「一調剤(1調剤)」は、実務上は“服用時点が同一で、かつ投与日数も同じ”まとまりとして扱われます。薬が2品目以上あっても、服用時点と日数が揃っていれば同じ「1調剤」に収まります。逆に、服用時点が同じでも投与日数がズレた瞬間に、同一処方箋でも「2調剤」へ分かれる可能性が出ます(この分岐が、向精神薬加算など「1調剤単位」の算定に直結します)。
一方で「1剤」は、処方箋受付1回の中で服用時点が同じものの単位として説明されることが多く、日数まで含めた切り方が「1調剤」です。つまり、同じ“毎食後”でも、7日分と14日分が同じ処方箋に混在すれば「服用時点は同じ」でも「1調剤としては別」になり得ます。レセコンが自動でまとめてくれる場面でも、疑義照会や残薬調整で日数が変わると境界が変化するので、「服用時点+日数」を頭の中に固定しておくのが安全です。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.13026
向精神薬が処方中に含まれている場合、向精神薬加算は「1調剤につき8点」を薬剤調製料に加算できます。ここで重要なのは、品目数や投与日数に関係なく「1調剤単位」で評価される点で、薬の数ではなく“調剤という行為の区切り”で点数が動くことです。
また、同じ処方箋でも投与日数が異なることで「1調剤」が分割されると、結果として加算の回数が増え得ます。典型例は残薬調整などで一部薬剤だけ日数が短くなり、服用時点は同じでも日数が一致しなくなるケースです。現場では「日数が減ったのに患者負担が増える」こともあり得るため、患者説明(なぜそうなるのか)まで含めて事前に想定しておくとトラブルが減ります。
さらに注意点として、1調剤の中に麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬が複数含まれる場合、いずれかの加算を「1回のみ算定」とされる運用があります。つまり「向精神薬も入っているから8点を追加で…」とはならず、同一調剤内では加算の“重ね掛け”ができない場面がある、という理解が必要です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/8d0f30ed7bff19780d9daebe6d3e014a971ce73f
向精神薬の内服薬は、診療報酬上の扱いとして投薬期間の上限が14日・30日・90日のいずれかに区分される、という整理がされています。したがって監査の最初は「この薬は何日上限か」を確認し、上限を超える日数が出ていないかを見てから、「必要なら分割処方になり、そのとき1調剤が何個になるか」を考えるのが筋の良い手順です。
意外と見落としやすいのは、“向精神薬だから一律30日”ではない点です。現場で頻用される不安・睡眠関連の向精神薬の一部は上限30日として扱われる、という整理が示されており、薬剤ごとの上限の違いが「処方日数」「分割の要否」「患者来局頻度」「一調剤の数」に連鎖します。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000137949.pdf
日数制限は、患者の受診間隔・在宅の訪問設計・処方提案にも影響します。たとえば「長期処方でアドヒアランスを確保したい」意図があっても、上限日数が短い薬が混ざると設計が崩れやすく、結果として一包化や服薬カレンダー運用の負担が増えることがあります。こうした“制度由来のオペレーション負荷”は、調剤側が先回りして説明しないと、患者側には単なる不便にしか見えません。
投薬期間の根拠(制度の区分や運用の背景)を確認したいときの資料(中医協資料)
向精神薬の投薬期間上限(14日/30日/90日)の区分背景と具体例の説明に使える(中医協資料)
次のように、服用時点が同じでも投与日数が一致しないと「1調剤」が割れる、というのが現場で最も実害の大きいポイントです。特に向精神薬では、日数制限や残薬調整が絡みやすく、処方設計の途中で“思わぬ2調剤化”が起きます。
例(イメージ)。
🧾処方箋1枚の中で
この場合、服用時点はどちらも就寝前で同一でも、投与日数が一致しないため「同一1調剤」とは扱いにくく、結果として「2調剤」としての扱いが問題になります(レセプト上の加算の回数・患者負担・説明内容まで変わります)。
また、頓服(不眠時など)が混在する処方では、服用時点の扱い(毎日定時なのか、必要時なのか)で現場の解釈が揺れやすく、監査時に“日数という概念をどう見るか”で迷いが生じがちです。こういうときほど、「その薬がどの単位で指示されているか(○日分なのか、○回分なのか)」を処方意図として読み解き、疑義照会で固めるのが安全です。
「一調剤」を理解すると算定は安定しますが、医療安全の観点では“1調剤の単位で薬歴・監査・説明が分断されること”自体がリスクにもなります。向精神薬は相互作用や鎮静、ふらつき、依存、せん妄などの文脈で語られがちですが、意外な盲点は「循環器リスクが背景にある患者」での見逃しです。向精神薬がBrugada症候群の誘因となり得て、血中濃度が治療域内でも薬剤誘発性Brugada型心電図が出る可能性がある、という症例報告もあります。
ここで現場的に効くのは、「分割されて別1調剤になった向精神薬」を“別物として処理して安心しない”運用です。具体的には、同一患者の同日処方で一部が日数調整されて2調剤化したときでも、相互作用・過鎮静・転倒リスク・運転可否・アルコール併用・急な中断(離脱)などの説明は、全体を一枚の安全チェックとして通すべきです(点数の単位と安全の単位は一致しません)。
加えて、患者説明では「制度上の日数制限」「薬学的に守りたい注意点」を混ぜず、分けて話すと理解が上がります。たとえば「この薬は制度上○日まで」「ただし安全面で最初の1〜2週は眠気が強まることがあるので生活面で注意」のように、根拠の種類を切り分けると納得されやすいです。

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