チザニジンの副作用で最も頻繁に報告されるのは眠気と口渇です。国内の臨床試験では、110例中の副作用発現率が20.0%であり、主な副作用として口渇8例(7.3%)、眠気7例(6.4%)、めまい・ふらつき4例(3.6%)、悪心3例(2.7%)が報告されています。
これらの副作用は以下の頻度で出現します。
眠気と口渇が高頻度で現れる理由は、チザニジンがα2アドレナリン受容体を刺激することで、中枢神経系および自律神経系に影響を与えるためです。
チザニジンの循環器系副作用は重篤な転帰をとる可能性があり、特に注意が必要です。主な症状として以下が報告されています:
0.1~5%未満の頻度で出現する副作用:
症例報告にみる重篤な循環器副作用:
37歳女性が2mgのチザニジンを2ヶ月間服用後、意識消失で入院。心電図では30bpmの洞性徐脈とQT延長(QTc 495msec)を認め、一時的ペースメーカー挿入が必要でした。投与中止後12時間で心拍数は70-100bpmに正常化し、QTcも431msecに改善しました。
また、75歳女性ではチザニジン過量服用により、精神状態の変化、徐脈、低血圧が出現。救急処置として心拍調律とバソプレッサー投与が必要となりました。
これらの症例から、チザニジンは少量でも重篤な循環器副作用を引き起こす可能性があることが分かります。
チザニジンの消化器系副作用は比較的軽微なものから重篤な肝機能障害まで幅広く報告されています。
頻度別の消化器系副作用:
0.1~5%未満:
0.1%未満:
頻度不明の重篤な副作用:
肝機能障害では著しいAST・ALT上昇とともに、悪心・嘔吐、食欲不振、全身倦怠感が現れます。これらの症状が出現した場合は直ちに投与を中止し、適切な処置が必要です。
肝機能検査値の変化:
チザニジンの過量投与は重篤な意識障害を引き起こす可能性があります。本邦では過量投与の報告例が少ないものの、意識障害が遷延した症例が報告されています。
過量投与時の症状:
緊急対応と処置:
特異的な拮抗薬は存在しないため、支持的治療が基本となります。症状は投与中止後、比較的早期に改善する傾向があります。
チザニジンはα2アドレナリン受容体作動薬として作用し、その薬理学的特性が副作用の発現に深く関わっています。
作用機序と副作用の関係:
🧠 中枢神経系への作用
🫀 循環器系への影響
💧 自律神経系への作用
体内動態と副作用の関係:
チザニジンは肝臓で代謝されるため、肝機能低下患者では血中濃度が上昇し、副作用が増強される可能性があります。また、CYP1A2阻害薬との併用により血中濃度が上昇し、副作用リスクが高まることが知られています。
薬物相互作用による副作用増強の例として、フルボキサミンとの併用では血中濃度が約33倍に上昇するため併用禁忌となっています。
これらの薬理学的特性を理解することで、副作用の予測と適切な対処が可能となります。