ジェネリック医薬品の種類とオーソライズドジェネリック

ジェネリック医薬品にはどのような種類があるのでしょうか。一般的な後発医薬品からオーソライズドジェネリックまで、医療現場で知っておくべき分類と特徴を詳しく解説します。あなたは適切な薬剤選択ができていますか?

ジェネリック医薬品の種類と分類

ジェネリック医薬品の主要な種類
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一般的なジェネリック医薬品

先発医薬品と同一有効成分で製造された後発医薬品

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オーソライズドジェネリック(AG)

先発メーカーから許諾を得て製造される特別なジェネリック医薬品

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バイオシミラー

バイオ医薬品のジェネリック版として開発された生物学的同等品

ジェネリック医薬品の基本的な種類と後発医薬品の分類

ジェネリック医薬品は、大きく分けて複数の種類に分類されます。最も一般的なのは、先発医薬品の特許期間が終了した後に製造される通常のジェネリック医薬品です。これらは先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、同一経路から投与する製剤として定義されています。

 

通常のジェネリック医薬品の特徴。

  • 先発医薬品と同じ有効成分を使用
  • 効能・効果、用法・用量が原則的に同一
  • 開発期間が3~5年と先発医薬品より短縮
  • 研究開発費が抑えられるため薬価が安価
  • 厚生労働省による厳格な承認審査を経て製造販売

これらの基本的なジェネリック医薬品は、日本国内での普及率が約80%に達しており、医療費削減に大きく貢献しています。医療機関や薬局では、患者の経済的負担軽減と医療保険財政の改善を目的として積極的に推奨されています。

 

また、製剤技術の向上により、先発医薬品よりも服用しやすい工夫が施されたジェネリック医薬品も多数存在します。水なしでも飲めるOD錠(口腔内崩壊錠)や、苦味をコーティングして飲みやすくした製剤、粒子を小さくしてザラつき感を抑えた製剤などがその例です。

 

オーソライズドジェネリック(AG)の種類と分類システム

オーソライズドジェネリック(AG)は、先発医薬品メーカーから許諾(Authorize)を得て製造されるジェネリック医薬品の特別な種類です。AGは先発医薬品により近い特性を持つため、医療現場で注目されています。

 

AGの分類システムは以下の3つに区分されます。
AG1(最も先発医薬品に近いタイプ)

  • 有効成分、添加物、製造方法がすべて先発医薬品と同一
  • 同一の製造所で生産される場合が多い
  • 先発医薬品と実質的に同じ製品
  • 形状、色、風味も先発医薬品と同一

AG2(製造場所が異なるタイプ)

  • 有効成分、添加物、製造方法は先発医薬品と同一
  • 製造所のみが異なる場合がある
  • 先発メーカーから技術移転を受けた信頼できる製造業者が生産
  • 品質管理基準は先発医薬品と同等レベル

AG3(原薬製造が異なるタイプ)

  • 有効成分の種類と量は同一だが、原薬の製造方法が異なる
  • 添加物と製法は先発医薬品と同一
  • 効果や安全性に影響はないが、品質特性に若干の違いが生じる可能性
  • 添加物アレルギーの心配がある患者にも適用可能

これらの分類により、医療従事者は患者の状況に応じて最適なAGを選択することが可能になります。

 

一般的なジェネリック医薬品と先発医薬品の製剤上の違い

一般的なジェネリック医薬品と先発医薬品には、効果や安全性は同等でありながら、製剤上の違いが存在します。この違いを理解することは、適切な薬剤選択において重要です。

 

同じでなければならない要素:

  • 有効成分の種類と量
  • 効能・効果
  • 用法・用量
  • 投与経路
  • 品質・有効性・安全性のレベル

異なっても良い要素:

  • 形状や大きさ
  • 色や味
  • 添加剤の種類
  • 製造方法の詳細
  • パッケージデザイン

添加剤の違いについては特に注意が必要です。患者の服用しやすさや苦味の軽減を目的として、各製薬会社が独自の工夫を施すため、必ずしも先発医薬品と同じ添加剤が使用されるわけではありません。

 

この違いにより、以下のような改良が実現されています。

  • マスキング技術による苦味の軽減
  • 錠剤の小型化による服用しやすさの向上
  • 薬効マークや文字印刷による識別性の向上
  • 分割線の追加による用量調整の容易化

ただし、これらの変更は必ず有効性や安全性に影響しない範囲で行われ、厚生労働省による厳格な審査を経て承認されています。

 

ジェネリック医薬品の製造方法による特殊分類

ジェネリック医薬品は製造方法の違いによっても分類することができます。この分類は、医薬品の品質特性や供給安定性に影響を与える重要な要素です。

 

原薬製造方法による分類:
化学合成医薬品のジェネリック

  • 低分子化合物を化学的に合成して製造
  • 比較的製造が容易で多くのメーカーが参入可能
  • 品質のばらつきが少なく安定供給が期待できる
  • 現在流通しているジェネリック医薬品の大部分を占める

バイオシミラー(バイオ後続品)

  • 生物学的製剤のジェネリック版
  • 微生物や動物細胞を用いて製造される高分子タンパク質医薬品
  • 製造技術が複雑で高度な設備と技術力が必要
  • 先発品との同等性評価がより厳格

製剤技術による分類:
改良型ジェネリック医薬品

  • 先発医薬品にはない新しい製剤技術を採用
  • 徐放性製剤や口腔内崩壊錠などの特殊な剤形
  • 患者のコンプライアンス向上を目的とした設計
  • 付加価値の高いジェネリック医薬品として位置づけ

標準型ジェネリック医薬品

  • 先発医薬品と基本的に同じ製剤技術を使用
  • コスト効率を重視した設計
  • 大量生産により価格競争力を確保

これらの製造方法の違いは、薬剤の特性だけでなく、供給体制や価格設定にも大きな影響を与えます。医療機関では、これらの特徴を考慮した上で適切なジェネリック医薬品を選択することが求められます。

 

医療現場でのジェネリック医薬品選択における実践的判断基準

医療現場において適切なジェネリック医薬品を選択するためには、単に価格の安さだけでなく、複数の実践的判断基準を総合的に考慮する必要があります。

 

患者要因による選択基準:
アレルギー歴と添加剤の検討

  • 患者の過去のアレルギー歴を詳細に確認
  • 添加剤の種類と配合量の違いを考慮
  • 特に食物アレルギーや化学物質過敏症の患者では慎重な選択が必要
  • AGの場合は添加剤が先発品と同一のため安全性が高い

服薬コンプライアンスの向上

  • 患者の年齢や嚥下機能に応じた剤形選択
  • 高齢者には大きさや形状を考慮したジェネリック医薬品
  • 小児には味や服用しやすさを重視した製剤
  • 視覚障害者には識別しやすい色や形状の製品

薬局・医療機関の運用面での選択基準:
供給安定性と在庫管理

  • 製造メーカーの供給能力と実績の評価
  • 原薬調達先の安定性確認
  • 長期的な供給継続性の保証
  • 災害時や緊急時の供給体制の確認

品質保証体制の評価

  • 製造販売承認の取得状況
  • GMP(適正製造規範)の遵守状況
  • 品質管理データの透明性
  • 副作用報告や安全性情報の迅速な提供体制

経済性と医療政策の考慮:
現在の診療報酬制度では、ジェネリック医薬品の使用促進が図られており、後発医薬品調剤体制加算や後発医薬品減算などの仕組みが導入されています。医療機関は以下の観点から選択を行うことが重要です。

  • 患者の自己負担軽減効果の最大化
  • 医療保険財政への貢献度
  • 地域医療における薬剤費の適正化
  • 長期的な医療費抑制効果の実現

これらの基準を総合的に判断することで、患者にとって最適なジェネリック医薬品の選択が可能となり、安全で効果的な薬物療法の提供につながります。

 

厚生労働省のジェネリック医薬品に関する詳細な情報と最新の政策動向については、以下を参照してください。

 

厚生労働省後発医薬品(ジェネリック医薬品)使用促進について