アレルゲン28品目一覧と医療従事者の対応

食物アレルギーの原因となるアレルゲン28品目について、義務表示8品目と推奨表示20品目の内容を詳しく解説します。医療現場での誤食防止対策や交差反応、検査方法まで理解できていますか?

アレルゲン28品目一覧

アレルゲン28品目の分類
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特定原材料(義務表示8品目)

えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)の表示が法律で義務化

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特定原材料に準ずるもの(推奨表示20品目)

アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ等の表示が推奨

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2025年4月から完全施行

くるみが義務表示に追加され、経過措置期間が終了

アレルゲン28品目の特定原材料(義務表示)

 

食品表示法に基づく食品表示基準により、特定原材料として表示が義務付けられているのは8品目です。えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)が該当し、これらは食物アレルギー症状を引き起こす頻度が高く、重篤度が高いことから法令で表示が義務化されています。
参考)https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_kakou_allegy.html

2023年3月に食品表示基準が改正され、くるみが特定原材料に追加されました。くるみによるアレルギー症例数の増加を踏まえた措置で、2025年4月1日から完全施行されています。これにより特定原材料は7品目から8品目に増加し、食品関連事業者は容器包装された加工食品にこれらを含む場合、必ず表示しなければなりません。
参考)【消費者庁】「くるみ」がアレルギー表示の義務表示に追加される…

特定原材料の表示方法には、個別表示と一括表示の2種類があります。個別表示では原材料名の直後に括弧を付して「(卵を含む)」のように表示し、一括表示では原材料欄の最後に「(一部に大豆・乳成分・小麦を含む)」とまとめて表示します。医療従事者として、患者への指導時にはこれらの表示方法の違いを理解し、正確に読み取る方法を伝えることが重要です。
参考)小児だけではない食物アレルギーの最新情報

アレルゲン28品目の特定原材料に準ずるもの(推奨表示)

特定原材料に準ずるものとして、表示が推奨されている20品目があります。アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンが対象です。
参考)【商品全般】 特定原材料等28品目は表示していますか?|お客…

これらは症例数や重篤な症状を呈する者の数が継続して相当数みられるものの、特定原材料に比べると少ないため、可能な限り表示することが推奨されています。2019年にはアーモンドが追加され、2024年にはマカダミアナッツが追加されました(まつたけは削除)。推奨表示品目は義務ではありませんが、多くの食品メーカーが自主的に表示しており、患者の安全確保に貢献しています。
参考)【管理栄養士監修】アレルギー表示の「28品目」って何?

医療従事者として注意すべき点は、28品目以外にもアレルギーを引き起こす食品が存在することです。特に魚介類、木の実類、果物類では、表示対象外の食材でもアレルギー反応を示す患者が存在します。10代以降の患者では、28品目の範囲で自身のアレルゲンがカバーされていないケースが30~40%あるというデータもあり、28品目不使用食品が万能ではないことを理解しておく必要があります。
参考)アレルギーの原因食物は28品目だけじゃない!?|セブン‐イレ…

アレルゲン28品目と医療現場での誤食防止対策

医療機関における食物アレルギー患者への対応では、誤食防止が最重要課題です。病院の給食システムでは、アレルゲン除去食の調理から配膳、提供まで複数回のチェック体制を構築することが推奨されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000zj6g-att/2r9852000000zjb9.pdf

具体的な対策として、配膳カードの作成、調理時と配膳時の2重・3重チェック体制、アレルギー対応食専用の食器やトレイの色分け(黄色など)による明確な区別が有効です。川崎市の事例では、「除去食・個別対応一覧表」を調理室に大きく掲示し、複数の職員で確認する体制をとっています。
参考)【講演レポート #11】食物アレルギーの事故を、調理現場、保…

調理担当者は、アレルギー食材を取り扱う際に食材ごとに手袋を交換し、管理栄養士が目視確認するとともに、指差し声出し確認を徹底しています。医療安全の観点からは、アレルギー食材の誤配膳による呼吸困難や生命の危険について、栄養管理室職員全員が理解しておくことが不可欠です。
参考)https://www.med-safe.jp/pdf/report_2016_2_R001.pdf

医薬品においても注意が必要で、リゾチーム塩酸塩(鶏卵由来)、タンニン酸アルブミン・耐性乳酸菌・カゼイン(牛乳由来)、ゼラチンカプセル(牛・豚由来)、キトサン(甲殻類由来)などが含まれる製品があります。薬剤師として患者のアレルギー既往歴を確認し、適切な製品選択を行う必要があります。​

アレルゲン28品目と交差反応の理解

医療従事者が理解すべき重要な概念として、交差反応があります。交差反応とは、花粉などの抗原による経粘膜・経気道感作後に、花粉と似たタンパク質をもつ植物性食物を経口摂取してアレルギー症状を引き起こす現象です。
参考)交差反応と食物アレルギー|サプリメントのヘルシーパスブログ

シラカバ・ハンノキ花粉症の患者では「Bet v 1 ホモログ」、スギ花粉症では「Polygalacturonase」、ブタクサ花粉症では「プロフィリン」が交差反応に関与するタンパク質です。特にシラカバ・ハンノキ花粉症の患者では、リンゴ、モモ、サクランボなどのバラ科果物、さらに豆乳でアナフィラキシー症状を呈することがあり注意が必要です。
参考)花粉と食物アレルギーの関係性は知っていますか?知らないと怖い…

口腔アレルギー症候群(OAS)は、原因食物が口腔粘膜に接触後15分以内に口腔、咽頭、口唇粘膜の刺激感、かゆみを生じる症状です。多くは自然に改善しますが、まれに蕁麻疹や鼻炎症状、アナフィラキシーショックに進展することがあります。花粉症患者に対しては、交差反応を起こしやすい食品について事前に情報提供し、初めて食べる際は注意するよう指導することが重要です。
参考)https://aojibi.com/2022/03/12/pfas-oas/

Bet v 1ホモログやプロフィリンは熱に不安定なため、果物は缶詰で、生野菜は加熱することで摂取可能となることも患者指導のポイントです。ラテックスアレルギー患者でも、バナナ、アボカド、キウイフルーツなどで交差反応が起こることが知られています。
参考)アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第14章 食…

アレルゲン28品目の検査方法の基礎知識

食品中のアレルゲン検査には、スクリーニング検査と確認検査の2段階があります。スクリーニング検査ではELISA法(酵素免疫測定法)を使用し、抽出液中のアレルゲンを定量して基準値である10μg/g以上かどうかを判定します。
参考)アレルゲンを含む食品の検査方法について/千葉県

ELISA法は、抗体が特定の物質との結合に対して極めて特異的であることを利用し、抗体を酵素で標識して抗体と結合する物質を検出する方法です。発色の濃淡を機械で測定し数値化することで、食品に含まれるアレルゲンの濃度を算出できます。
参考)https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/archive/issue/kouhoushi/health/69.pdf

確認検査では、スクリーニング検査で陽性となった食品に対して、卵・乳はウエスタンブロット法、えび・かに・くるみ・小麦・そば・落花生はPCR法を実施します。ウエスタンブロット法は試料中のタンパク質を電気泳動し、特定原材料由来のタンパク質に対する特異的抗体を用いて検出する方法です。PCR法は食品からDNA抽出を行い、定性PCRとアガロース電気泳動でDNAバンドを検出します。​
医療従事者として、これらの検査法の原理と限界を理解しておくことで、患者からの質問に適切に対応できます。食品表示の信頼性を支える検査体制について説明できることは、患者の不安軽減にもつながります。
参考)食品原材料検出のためのPCRプライマー開発に関する基礎的研究

アレルゲン28品目の最新動向と医療従事者の役割

アレルゲン表示制度は、症例数や重篤度などを考慮して随時見直しが行われています。2025年4月からのくるみの義務化に続き、カシューナッツについても木の実類の中でくるみに次いで症例数の増加が認められており、今後の動向に注意が必要です。
参考)くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについ…

医療従事者の役割として最も重要なのは、患者への適切な情報提供と教育です。患者自身が何のアレルギーなのかを正確に把握し、食品や医薬品の成分表示を確認する習慣をつけるよう指導する必要があります。包装された加工食品には表示義務がありますが、外食、デパ地下の惣菜、アルコール飲料には注意が必要であることも伝えましょう。​
食物アレルギーの診断では、検査で陽性でも食べて症状が出ない場合が多くあります。特定の食物によりアレルギー症状が出たことと、検査により陽性が出たことの両方が確認できた場合に食物アレルギーと診断されるため、安易な除去食指導は避けるべきです。定期的に医療機関を受診し、安全に摂取できる食品や量を増やすことが可能か指導を受けることを推奨します。
参考)食物アレルギーの治療と対処法|公益財団法人ニッポンハム食の未…

食物アレルギー患者は0~6歳で30万~50万人と推計されており、成長するにつれて患者数は減少する傾向にあります。小児の場合は成長とともに耐性を獲得する場合が多いものの、成人では可能性が低いことも理解しておく必要があります。医療従事者として、患者のライフステージに応じた適切な管理と指導を行うことが求められます。
参考)https://www.foodallergy.jp/wp-content/uploads/2024/04/FAmanual2023.pdf

東京都保健医療局:一般用加工食品(アレルゲン)の詳細な表示ルールと最新情報
厚生労働省:食物アレルギーに関する表示の最新通知文書(PDF)
日本小児アレルギー学会:食物アレルギーの診療の手引き2023(PDF)