ADHD(注意欠如・多動症)は「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの主要症状を特徴とする神経発達障害です 。注意欠如の症状には、授業や仕事に集中できない、忘れ物が多い、整理整頓が苦手、指示を聞き逃すなどの特性が見られます 。多動性の症状では、じっとしているのが苦手、落ち着きがない、待つことが困難といった行動が現れます 。
参考)https://www.jspn.or.jp/modules/info/index.php?content_id=444
衝動性の症状は順番を待つのが苦手、他人の話を遮る、危険を考えずに行動するなどの特徴があります 。これらの症状は同時にすべて現れるわけではなく、人によって現れ方が異なることが重要なポイントです 。ADHDの有病率は、成人では約1.65%、小児期では2.5~5.1%で男児により多く見られます 。
参考)https://takahashi-clinic-ashiya.com/6549/
日本における2019年度のADHD年間発生率は、0~6歳で2.7倍、7~19歳で2.5倍、20歳以上では21.1倍と顕著に増加している傾向が報告されています 。
参考)https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2023/010722.php
ADHDの診断は、アメリカ精神医学会のDSM-5診断基準に基づいて行われます 。診断には以下の条件がすべて満たされる必要があります:不注意、多動性、衝動性が同年齢の発達水準より強いこと、12歳以前から症状が出現していること、複数の環境で障害が認められること、対人関係や学業・職業に支障があること、他の精神疾患によるものではないことです 。
参考)https://ims.gr.jp/smileclinic-imstokyo/column/240906.html
診断プロセスでは問診が重要な役割を果たし、詳しい病歴を聴取してADHDと間違えられやすい他の疾患を除外します 。心理検査により知能の発達度や人格を評価し、ADHDの種類を判断して治療方針を立てます 。初診時には子どもの頃の情報を両親などから収集し、インターネット上のADHDチェックリストの利用も診断に有用とされています 。
参考)https://hakata-shinryo-cl.com/consultation/adhd/
SPECT検査などの脳血流を可視化する検査により、楔前部の血流パターンが治療薬の効果を予測する指標として注目されています 。
参考)https://www.h.u-tokyo.ac.jp/participants/research/saishinkenkyu/20250908.html
子どものADHDでは、授業中に集中できない、席を立ち歩く、忘れ物が多い、小さなミスが多いなどの症状が顕著に現れます 。多動性として動き回る、乱暴に物を扱う、静かに遊べないといった行動が見られ、衝動性では順番が待てない、割り込み、危険な行動をためらわないなどの特徴があります 。
参考)https://utu-yobo.com/column/9667
大人のADHDでは症状の現れ方が異なり、多動性や衝動性は成長とともに減少する傾向がありますが、不注意は残りやすいとされています 。具体的には、仕事でのミスや納期遅れ、スケジュール管理の困難、会議に集中できない、約束を忘れる、衝動買いや感情のコントロールの困難さなどが現れます 。
大人のADHDでは内的な落ち着きのなさやそわそわ感、貧乏ゆすりなどの形で多動性が現れ、職場や家庭生活への影響が問題となります 。子どもは不注意の自覚症状がない一方で、大人は自身の行動に違和感を持ち始めるという重要な違いがあります 。
参考)https://uruoi-clinic.jp/mental-column/adhd/adult-adhd-characteristics/
女性のADHDでは症状の現れ方が男性と異なるため、しばしば見過ごされたり誤診されたりします 。女性では「不注意」の症状が優勢に現れるものの、大きなトラブルになりにくいため大人になるまで気づかれないことが多くあります 。
参考)https://www.taisho-kenko.com/disease/506/
女性のADHD症状として、日常生活での混乱や制御不能感、計画性や構造化スキルの不足、優柔不断との闘い、注意・感情・行動の調節不全、時間管理と先延ばしの困難、モチベーションの低さ、社会的関係の悪化などが挙げられます 。多くのADHD女性は「迷惑をかけたくない」「しっかりしなきゃ」という思いから症状を隠そうと努力する「マスキング」や「カモフラージュ」行動を取ります 。
参考)https://www.unitedwecare.com/ja/%E6%88%90%E4%BA%BA%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AEadhd-%E9%9A%A0%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%B5%81%E8%A1%8C%E7%97%85/
この過剰な適応努力は心身に大きな負担をかけ、うつ病、不安、慢性ストレス、自尊心の低さ、慢性の痛み、不眠症などの併存症状を引き起こす可能性があります 。女性の場合、子どもの誕生後に注意力や整理整頓に関する問題が増加することで初めて診断される場合も少なくありません 。
ADHDの薬物療法では、脳内の神経伝達物質であるドーパミンとノルアドレナリンのバランスを調節する薬剤が使用されます 。主要な治療薬には、メチルフェニデート塩酸塩徐放剤(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)があります 。コンサータは朝1回の服用で有効率約70%と高い効果を示し、中枢神経刺激薬として厳密な管理の下で処方されます 。
参考)https://www.childneuro.jp/general/6536/
薬物療法は治療全体の一部であり、環境への働きかけや行動療法的アプローチといった心理社会的治療と組み合わせて行われます 。薬物治療の適応はGAF(機能の全体評定)尺度で60以下の中等度の機能障害がある場合に検討されます 。
参考)https://www.mentalclinic.com/disease/p7651/
作業療法では、家庭・学校・職場・地域社会における日常的な活動を行う能力の向上に重点を置き、構造化された支援的なアプローチを提供します 。低年齢児では感覚機能、運動能力、セルフケア、授業への参加に焦点を当て、成人では時間管理、感情調節、職場での適応スキルの習得を支援します 。最新の研究では、ADHDの中核症状緩和に効果的な認知行動療法の構成要素が特定され、個別化された治療アプローチが進歩しています 。
参考)https://kyodonewsprwire.jp/release/202501213134