意識障害の原因と症状から治療までの基礎知識

意識障害は脳血管障害から代謝異常まで多岐にわたる原因で発症し、JCSやGCSによる評価が重要な医学的緊急事態です。適切な診断と迅速な治療により予後が大きく変わる意識障害について、どのような対応が求められるでしょうか?

意識障害の基礎知識と重要性

意識障害の重要ポイント
🧠
意識障害の定義

周囲の状況や自分自身について正しく認識できない状態

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重要な評価指標

JCS(Japan Coma Scale)とGCSによる客観的評価

医学的緊急性

迅速な原因究明と適切な治療が生命予後を左右する

意識障害の定義と医学的重要性

意識障害とは、意識が混濁し、外側からの刺激や呼び掛けに無反応であったり、状況を正しく認識できなかったりする状態を指します 。この病態は診療科を問わず多くの患者に見られ、看護師や医療従事者は患者の状態に合わせた適切な対応が求められます 。
参考)https://j-depo.com/news/consciousness-level.html

 

意識障害は大きく「意識混濁」と「意識変容」の2つに分類されます。意識混濁は刺激や呼び掛けに無反応である状態、意識変容は幻覚や錯乱などの症状が見られる場合を指します 。最も重度の意識障害では完全に意識を喪失した昏睡状態となり、この段階では生命に直接関わる危険な状態となります 。
参考)https://www.kango-roo.com/word/14912

 

医療現場において意識障害は緊急性の高い病態として位置づけられており、患者の生命に直結する重要な症状です。適切な評価と迅速な対応により、患者の予後が大きく左右されるため、正確な知識と対応技術が医療従事者には不可欠となります 。

意識障害の症状と重症度分類

意識障害の症状は、軽度のものから重度まで段階的に分類されており、医学的には傾眠、昏迷、半昏睡、昏睡の4段階に区分されています 。この分類により、患者の状態を客観的に評価し、適切な治療方針を決定することが可能となります。
参考)https://www.saiseikai.or.jp/medical/symptom/syncope/

 

傾眠は軽度の意識障害で、刺激を与えたり呼びかけたりすることで意識が覚醒しますが、放置すれば眠る状態を指します 。昏迷は中程度の意識障害で、強い刺激でないと覚醒しない状態となります 。さらに重度になると半昏睡、そして最も重篤な昏睡状態へと進行していきます。
症状の進行過程では、患者の反応性や覚醒レベルが段階的に低下します。初期段階では軽い呼びかけに反応していた患者も、症状が進行すると強い刺激が必要となり、最終的には痛み刺激にも反応しない状態となります 。このような症状の変化を正確に把握することは、治療効果の判定や病状の変化を監視する上で極めて重要です。
参考)https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/career_skillup/20240824-2173255/

 

意識障害の主要原因疾患

意識障害の原因は多岐にわたり、医学的には「一次性脳障害」と「二次性脳障害」の2つのカテゴリーに大別されます 。一次性脳障害は意識の中枢である脳幹や大脳に直接的な病変がある場合で、二次性脳障害は脳以外の疾患により意識の中枢に機能障害を来たす病態です 。
参考)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/ishikishougai.pdf

 

一次性脳障害の代表的な疾患には、脳血管障害、頭部外傷、脳腫瘍、中枢感染症(髄膜炎や脳炎)、その他の頭蓋内疾患があります 。これらの疾患では、脳組織の直接的な損傷や頭蓋内圧の亢進により、意識を司る脳幹や大脳皮質の機能が障害されることで意識障害が発症します。
二次性脳障害では、心血管性、代謝・内分泌性、呼吸不全、外因性中毒など様々な原因が関与します 。例えば、糖尿病性昏睡、肝性昏睡、薬物中毒、電解質異常などが含まれ、これらの全身性疾患が間接的に脳機能に影響を与えることで意識障害を引き起こします。原因疾患の特定は治療戦略の決定において極めて重要で、原因に応じた適切な治療により症状の改善が期待できます。

意識レベルの評価方法(JCSとGCS)

意識障害の評価には、客観的で再現性の高い評価指標が必要であり、現在JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)が広く使用されています 。これらの評価スケールにより、医療従事者間での情報共有が円滑になり、患者の経時的な変化を正確に把握することが可能となります。
参考)https://motoyawata.clinic/blog/jcs-gcs/

 

JCSは日本で開発された意識障害の評価方法で、0から300の数値で表現されます 。0が正常な状態で、数字が大きくなるほど重度の意識障害を示します。JCSは覚醒度合いによって3段階(1桁、2桁、3桁)に分けられ、さらにその中でも3段階に細分化されることから「3-3-9度方式」とも呼ばれています 。
GCSは海外でも広く使用される国際的な評価指標で、E(開眼機能)、V(言語機能)、M(運動機能)の3要素に分けて評価します 。E(開眼機能)は1~4点、V(言語機能)は1~5点、M(運動機能)は1~6点で評価し、合計点は3~15点となります。健常者は15点、最も重度の意識障害では3点となり、より詳細な意識状態の把握が可能ですが、JCSと比較して複雑で算出に時間がかかるという特徴があります 。

意識障害患者の診断プロセスと検査手順

意識障害患者の診断では、まずバイタルサインの確認と生命維持に必要な救命救急処置が最優先されます 。呼吸・循環管理を十分に行いながら、意識障害レベルの判定、病因診断、局在診断を並行して実施する必要があります 。
診断過程では問診と診察が最も重要とされ、患者の既往歴、現病歴、服薬状況、外傷の有無などの詳細な情報収集が行われます 。身体診察では、全身の内科的診察を素早く行い、痙攣、臭気、外傷、注射痕の有無を調べます 。さらに神経学的診察として、呼吸の性状、髄膜刺激徴候の有無、脳幹徴候(姿位、瞳孔の性状、対光反射、角膜反射、頭位変換眼球反射など)、麻痺の有無を迅速に調べます 。
参考)https://www.masatonc.com/disturbance-of-consciousness/

 

検査については、心電図検査、簡易血糖検査、頭部画像検査、血液検査などが基本的な検査項目として実施されます 。必要に応じて脳血管撮影や髄液検査なども追加され、複数の原因が組み合わさって発生する場合もあるため、包括的な検査アプローチが重要となります 。正確な原因診断により適切な治療法の選択が可能となり、患者の予後改善につながります。

意識障害の治療戦略と看護管理

意識障害の治療は原因疾患に対する根本的治療と、意識障害による合併症の予防・管理の両面から行われます。一次性脳障害では脳圧降下療法、外科的治療、抗てんかん薬投与などが実施され、二次性脳障害では血糖値補正、電解質異常の改善、解毒処置などが行われます 。
看護管理においては、生命の危機的状態にある患者への対応が最重要課題となります。看護計画では、異常の早期発見と生命の危険を脱するための的確な治療を受けられることを目標とし、バイタルサイン、意識レベル、瞳孔・眼球運動、麻痺の有無、髄膜刺激症状の有無、けいれんの有無などを継続的に観察します 。
意識障害患者では体動制限により褥瘡のリスクが高まるため、定期的な体位変換、皮膚状態の観察、清潔保持が重要な看護項目となります 。また、意識レベルの変化により誤嚥や気道閉塞のリスクも高まるため、適切な体位保持、口腔ケア、気道確保の準備が必要です。患者の安全確保とともに、家族への説明と心理的支援も看護師の重要な役割として位置づけられています。