PT(プロトロンビン時間)は、主に外因系(第VII因子)と共通系(第X、V、II、I因子)を反映し、これらの欠乏や機能異常で延長します。
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は、主に内因系(第XII、XI、IX、VIII因子)と共通系(第X、V、II、I因子)を反映し、欠乏や機能異常で延長します。
この「共通系(X、V、II、I)はPTとAPTTの両方に効く」という一点が、鑑別の軸になります。
医療従事者の現場では「内因系=APTT、外因系=PT」と丸暗記されがちですが、実務上は“どの因子が入っているか”まで言えると強いです。
参考)肺および胸膜サルコイドーシスの合併を認めた肺癌の1例
たとえばPT延長・APTT正常なら第VII因子の異常が疑われ、逆にPT正常・APTT延長なら第XII、XI、IX、VIII因子の異常が疑われる、という方向づけができます。
この段階で「出血症状の有無」「既往歴」「手術予定」「抗凝固療法中か」を合わせると、追加検査の優先順位が決まります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7365011/
PTとAPTTには施設差がありますが、目安としてPTは10~13秒、APTTは25~40秒が基準範囲として紹介されています。
PTは秒で報告されることもありますが、臨床ではPT-INR(国際標準比)として示されることが多く、基準は概ね0.85~1.15(ほぼ1.0)とされています。
「PT-INR=患者PT(秒)/健常PT(秒)」という考え方を知っておくと、報告形式が変わっても読み替えがしやすくなります。
また、同じ患者でも測定条件で数値は揺れます。昔はストップウォッチでフィブリン析出までの時間を測っていた背景があり、現在は光学的・物理学的測定など自動化機器で測定する方法が一般的、と説明されています。
この“測定系の違い”は、臨床現場では見えにくいのに結果へ影響し得るため、「前回と比べて不自然な変化」を見たときに再検や条件確認を選びやすくなります。
特に救急・周術期は、時間の制約があるほど「検体由来のブレ」を疑えるかが安全性に直結します。
PTのみ延長・APTT正常のときは、第VII因子の異常が考えられると整理されています。
APTTのみ延長・PT正常のときは、第XII、XI、IX、VIII因子の異常が考えられる、という鑑別の方向づけができます。
両方が延長する場合は共通系(X、V、II、I)側の問題や、複数因子の低下・消費、重症の肝機能障害など“広範な凝固障害”を念頭に置く流れが臨床的です。
ここで実務的に重要なのは、「延長=出血傾向」と短絡しないことです。止血は一次止血(血小板血栓)と二次止血(フィブリン形成)で成り立ち、PT/APTTは主に“二次止血=凝固因子”側の評価に位置づけられます。
つまりPT/APTTが正常でも、血小板機能や血管因子など別の要素で出血することはあり得ますし、逆に延長していても臨床出血が乏しいケースもあります(例:因子XII関連などは臨床像とズレることがあるため、症状とセットで解釈する姿勢が必要です)。
周術期スクリーニングでは、血小板数やフィブリノゲン、Dダイマー等と合わせて評価する枠組みが紹介されています。
抗凝固療法との関係は、PTとAPTTの“使い分け”が最も問われる場面です。PTはワルファリン療法の効果判定・経過観察に、APTTはヘパリン療法の効果判定・経過観察に用いられると説明されています。
この基本を押さえると、採血結果を見た瞬間に「治療の影響として想定内か、逸脱していて危険か」を判断しやすくなります。
薬剤を見落とすと、凝固因子欠乏と誤認して不要な検査・輸血・延期判断につながるため、問診・処方歴・持参薬確認は実務上の最重要ポイントです。
一方で、ヘパリンはAPTTを延長させるためモニターに使われる、という説明があり、投与中の解釈は「基準値からの変化」「出血兆候」「投与目的(治療域か予防域か)」を合わせる必要があります。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
現場では、APTTが延長しているのにPTは正常という所見を見たとき、まず“ヘパリン混入(ライン採血など)”も含めて薬剤要因・採血条件を疑うと事故を減らせます。
ワルファリン内服中はPT(特にPT-INR)の延長が軸になりやすく、APTTだけで「大丈夫」と言い切れない点も臨床の落とし穴です(APTT異常が残る病態は別に存在し得ます)。
検索上位の解説は“内因系・外因系”で完結しがちですが、実務では「検査がズレる理由」を知っている人が強いです。PT/APTTはクエン酸加血漿を用いる検査であり、測定は機器・方法の影響を受けることが示唆されています。
つまり、採血条件(採血量の不足、凝固検体の取り扱い、採血部位、点滴ラインからの採血など)や、試薬・装置差で“患者の病態そのもの”とは別の揺れが入り得ます。
この視点があると、「出血症状がないのに急にAPTTだけ延びた」「前回と乖離する」という場面で、再採血や採血手技の是正を先に提案でき、不要なアラートや過剰介入を減らせます。
次に打つ手の設計も、医療従事者にとって重要です。PT/APTTは凝固因子異常のスクリーニングとして位置づけられ、必要時にどの因子が怪しいか推測して追加検査へ進む、という考え方が提示されています。
たとえば「APTTのみ延長」なら内因系因子(XII、XI、IX、VIII)方向、「PTのみ延長」なら第VII因子方向、「両方延長」なら共通系(X、V、II、I)方向をまず疑う、という“検査の地図”が作れます。
さらに、止血は一次止血(血小板)と二次止血(凝固因子)の連携なので、臨床症状や血小板数などを合わせて全体像で判断する、という原点に戻ると迷いにくくなります。
(参考リンク:PT/APTTそれぞれがどの凝固因子に対応し、PT-INRや基準範囲、PTのみ延長・APTTのみ延長の解釈が整理されています)
https://jaclap.org/guests/guests-2498/
(参考リンク:PTは外因系、APTTは内因系を反映し、測定法の背景(クエン酸加血漿、測定装置の考え方)や、ワルファリン=PT、ヘパリン=APTTという使い分けが説明されています)
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2011/PA02948_08