テオロングとテオドールは、いずれも有効成分がテオフィリンで、気管支喘息などに用いられる「テオフィリン徐放性製剤」という点は共通します。実務ではここだけを見ると「同成分=同じ薬」と誤解されやすいのですが、医薬品は“成分が同じでも製剤特性や運用が違う”ことがあり、そこを理解しておくと説明・処方監査・疑義照会の質が上がります。
位置づけの話を整理すると、一般的にはテオドールが先発、テオロングがジェネリック(後発)として語られます。さらにややこしい点として、テオロングは「テオドールと同じ時期に開発されたが、薬価収載が遅れたためジェネリック扱いになった」という背景が紹介されています。結果として、制度上はジェネリックでも“昔からある薬で先発のように扱われがち”という、現場感と制度区分のズレが起こり得ます。
(制度や薬価に絡む話題は施設ルールに依存するため、院内採用理由・採用薬の位置づけは薬剤部の方針も必ず併せて確認してください。)
また、患者説明では「同じ成分」と伝えるだけでは不十分なことがあります。徐放製剤は、放出設計の違いが血中濃度の山谷(Cmaxやトラフ)や症状コントロールの感覚に影響し得るため、「同成分だが剤形・放出の設計が違う可能性がある」ことを一言添えると、変更時の不安やクレーム予防につながります。
同じテオフィリン徐放性製剤でも、製剤の作りが違えば、溶け方(溶出)と血中濃度推移の再現性に差が出ます。テオロングは「錠剤が消化管内で速やかに崩壊し、多数の徐放顆粒に分散する」設計で、溶出挙動がpHの影響をほとんど受けない、と説明されています。これにより血中濃度パターンの再現性に優れ、1点採血での薬物濃度モニタリング(TDM)に適する、という実務的な利点が示されています。
一方で、テオドールも“安定した血中濃度推移を狙った徐放設計”として説明され、至適血中濃度(例:5~20)を24時間維持するためのRTC療法に適した製剤、という整理がされることがあります。つまり、どちらも「徐放で安定」を目指す薬ですが、到達のさせ方(構造)や運用(用法・剤形展開)が違う、という理解が安全です。
医療従事者向けにもう一段踏み込むなら、テオフィリンは治療域が狭く相互作用も多い“モニタリング前提の薬”として扱われやすい点が重要です。服薬状況(飲み忘れ、食事、併用薬、発熱・感染など)だけでなく、製剤変更も濃度変動の要因になり得るため、「切替後に症状や副作用(悪心・不眠・動悸など)が変化した」場合は、TDMのタイミングや採血時刻(投与からの時間)を含めて再評価するのが実務的です。
取り違えリスクとして現場で特に問題になりやすいのが一般名処方です。テオフィリン徐放錠は“持続時間”の表記で区別されることがあり、例として「(12~24時間持続)」と「(24時間持続)」のように、非常に似た文言で別設計の徐放製剤が区別されます。わずかな違いなので、処方監査・ピッキング・最終鑑査のどこでもヒューマンエラーの余地が残り、調剤過誤の確率が上がるという指摘があります。
この論点は、単に「先発か後発か」ではなく、「同じ一般名(テオフィリン)でも“基準となった先発”が別物」という構造的な混乱にあります。たとえば、1日2回投与を想定した製剤を、1日1回投与型の代替として機械的に置換するのは推奨されない、という説明がされています。一般名処方の恩恵(変更しやすさ、患者負担の軽減など)を活かしつつ、テオフィリン徐放製剤では“持続時間の確認”を必須プロセスとして標準化するのが安全策です。
実務での工夫例(院内手順に合わせて調整してください)を挙げます。
剤形は、服薬アドヒアランスと投与設計の自由度に直結します。テオロングは小児への投与量調節に便利な少含量(例:50mg)錠などが揃っている、という実務的メリットが紹介されています。小児では体重換算・症状・併用薬で用量調整が頻繁に起こるため、規格の選択肢が多いことは“安全で現実的な処方設計”につながります。
また、徐放製剤は噛み砕き・粉砕の影響を受けやすいのが原則です。徐放設計が崩れると急速放出につながり得て、副作用リスクが上がる可能性があるため、嚥下が難しい患者で粉砕の相談が出たときは、安易に「粉砕可」と判断せず、代替剤形(ドライシロップ等)や投与設計の見直しを検討する必要があります。
高齢者・腎機能低下患者では、相互作用(抗菌薬、抗てんかん薬、喫煙状況の変化など)や急性疾患の影響で血中濃度が揺れやすい場面があります。こうしたとき、製剤変更が重なると評価が一気に難しくなるため、「変更は一度に一つ」「採血時刻を揃える」といった基本動作が、地味ですが最も効きます。
検索上位の比較記事では薬物動態や一般名処方の話が中心になりがちですが、2026年の現場で“意外に効く”のは供給リスクを含めた処方設計です。テオドール錠100mg/200mgは「速放性顆粒と徐放性顆粒を混合・打錠して製造する徐放性製剤」であり、徐放性に影響する原料(例:ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチルアルコール)が製造中止になったことで、溶出規格に適合する製品製造が見込めない、という事情が日本呼吸器学会宛の文書で説明されています。さらに在庫消尽想定時期として2026年12月頃が記載されており、代替薬の議論が現場課題になり得ます。
この情報がなぜ臨床的に重要かというと、テオフィリンは「急に止めると困る患者」が一定数いる一方で、「漫然投与を避けたい薬」でもあるからです。供給が不安定になり得る局面では、以下のような“前倒しの安全策”が提案の価値を持ちます。
供給情報は「薬学的には周辺情報」に見えますが、実際には治療継続性(continuity)に直撃します。医師・薬剤師・看護師が同じ情報を共有できると、処方変更の説明が“患者の不安を減らす説明”になり、結果としてアドヒアランスが落ちにくくなります。
テオドールの供給継続が困難となった理由(徐放性に影響する原料の製造中止、溶出同等性担保の難しさ等)。
https://www.jrs.or.jp/information/file/202412_theodur.pdf
一般名処方での(12~24時間持続)と(24時間持続)の区別、取り違えリスクの背景説明。
https://kusuri-jouhou.com/nyuumon/generic19.html
テオロングとテオドールの製剤特徴(マルチプルユニット、pH非依存、TDM適性など)の整理。
https://next-pharmacist.net/archives/1341

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