ステロイド性骨粗鬆症は、経口ステロイド薬の最も重要な副作用の一つであり、適切な治療薬選択には各薬剤の禁忌事項を理解することが不可欠です。
現在、ステロイド性骨粗鬆症の治療には以下の薬剤が使用されています。
各薬剤群には特有の禁忌事項があり、患者の状態に応じた慎重な選択が求められます。特に、妊娠可能年齢の女性や侵襲的歯科治療が必要な患者では、禁忌事項の確認が治療成功の鍵となります。
ビスホスホネート製剤は、ステロイド性骨粗鬆症の第一選択薬として位置づけられていますが、重要な禁忌事項があります。
絶対禁忌
相対禁忌・慎重投与
特に注目すべきは、アレンドロネートでは禁忌項目が多く、リセドロネートでも複数の禁忌項目が設定されている点です。処方前には必ず添付文書の確認が必要です。
妊娠への影響
ビスホスホネート製剤は妊婦への投与が禁忌とされており、将来の妊娠に対する安全性も確立していません。特に妊娠を希望する女性患者では、主治医とメリット・デメリットを十分に相談した上で投与を決定する必要があります。
テリパラチド製剤の禁忌
テリパラチド(フォルテオ®)およびテリパラチド酢酸塩(テリボン®)には以下の禁忌があります。
これらの製剤は24ヶ月間の投与制限があり、投与後の血圧低下、めまい、立ちくらみ等の副作用に注意が必要です。
デノスマブの禁忌と注意事項
デノスマブ(プラリア®)の主要な禁忌事項。
デノスマブ投与時は、血清カルシウム値の低下を防ぐため、ビタミンD製剤や活性型ビタミンD₃製剤の併用が必須となります。また、ビスホスホネート製剤と同様に顎骨壊死のリスクがあるため、投与前の歯科受診と口腔内の衛生管理が重要です。
妊娠・授乳期のステロイド性骨粗鬆症治療は特に複雑で、多くの標準的治療薬が禁忌となります。
妊娠期の禁忌薬剤
妊娠期の代替治療選択肢
妊娠中のステロイド継続が必要な場合、骨粗鬆症治療は主に非薬物療法に依存します。
授乳期の考慮事項
授乳期においても多くの骨粗鬆症治療薬の安全性は確立されていません。母乳への移行や乳児への影響を考慮し、可能な限り非薬物療法を優先すべきです。
妊娠前の治療計画
妊娠を希望する女性患者では、妊娠前にビスホスホネート製剤の投与を中止し、適切な休薬期間を設けることが重要です。一般的には妊娠3ヶ月前からの中止が推奨されています。
ビスホスホネート製剤やデノスマブ投与患者における顎骨壊死(BRONJ/MRONJ)は、稀ながら重篤な合併症として知られています。
歯科治療前の対応プロトコル
投与中の歯科処置制限
以下の処置は原則として禁忌または慎重な検討が必要です。
緊急時の対応
投与中に緊急的な抜歯が必要となった場合。
口腔衛生管理の重要性
顎骨壊死の予防には継続的な口腔衛生管理が不可欠です。
参考:日本口腔外科学会による顎骨壊死に関する詳細な診断・治療指針
抗骨吸収薬関連顎骨壊死の病態と管理
薬剤休薬期間の判断
侵襲的歯科処置が必要な場合の薬剤休薬期間は、使用薬剤や患者の状態により異なります。
これらの判断には、整形外科医、歯科医師、薬剤師の多職種連携が重要であり、患者の骨折リスクと歯科処置の緊急性を総合的に評価する必要があります。