スタビライゼーション型スプリントを正しく調整しないと、顎関節症が改善するどころか咬合崩壊を招くリスクがあります。
スプリントとは、患者の口腔内に合わせて作製するマウスピース型の装置で、顎関節症やブラキシズムの治療に広く用いられています。 装着することで下顎が正常な位置へ誘導され、上下の歯が直接接触するのを防ぐことで、顎関節への負担が軽減されます。 治療効果の柱は「咀嚼筋の緊張緩和」「顎関節への圧力分散」「下顎位の安定化」の3点です。 honma-dental(https://honma-dental.jp/blog/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A7%A3%E8%AA%AC/)
「スプリント=就寝時のマウスピース」と単純にとらえている医療従事者も少なくありませんが、実際にはその目的と形状によって複数の種類が存在します。 種類の違いを正確に把握することが、適切な治療につながります。これが基本です。 honma-dental(https://honma-dental.jp/blog/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A7%A3%E8%AA%AC/)
スプリントは歯科用レジン製のハードタイプが主流ですが、スポーツ用にソフトタイプも使われます。 ハードタイプは形状の安定性が高く、咬合調整もしやすいという特徴があります。なお、「スプリント」「ナイトガード」「マウスピース」は臨床の場でほぼ同義に使われることがありますが、厳密には呼び方に統一されたルールはありません。 意外ですね。 happiness-sika-clinic(https://happiness-sika-clinic.com/blog/koukuu-syuuheki/naitoga-do-supurinnt/)
スプリントの種類は主に4つに分類されます。それぞれの形状と適応を押さえておくことが臨床の基本です。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
| 種類 | 別称 | 接触部位 | 主な適応 |
|---|---|---|---|
| 全歯列接触型 | スタビライゼーション型 | 全歯列均等 | 咬合異常・筋緊張全般 |
| 前方整位型 | リポジショニング型 | 全歯列+前方誘導 | 関節雑音・円板転位 |
| 前歯接触型 | — | 前歯部のみ | 開口筋過緊張・口腔内反射利用 |
| ピボット型 | — | 臼歯部のみ | 強い開口障害 |
全歯列接触型(スタビライゼーション型)は最も使用頻度が高く、全歯列を均等に接触させることで神経筋機構の正常化を促します。 特定の歯への集中荷重がなくなるため、咬合の安定化が期待できます。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
前方整位型は、関節円板が前方に転位してクリック音が生じているケースに有効です。 下顎を前方に誘導することで円板と下顎頭の位置関係を改善します。前歯接触型は、前歯部のみを接触させることで開口反射を誘発し、閉口筋(咬筋・側頭筋)の過緊張を解除する仕組みです。 つまり筋緊張型の顎関節症に対応する種類です。 happiness-sika-clinic(https://happiness-sika-clinic.com/blog/koukuu-syuuheki/naitoga-do-supurinnt/)
ピボット型は臼歯部のみを接触させる独自の設計で、強い開口障害がある症例に適応されます。 顎関節部への直接的な圧力を分散させる狙いがあります。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
どの種類のスプリントを選ぶかは、顎関節症の病型と主訴によって決まります。判断の基準は明確にしておく必要があります。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
🔍 選択の目安を整理すると、以下のとおりです。
ただし、実際の臨床では複数の症状が合併するケースが多いため、単一の種類で対応できないことも珍しくありません。 開口障害と関節雑音が同時にある場合などは、段階的にスプリントの種類を変えながら治療を進める戦略が採られます。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
また、信州大学が公開している分類(小林の分類)では「前歯接触型」「全歯列接触型(片顎・両顎)」「下顎前方整位型」などが病型別に整理されており、教育的な参考資料として今も使われています。 専門家の知見に基づいた分類を確認する際は以下のリンクが参考になります。 shinshu-u.ac(http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-shika/until%202003%20HP/TMJ7.html)
顎関節症の病型(Ⅰ型〜Ⅲ型)ごとのスプリント適応分類を解説しています。
顎関節症のスプリント療法(信州大学)
スプリントの装着は基本的に就寝中のみで、装着時間は8時間前後が目安です。 日中に装着不要なため、職場や学校での生活に支障をきたすことはありません。これは患者にとって大きなメリットです。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
治療期間は一般的に6〜12か月程度かかります。 その間、1か月に1回程度の通院で装置の咬合調整と経過観察を繰り返します。重症例ではさらに長期化することもあります。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
スプリントのメンテナンスも治療成果に影響します。毎回装着後に歯ブラシで汚れを落とし水洗いするのが基本です。 週1回程度、リテーナー用洗浄剤を使用することで、歯ブラシや水洗いでは落ちにくい細菌バイオフィルムを除去できます。洗浄剤は市販品で対応可能です。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
なお、スプリントの種類によっては作製の精度が治療結果を大きく左右します。特に全歯列接触型では咬合調整の精度が不十分だと、特定の歯に集中荷重が生じ、症状が悪化するリスクがあります。 調整は必ず専門知識のある歯科医師が行う必要があります。これは原則です。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
スプリント作製の費用は原則として保険適用されます。 保険診療の範囲内で患者専用の装置が作れる点は、他の補綴治療と比較しても患者負担が小さいメリットです。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
一方で、スプリント療法には副作用もあります。装着中の口腔乾燥、唾液分泌量の変化、歯や顎の痛みが生じる場合があります。 痛みが強い場合は咬合調整で改善できることが多いですが、放置すると顎関節症の悪化につながるため、早期に歯科医師へ連絡するよう患者に指導することが重要です。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
💡 ここで注意が必要なのが「副作用と治療効果の混同」です。スプリント装着初期に顎や歯に違和感が出ることは珍しくありません。 しかし「装着が辛い=合っていない」とは限らず、慣れによって解消する症状も多いです。痛いですね、と感じるケースでも1〜2週間の経過観察が推奨されます。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
また、スプリントの種類を誤選択した場合のリスクとして「咬合干渉の新規発生」があります。特にピボット型スプリントは臼歯部のみの接触設計であるため、長期装着により前歯の咬合関係に変化が生じることがあります。 定期的な咬合チェックを欠かさないことが条件です。 koukuugeka-doc(https://koukuugeka-doc.com/temporomandibular-disorders/splint_treatment/)
スプリント療法の最新の考え方と有効性の根拠については、臨床的な視点から以下の記事も参考になります。
顎関節症にスプリントは本当に有効?現在の考え方(銀座口腔外科)