脳血管障害とは、脳の血管の異常が原因で起こる脳や神経の疾患の総称で、一般的に「脳卒中」と呼ばれています 。この疾患群は日本における死因の第4位を占め、死亡数は10万人を超える重要な医療問題となっています 。脳血管障害は大きく分けて、脳の血管が詰まることで起こる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類されます 。
参考)https://www.mrso.jp/mikata/1456/
脳血管障害の推定患者総数は19万7500人で、年齢階級15〜34歳における推定患者数は800人と、全体の0.41%を占めています 。脳梗塞は最も一般的なタイプで、推定患者数は12万6900人となっています 。
脳血管障害の症状は発症する脳の部位によって異なりますが、代表的なものとして急激な片麻痺、片側の顔や手足のしびれ、呂律困難、意識障害があります 。くも膜下出血の場合は、突然の激しい頭痛から症状が出現し、一方で脳梗塞では頭痛が起こることはまれです 。
参考)https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/noukekkansikkan/nou-kekkan-shindan-chiryo.html
診断においては意識レベルの確認が最初に行われ、名前や場所、今日の日付を答えられない場合は意識障害ありと判断します 。麻痺やしびれの有無も重要な診断基準で、数日で急激に進行している場合は脳血管障害を強く疑います 。
心原性脳塞栓症では、心房細動により心臓内で形成された血栓が脳血管まで運ばれ、太い血管で詰まりやすいため脳梗塞が広範囲となり重症化しやすいのが特徴です 。主な症状は突然現れる片側の麻痺や構音障害、失語や失認、意識障害などで、麻痺などの後遺症が残りやすいとされています 。
参考)https://karasugawa-noushinkeika.com/cerebrovascular_disease.html
脳出血は高血圧をお持ちの方に多く見られ、長期間の高血圧により血管が徐々に脆く破れやすくなることが原因です 。くも膜下出血は脳動脈瘤が破裂することで、くも膜下腔に血液が流れ込み、突然の頭痛や意識障害をきたします 。
参考)https://www.jikeikai-group.or.jp/shinsuma/magazine/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD%E6%B2%BB%E7%99%82%E7%89%B9%E9%9B%86/
脳血管障害の診断には頭部CT検査やMRI検査が有用で、出血や梗塞の場所や広さ、異常がある血管の特定が可能です 。脳梗塞が疑われる場合は、頭部MRIや頭部CTといった画像検査によって脳梗塞の有無を確認していきます 。
参考)https://minamikyoto.hosp.go.jp/section/shinryoka_shinkeinaika_nou.html
脳血栓症の可能性が高い場合は頸動脈超音波検査、脳塞栓性が疑われる場合は心臓超音波検査(心エコー)や心電図も実施します 。脳血管の評価のために、カテーテルを用いた脳血管造影検査が行われることもあります 。
現在注目されている再生医療では、幹細胞を使用して損傷した脳組織を再生する治療法が開発されています 。患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養し、静脈投与や脊髄腔内投与で患部に注入して神経細胞の修復を試みます 。
参考)https://neurotech.jp/medical-information/stemcell-treatment-cerebral-infarction-aftereffects-improvement/
幹細胞治療には炎症を抑える、損傷した神経の修復を助ける、神経ネットワークの再構築を促すなどの効果が期待されています 。脳血管の損傷により一度壊れた脳細胞を再生医療で修復することで、麻痺や呂律困難などの後遺症の回復が期待できます 。
参考)https://fuelcells.org/treatment/stroke/
超音波を用いた血栓溶解促進療法も最新技術として研究が進んでおり、rt-PA分子のフィブリン網目への浸透を促進することで血栓溶解を促進します 。中周波数超音波照射、定在波抑制、貼付型超音波振動子の技術を組み合わせることで、より効果が高く安全な線溶療法の確立が目指されています 。
参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/23777