治療を施す「テーラーメード医療」(個別化医療、オーダーメード医療)が注目されており、一人ひとり異なるゲノムを調べ、そのデータを元に効果の期待される治療、薬を提供しようという新しい医療です 。
また、DNAチップを用いた遺伝子検査技術により、病原体微生物の同定、遺伝性腫瘍の保因者検査、悪性腫瘍細胞の存在確認などが可能になり、患者一人ひとりにあった治療、いわゆる個別化医療へのシフトを後押しする検査技術として期待されています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/67/6/67_284/_article/-char/ja/

 

生物学を学んだ人々の卒業後の進路としては、バイオテクノロジーを扱う食品、製、農林水産関係企業の研究所が中心となっており、教職や民間の試験所、植物園など、それぞれの専門知識を生かせる場所への就職が可能です 。