誤嚥は、本来胃に送られるべき食べ物や飲み物、唾液が誤って気管に入ってしまう現象です 。健康な成人では、嚥下時に喉頭蓋が気管を閉じることで誤嚥を防いでいますが、この機能が低下することで誤嚥が発生します 。
参考)https://www.kishoku.gr.jp/disease/aspiration/
主な原因として、加齢による嚥下筋の筋力低下が挙げられます 。特に舌骨上筋群や喉頭挙上筋の衰えにより、喉頭の位置が下降し、嚥下時の適切な喉頭挙上が困難になります 。また、脳血管障害やパーキンソン病などの神経疾患により、嚥下反射そのものが障害されることもあります 。
参考)https://healthscienceshop.nestle.jp/blogs/isocal/knowledge-malisocal-006-index
誤嚥が発生すると、まず咳やむせなどの防御反応が現れます 。これは気管に入った異物を外に出そうとする自然な反応です 。しかし、高齢者では咳反射が弱くなっているため、この防御機能が十分に働かない場合があります 。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/254178/
より深刻な症状として、誤嚥性肺炎の発症があります 。口腔内の細菌が唾液とともに気管から肺へ流入し、肺で炎症を引き起こします 。特に高齢者や寝たきりの患者では、栄養状態の低下や免疫機能の低下も相まって、重篤な肺炎に進行するリスクが高くなります 。
誤嚥には大きく分けて2つのタイプがあります。一つは咳やむせを伴う「顕性誤嚥」、もう一つは症状が現れない「不顕性誤嚥」です 。
参考)https://kanematsu-dent.com/1526/
不顕性誤嚥は特に危険で、睡眠中に無意識のうちに唾液が気管や肺に流れ込む現象です 。脳卒中の後遺症や加齢による喉の感覚低下が原因となり、異物が気道内に入っても「咳き込み」や「むせ」などの反射が見られません 。発熱や痰の増加で初めて症状に気づくことが多く、風邪と勘違いして放置されるケースもあります 。
参考)http://www.tokyo-rehabili.jp/hospital/column/column014.html
誤嚥性肺炎の予防には、口腔内を清潔に保つことが最も重要です 。歯磨きはもちろん、歯間ブラシやフロスを使用した丁寧な清掃、舌ブラシによる舌表面の清掃が効果的です 。
唾液腺マッサージにより唾液分泌を促進し、自然な口腔洗浄をサポートすることも大切です 。
参考)https://www.nutri.co.jp/nutrition/dysphagia/prevention.html
食事時の適切な体位も誤嚥予防に重要です 。
座位では足底を床面にしっかりつけ、椅子に深く座り、軽く前傾姿勢を保ちます 。頭部が後ろにのけぞることがないよう、あごを軽く引いた姿勢を維持することがポイントです 。ベッドでの食事では、背上げ角度30~60度のリクライニング位で、頸部を軽度屈曲させた姿勢が推奨されます 。
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/226217/
誤嚥リスクのある方には、食事形態の調整が必要です 。とろみ食は代表的な嚥下調整食で、飲み物や汁物にとろみをつけることで咽頭通過速度を遅くし、飲み込みやすくします 。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類では、「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分けられています 。
参考)https://www.clinico.co.jp/columns/carefood002/
嚥下機能の維持・向上には、日常的な嚥下リハビリテーションが効果的です 。頭部挙上訓練では、仰向けの状態でつま先を見るように頭を持ち上げ、嚥下に関わる首の筋肉を強化します 。また、額に手を当てて抵抗を加えながら下を向く「嚥下おでこ体操」は、より簡便に行える訓練法として推奨されています 。
参考)https://ksmcs.jp/krh/rehabilitation/eng0627/
咀嚼訓練では、ガムやするめなどを使用して噛むために必要な筋肉を鍛え、空嚥下や舌突出嚥下法により嚥下反射を促進する練習も有効です 。これらの訓練を継続することで、誤嚥のリスクを大幅に軽減できます 。
参考)https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/enge-kiso.html
誤嚥性肺炎を防ぐ安心ごはん (食事療法はじめの一歩シリーズ)