医療現場でも患者説明でも、検索ワードとして「アクアチムクリームステロイド強さ」が頻出する背景には、「赤い・腫れている・膿がある=ステロイドが必要」「塗り薬=ステロイドかも」という短絡が混ざりやすい現実があります。
しかし結論から言うと、アクアチムクリーム1%はステロイド外用薬ではありません。ニューキノロン系外用抗菌剤で、一般名はナジフロキサシンです。
添付文書の「効能又は効果」は、表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)であり、抗炎症目的のステロイド適応(湿疹・皮膚炎など)とは設計思想が異なります。
ここで重要なのは、「ステロイド強さ」という軸で評価しようとすると、薬理の見立てが崩れる点です。ステロイドは免疫・炎症を抑える薬で、感染が主因の場合は悪化させうる一方、アクアチムは細菌を減らして炎症のドライバーを外す薬です。
つまり、アクアチムを“ステロイドの強さで言うとどれくらい?”と聞かれた時点で、まず「分類が違う」ことを丁寧に合意形成するのが医療者としての正攻法になります。
また、添付文書には耐性菌発現等を防ぐため「原則として感受性を確認し、治療上必要な最小限の期間の適用にとどめる」趣旨の注意喚起があります。
参考)302 Found
この一文は、患者向け説明では省略されがちですが、抗菌薬である以上、漫然塗布を避ける行動変容につながるため、医療従事者向け記事ではむしろ前面に出す価値があります。
参考:組成、適応、用法用量、耐性菌への注意がまとまっている(添付文書)
JAPIC 添付文書:アクアチムクリーム1%
アクアチムクリーム1%の有効成分は「ナジフロキサシン」で、1g中10mg含有と明記されています。
作用機序は、細菌のDNAジャイレースに作用してDNA複製を阻害し、殺菌的に作用する、とされています。
臨床で使う上で押さえたいのは「抗菌薬としての守備範囲」です。添付文書上、適応菌種としてアクネ菌、ブドウ球菌属が挙げられています。
ざ瘡の炎症性病変は、角化異常・皮脂・炎症・細菌(C. acnes)など複数要素の結果であり、抗菌薬はその一部に効く、という理解が安全です(“これさえ塗れば全部治る”ではない)。そのため、洗顔後に塗布する指示が用法用量に明確に書かれています。
「意外に知られていないが説明に使える情報」として、血中濃度のデータが添付文書に載っています。健康成人男性の背部に単回10g塗布で最高血漿中濃度1.7ng/mL、反復塗布(5gを1日2回・7日間)では最終塗布後に最高4.1ng/mLなど、吸収は限定的であることが示されています。
もちろん、これをもって「全身副作用はゼロ」と断言はできませんが、患者の不安(“抗菌薬=飲み薬並みに全身に回る?”)をほどく材料としては有用です。
さらに、抗菌スペクトラムの記載では、MRSAに対しても強い抗菌力を示し、既存ニューキノロン剤との交叉耐性がほとんど認められなかった、というin vitro情報もあります。
この点は過大評価せず「試験条件ではこう」という距離感で紹介し、臨床での培養・感受性や病変評価を優先する姿勢につなげると、記事の権威性が上がります。
用法用量は「適量を1日2回、患部に塗布」で、ざ瘡では洗顔後に塗布する、とされています。
一方で、漫然と続けないための“やめ時”がかなり具体的で、表在性/深在性皮膚感染症は「1週間で効果がなければ中止」、ざ瘡は「4週間で効果がなければ中止」「炎症性皮疹が消失したら継続使用しない」と明記されています。
この「中止条件」がステロイド外用薬の感覚と噛み合わないことが、誤使用の温床になります。ステロイドは症状に応じて強さを調整しながら継続管理する場面がある一方、抗菌薬は必要最小限の期間で切り上げるのが基本だからです。
ブログ記事としては、ここを“医療者の説明テンプレ”に落とし込むと実用度が上がります。たとえば外来での一言は次のように整理できます。
・🗓️「まず1週間(感染症)/4週間(ニキビ)で評価し、効かなければ方針変更」
・🧴「赤いブツブツ(炎症性皮疹)が引いたら、惰性で塗り続けない」
・🧫「可能なら原因菌や病態を見直し(感受性・別疾患・外用刺激など)」
また、添付文書の「重要な基本的注意」では耐性菌の発現等を防ぐ観点が明確に書かれています。
“抗菌薬を短く使う理由”を患者に説明する際、単に「長く使わないで」ではなく「必要な期間に絞るのは、効く薬を未来に残すため」という価値観まで含めると、アドヒアランスが上がりやすいのも臨床的な実感です。
副作用は皮膚症状が中心で、そう痒感、刺激感、発赤、潮紅、丘疹、接触皮膚炎、皮膚乾燥などが挙げられています。
頻度の表では「刺激感、発赤、接触皮膚炎、皮膚乾燥」などが1%未満の副作用として整理されています。
実務的に重要なのは、「副作用が出た時の鑑別」です。ざ瘡治療では、(1)薬剤刺激、(2)基剤(クリーム/軟膏/ローション)による違い、(3)そもそも病態が違う(酒さ、毛包炎、接触皮膚炎など)、(4)併用薬(過酸化ベンゾイル、外用レチノイド等)との刺激相加、が絡みやすいです。
添付文書ベースで言える範囲としては、「異常が認められた場合は投与を中止など適切な処置」となっており、症状が強ければ中止・再評価が妥当です。
適用上の注意として「皮膚のみに使用し、角膜・結膜には使用しない」と明記されているため、眼周囲の病変では塗布指示がぶれないように注意が必要です。
また「妊婦は有益性が危険性を上回る場合にのみ投与」「小児(低出生体重児、新生児、乳児、幼児)で有効性安全性の臨床試験は実施していない」との記載もあり、背景因子の説明材料になります。
「意外性のあるポイント」として、光線過敏症はキノロン内服で知られていますが、本剤については健康成人での光パッチテスト等で「光過敏反応を示さないことが確認された」と添付文書に記載があります。
ただし、同じ添付文書の「その他の注意」にもキノロン経口で光線過敏症報告があることが触れられており、“一般論”と“この製剤のデータ”を分けて説明するのが安全です。
検索上位には「ステロイドの強さに換算すると…」のような説明が混じりやすいのですが、医療従事者の実務では、その換算がむしろ事故を生みます。
独自視点としておすすめなのは、「強さ」を“抗炎症の強さ”ではなく“抗菌薬としての適正使用の厳格さ”に言い換えるフレームです。つまり、アクアチムの“強さ”は、(A)適応が合えば炎症を動かせる一方で、(B)適応がズレると効果が出ず、(C)長期連用は耐性菌の観点から避けたい、という意味の強さです。
具体的には、患者の「これステロイド?強い?」に対し、次のように返すと誤解が減ります。
・✅「ステロイドではなく、ニキビや感染の原因菌を減らす薬です」
・✅「1週間(感染)/4週間(ニキビ)で効き目を判定し、効かなければ切り替えます」
・✅「良くなったらダラダラ塗り続けず止めます(耐性を増やさないため)」
そして医療者向け記事なら、もう一歩踏み込んで「誤処方・誤使用の典型」を短く整理すると教育効果が高いです。
・⚠️湿疹・皮膚炎主体の赤みに“ニキビっぽいから”と塗り続ける(接触皮膚炎や刺激で悪化→さらに塗る負のループ)。
・⚠️炎症が強い病変に“とりあえず抗菌薬単剤”で、重症度評価や併用療法の検討が遅れる(評価期限を決めることで回避)。
・⚠️「抗菌薬外用=安全だから長期OK」という誤解(添付文書に“必要最小限の期間”が明記)。
最後に、医療者が文章で注意喚起するときは断定しすぎず、添付文書に沿って「期間」「中止条件」「観察」を明確にするのが安全です。アクアチムは“ステロイド強さ”で語る薬ではなく、“抗菌薬としてどう使い切るか”で語る薬だと位置づけ直すと、記事全体が引き締まります。