気管支喘息は、呼吸をする時の空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こしている状態です。炎症が起こることで気道が狭くなり、息苦しさや持続する咳、喘鳴(ヒューヒューやゼーゼー)といった呼吸器症状が出現します。
参考)https://www.h-cl.org/column/bronchial-asthma/
喘息の特徴的な症状には以下があります。
・発作性の呼吸困難 📌 急に息が苦しくなる症状
・喘鳴音 🔊 呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという音がする
・持続する咳 😷 特に夜間や早朝に悪化しやすい乾いた咳
・胸苦しさ 💔 胸が締め付けられるような感覚
・運動時の息切れ 🏃♂️ 軽い運動でも呼吸困難を感じる
これらの症状は、風邪、インフルエンザ、百日咳、マイコプラズマなど、感染症によっても発作性の咳が出ることがあり、感染症による炎症がきっかけとなり喘息を発症することもあります。
参考)https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/33_zensoku/
気管支喘息の診断には、症状の確認と複数の検査を組み合わせて行います。医師は以下の6項目を総合的に評価して診断を下します:
参考)https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/zensoku/shindan.html
主要な診断基準:
・発作性の呼吸困難、喘鳴、胸の苦しさ、咳などを繰り返す
・可逆性の気流制限がある(気管支拡張薬で改善する)
・気道過敏性の亢進
・気道炎症の存在
・他疾患の除外
・薬物治療への反応
主な検査項目:
1. 呼吸機能検査(スパイロメトリー) 🫁
息を吸ったり吐いたりして肺の機能を調べる検査で、特に1秒率(70%以下で異常)が重要な指標となります。
参考)https://www.omote-kokyuki.com/bronchial-asthma/
2. 気道可逆性検査 💨
気管支拡張剤(ベータ刺激薬)を吸入して、その前後で肺機能検査を行います。1秒量が15%以上または200ml以上改善すると気管支喘息の可能性が高いと判断されます。
参考)https://yamaguchiube.hosp.go.jp/about/cnt1_00219.html
3. 呼気一酸化窒素(FeNO)検査 🔬
気道中のアレルギーを見る検査で、喘息や咳喘息の診断だけでなく、既に喘息と診断された方の炎症コントロールをみる指標としても有用です。
参考)https://www.kasai-yokoyama.com/bronchial-asthma-test/
4. アレルギー検査 🌸
血液中の好酸球の数やアレルギーの原因物質などを調べる検査で、RAST法とMAST法があり、どちらの検査も採血した血液とアレルゲンを反応させて調べます。
参考)https://www.naruhodo-zensoku.com/zensoku/test.html
気管支喘息の重症度は、症状の頻度と肺機能の数値を総合的に評価して、4段階に分類されます。この分類により、適切な治療方針が決定されます。
参考)https://www.naruhodo-zensoku.com/degree/
軽症間欠型 🟢
・症状が出るのは週に1回未満で短時間
・夜間の症状は月に2回未満
・肺機能は正常(80%以上)
軽症持続型 🟡
・症状が出るのは週に1回以上(毎日ではない)
・夜間の症状は月に2回以上
・肺機能は正常(80%以上)
中等症持続型 🟠
・毎日症状が出て、週に1回以上日常生活に支障をきたす
・発作時の薬を毎日使用し、夜間の症状は週1回以上
・肺機能が低下(60~80%未満)
重症持続型 🔴
・毎日症状が出て、病気により日常生活に著しい支障をきたす
・治療を行っていても頻繁に症状が悪化
・吸入ステロイド薬や気管支拡張薬が効きにくく、夜間症状の頻度が高い
・肺機能が著しく低下(60%未満)
重症度の判定には、呼吸機能検査「FEV1」(1秒量)、「PEF」(ピークフロー値)や症状の頻度、日常生活への影響度などを総合的に評価します。
参考)https://www.kamimutsukawa.com/blog2/zensoku/11952/
気管支喘息のアレルギー検査では、血液中の総IgE抗体の測定(RIST)と、特定のアレルゲンに対する特異的IgE抗体の測定(RAST)を行います。これにより、喘息発作を引き起こす原因物質を特定できます。
参考)https://www.jslm.org/books/guideline/04.pdf
主要なアレルゲンと誘発因子:
環境アレルゲン 🏠
・ハウスダスト、ダニ
・花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど)
・カビ、真菌
・動物のフケ(犬、猫など)
気象要因 🌡️
・気温の寒暖差
・湿度の変化
・気圧の変動
・冷たい空気の吸入
感染症 🦠
・ウイルス性呼吸器感染症
・マイコプラズマ肺炎
・細菌感染症
化学物質・刺激物 ☁️
・たばこの煙(主流煙・副流煙)
・大気汚染物質
・香水や化粧品の香料
・プールの塩素
生理的要因 👩
・生理周期(女性)
・妊娠
・ストレス
・激しい感情の変化
気管支喘息の原因は多く存在しており、体質によっても異なるため、完全に治すことが難しい病気です。そのため、個人のアレルゲンを特定し、それらを避ける環境整備が重要となります。
運動誘発喘息(EIA)は、運動をすることで呼吸回数が増え、気管・気管支が冷やされる結果、腫れ、気道が狭くなることが原因で発症します。
参考)https://www.kurosaki-kokyuki-cl.com/athlete-asthma/
運動誘発性発作の誘因 🏃♀️
・外気温の低下
・湿度の変化
・大気汚染
・花粉
・プールやスケート場にある化学物質
効果的な予防方法:
1. ウォーミングアップの実施 💪
運動前のウォーミングアップ(10分~20分)が最も有用です。EIAは十分な準備運動により1~4時間の間は発作が起こさなくできることが知られており推奨されます。
2. 薬物による予防 💊
・運動15分前の短時間作用型β2刺激薬の吸入(サルタノール、メプチンエアーなど)
・運動15分前のDSCG(インタール)の吸入
3. 環境対策 😷
寒冷の刺激が原因の場合は可能な限りマスクをしておき気道の保温に努める。また、運動の際は鼻呼吸をおすすめします。
4. 適切な運動選択 🏊♂️
喘息患者さんにおすすめの運動として、ウォーキング、水中運動・水泳、ヨガ・ストレッチ、サイクリング(屋内バイク含む)、ピラティス・軽い筋トレがあります。
参考)https://zensokutohaino.clinic/2025/05/01/exerciseforasthma/
普段から喘息のコントロールをしっかり行い、気道過敏性をおさえておく必要があります。喘息のコントロールが良好であればEIAを起こしにくくなります。
気管支喘息の治療は、症状が無いときでも気道に慢性的な炎症が起きていることが多いため、発作が起きたときだけでなく、普段から継続的な治療が重要です。
気管支喘息の治療の基本は薬物療法であり、発作を抑える急性治療と、病気自体を改善する慢性治療の2つに分けられます。
参考)https://kirari-clinic.jp/%E6%B0%97%E7%AE%A1%E6%94%AF%E5%96%98%E6%81%AF
長期管理薬(コントローラー) 💊
1. 吸入ステロイド薬 🌬️
気管支の炎症を抑える最も重要な薬剤で、喘息治療の基礎となります。薬を直接気道に噴霧することができ、最も効果的な治療方法です。これにより気道の炎症をおさえることが可能になり、気管支拡張へ働きかけ呼吸がしやすくなります。
参考)https://anamne.com/asthma-steroid/
2. 長時間作用型β2刺激薬 💨
気管支を長時間拡げる効果があり、しばしば吸入ステロイド薬と組み合わせた配合剤として使用されます。
3. 長時間作用型抗コリン薬 🫁
気管支を長時間拡げ、咳や痰を減らす効果があります。
4. ロイコトリエン受容体拮抗薬 💊
気道の炎症を抑える内服薬として使用されます。
5. テオフィリン徐放薬 ⏰
気道の炎症を抑える作用があり、長時間効果が持続する徐放性の製剤です。
急性治療薬(リリーバー)
気管支喘息発作が起きた場合、発作の重症度に応じて短時間作用型β2刺激薬、抗コリン薬、ステロイド薬などが使用されます。重症な場合は静脈内薬が必要になることもあります。
吸入ステロイド薬は、喘息治療において最も重要な位置を占める薬剤です。「ステロイド」と聞くと副作用や依存性を心配する方も多くいますが、気管支に直接届く吸入ステロイド薬は、そのような心配はほとんどありません。
参考)https://oji-nishikawaclinic.jp/blog/?p=299
吸入ステロイド薬の作用機序 🔬
・気管支の中のアレルギー反応を抑制
・慢性的な気道炎症を改善
・気道の過敏性を低下させる
・発作の頻度と重症度を軽減
配合剤の種類 💨
喘息の吸入薬には、ステロイド単独、ステロイド+気管支拡張剤(1種類もしくは2種類)があります。多くはステロイドとの合剤として処方されます。
治療効果の特徴 ⏳
吸入ステロイド薬は強い抗炎症作用がありますが、ゆっくりじわじわと効いてくるので、効果が出始めるまでに3日~1週間ほどかかります。
参考)https://www.naruhodo-zensoku.com/treat/prevent.html
治療継続の重要性 📈
喘息患者の気道では、症状がないときでも炎症が起きています。症状はあくまでも喘息の氷山の一角であり、「症状がないことは長期管理薬の効果」だと考えて、きちんと薬の使用を続ける必要があります。
参考)https://www.allergy-i.jp/zensoku/seikatsu/
正しい吸入方法の習得 🎯
喘息で一番大切なのはこの吸入剤で毎日発作無く過ごすことです。発作がたびたびある場合は、リモデリング(気管支が狭くなるのが治らない状態)が起こりやすくなります。
気管支喘息の管理においては、薬物療法とともに適切な生活習慣の維持が極めて重要です。発作の予防や発作時に役立つ生活習慣を身につけることで、症状のコントロールが向上します。
規則正しい生活リズム ⏰
・毎日同じ時間に寝起きする
・朝食・昼食・夕食をきちんと食べる
・栄養バランスの取れた食事を心がける
・毎日同じ時間に起き、朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、自律神経のバランスが整います
参考)https://terasu.clinic/column/asthma-what-not-to-do/
環境管理 🏠
・こまめに掃除をして、ハウスダストやダニを除去
・禁煙の徹底(受動喫煙も避ける)
・適切な室温・湿度の維持
・空気清浄機の使用
感染症予防 😷
・風邪やインフルエンザの予防
・手洗い、うがいの徹底
・マスクの適切な使用
・予防接種の実施
体重管理 ⚖️
・内臓脂肪を減らす努力
・肥満は様々な理由から喘息コントロールの悪化につながります
参考)https://ingodo-asthma.com/prevention/
・子供の場合は運動よりも食事の見直しが必要
ストレス管理 🧘♀️
・ストレスをため込まないよう、リラックスできる時間を作る
・十分な睡眠をとり、良質な睡眠は自律神経を整える効果があります
・睡眠前2時間はスマホやテレビは見ないよう心がける
喘息の適切な管理のためには、日々の症状や薬の使用状況を記録する治療日誌の活用が推奨されています。
治療日誌の記録項目 📝
・症状の有無と程度
・発作治療薬の使用回数
・ピークフロー値の測定
・誘発因子の記録
・睡眠の質
・日常生活への影響度
発作の前ぶれサインの認識 ⚠️
・軽い咳が続く
・胸の違和感
・運動時の息切れが普段より強い
・夜間の目覚め
・イライラや不安感
ピークフロー測定の活用 📊
・毎日同じ時間に測定
・自己最良値の80%以上を維持目標
・日内変動が20%以内であることを確認
・悪化の早期発見に有効
薬物治療の自己管理 💊
・長期管理薬の規則的な使用
・発作治療薬の適切な使用タイミング
・吸入手技の定期的な確認
・薬剤の残量管理
治療日誌をつけることで、自分の喘息の パターンを把握し、医師との診察時により具体的な情報を提供できるようになります。また、治療効果の評価や薬剤調整の参考資料としても重要な役割を果たします。
気管支喘息は適切な治療により、症状を悪化させることなく日常生活に支障のない状態で過ごすことが可能な疾患です。しかし、病状管理が適切でない場合、重篤な合併症や生命に関わる状況に発展する可能性があります。
適切な管理による予後 ✅
・発作頻度の著明な減少
・日常生活の質の向上
・運動能力の維持・向上
・学業や仕事への影響最小化
・睡眠の質の改善
不適切な管理のリスク ⚠️
・リモデリング(気管支の構造変化)の進行
・肺機能の不可逆的な低下
・重篤な喘息発作(喘息死のリスク)
・ステロイド依存性の増大
・合併症の発症
定期的な医師の診察の重要性 👨⚕️
・症状の変化に応じた治療調整
・吸入手技の確認と指導
・合併症の早期発見
・新しい治療法の情報提供
・心理的サポートの提供
最新の治療選択肢 🆕
近年の喘息治療では、従来の治療で効果不十分な重症喘息に対して、抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-4/IL-13抗体などの生物学的製剤も使用されるようになっています。これらの治療は患者の症状や年齢、重症度によって個別に選択されます。
気管支喘息の治療にあたっては、患者自身が病気について十分理解し、治療に協力することが最も重要です。自己管理能力を向上させ、医療チームと連携を図ることで、長期的に良好な予後が期待できる疾患といえるでしょう。