GLP-1受容体作動薬配合剤の種類と特徴

GLP-1受容体作動薬配合剤には現在ゾルトファイとソリクア の2種類が存在し、それぞれ異なる特徴を持ちます。どのような違いがあるのでしょうか?

GLP-1受容体作動薬配合剤の種類と特徴

GLP-1受容体作動薬配合剤の現状
💊
ゾルトファイ配合注

インスリンデグルデク+リラグルチドの日本初配合剤

🔬
ソリクア配合注

インスリングラルギン+リキシセナチドの配合剤

治療の簡便性

2剤併用から1回注射への簡素化を実現

GLP-1受容体作動薬配合剤ゾルトファイの詳細特性

ゾルトファイ配合注フレックスタッチは、日本で初めて承認されたインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤です。この製剤は持効型インスリンアナログである「トレシーバ」(インスリンデグルデク)と、ヒトGLP-1アナログである「ビクトーザ」(リラグルチド)を固定比率で配合しています。

 

組成と用法・用量の特徴

  • 1ドーズあたりインスリンデグルデク1単位とリラグルチド0.036mgを含有
  • 1日1回皮下投与で、食事のタイミングに関わらず投与可能
  • 最高投与量は50ドーズまで設定されている
  • 現在一般的なリラグルチド0.9mgを投与する場合、25ドーズの投与が必要

臨床試験データと有効性
国内で実施されたDUALⅠ Japan試験とDUALⅡ Japan試験において、インスリンデグルデク単独と比較して以下の優位性が示されました。

  • 低血糖の発現頻度を高めることなくHbA1cの改善を達成
  • 体重増加のリスクを抑制
  • 空腹時および食後血糖コントロールの改善

ゾルトファイは、経口血糖降下薬またはインスリンによる治療で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者において、基礎インスリン製剤に比べ低血糖および体重増加のリスクを抑制しながら血糖管理の改善を可能とします。

 

GLP-1受容体作動薬配合剤ソリクアの特性と位置づけ

ソリクア配合注ソロスターは、インスリングラルギンとリキシセナチドを配合した製剤です。この配合剤は、ランタス(インスリン グラルギン)とリキスミア(リキシセナチド)の組み合わせにより構成されています。

 

組成と作用機序

  • 1ドーズあたりインスリン グラルギン1単位とリキシセナチド1μgを含有
  • 持効溶解型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬が相補的に作用
  • 空腹時および食後の血糖値を効果的に低下させる

投与方法と注意点
ソリクアは1日のうちの決められた時間に注射し、効果の発現は持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬のそれぞれの作用時間に依存します。作用持続時間はほぼ1日にわたり、低血糖、下痢、便秘、嘔気などの副作用が報告されています。

 

リキシセナチド(リキスミア)は2024年11月に販売中止となっているため、ソリクア配合注の今後の供給状況について注意が必要です。医療従事者はこの点を踏まえた処方計画を立てることが重要です。

 

GLP-1受容体作動薬配合剤の薬価比較と経済性

GLP-1受容体作動薬配合剤の薬価は、単剤使用と比較して経済的メリットを提供します。現在、単独のGLP-1受容体作動薬の薬価は以下の通りです。
主要GLP-1受容体作動薬の薬価

  • ビクトーザ皮下注18mg:8,434円/キット
  • トルリシティ皮下注0.75mgアテオス:2,749円/キット
  • トルリシティ皮下注1.5mgアテオス:5,498円/キット
  • オゼンピック皮下注2mg:11,151円/キット

経済的優位性の分析
配合剤の使用により、GLP-1製剤とインスリン製剤を別々に処方するよりも薬剤費が安価になることが確認されています。これは医療費削減の観点から重要な要素であり、患者の経済的負担軽減にも寄与します。

 

さらに、注射回数の減少により患者のQOL向上と治療アドヒアランスの改善が期待できます。複数回の注射が必要な従来の治療法から1日1回の注射に変更することで、患者の治療負担は大幅に軽減されます。

 

GLP-1受容体作動薬配合剤の臨床的意義と適応

GLP-1受容体作動薬配合剤は、2型糖尿病の段階的治療アプローチにおいて重要な位置を占めています。従来の治療では、経口血糖降下薬の多剤併用療法から始まり、GLP-1受容体作動薬またはインスリンとの併用療法、さらにはインスリンとGLP-1受容体作動薬の併用療法へと段階的に進展していました。

 

適応症と対象患者
両配合剤ともに「インスリン療法が適応となる2型糖尿病」を適応症としています。特に以下の患者群において臨床的メリットが期待されます。

  • 経口血糖降下薬で十分な血糖コントロールが得られない患者
  • 既にインスリンとGLP-1受容体作動薬を併用している患者
  • 複数回注射による治療負担を軽減したい患者
  • 低血糖リスクを抑制しながら血糖管理を改善したい患者

治療上の利点
配合剤の使用により以下の臨床的利点が得られます。

  • 治療の複雑性軽減
  • 患者のアドヒアランス向上
  • 低血糖リスクの軽減
  • 体重増加抑制効果
  • 空腹時および食後血糖の両方への効果

これらの特徴により、インスリン治療の導入や継続における患者の心理的バリアを軽減し、より効果的な糖尿病管理が可能となります。

 

GLP-1受容体作動薬配合剤選択時の臨床判断基準

GLP-1受容体作動薬配合剤の選択において、医療従事者は複数の要因を総合的に検討する必要があります。単剤の供給状況、患者の生活様式、既存の治療歴、そして経済性を含めた包括的な評価が求められます。

 

配合剤選択の判断要素
リキシセナチド(リキスミア)の販売中止を踏まえると、ソリクア配合注の長期的な安定供給には懸念があります。この状況下では、ゾルトファイ配合注がより安定した選択肢となる可能性が高いと考えられます。

 

また、患者の既往治療歴も重要な判断材料です。既にビクトーザとトレシーバを併用している患者であれば、ゾルトファイへの切り替えは比較的スムーズに行えます。一方、リキスミアとランタスを使用していた患者の場合、代替配合剤への変更検討が必要となります。

 

継続性と安全性の観点
配合剤への切り替え時には、個々の成分の用量調整が制限されることを考慮する必要があります。固定比率での配合のため、インスリンとGLP-1受容体作動薬の用量を独立して調整することができません。このため、きめ細かな用量調整が必要な患者では、単剤併用の継続も選択肢として検討すべきです。

 

患者教育とフォローアップ
配合剤導入時には、患者への十分な教育が不可欠です。注射手技の確認、低血糖症状の認識、副作用のモニタリング方法について詳細な指導を行う必要があります。特に胃腸障害の初期症状については、患者が適切に対処できるよう具体的な指導が重要です。

 

糖尿病情報センターの血糖値を下げる注射薬に関する詳細情報
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/100/030/03.html
定期的なフォローアップにおいては、HbA1c値の推移、体重変化、低血糖の発現頻度、患者の満足度を総合的に評価し、必要に応じて治療方針の見直しを行うことが重要です。配合剤の導入により期待される治療効果が得られない場合には、単剤への変更や他の治療選択肢の検討も必要となります。