ステロイド注射を繰り返すほど、腱が弱くなって再発しやすくなります。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)は、前腕屈筋群・回内筋群の付着部である内側上顆に、繰り返しのストレスが蓄積することで発症します。 単純な「使いすぎ」にとどまらず、筋疲労 → 微細損傷 → 変性という段階的な腱組織の劣化が根本にあります。
関連)https://ar-ex.jp/disease/disease-1071/
手首を屈曲・回内させる動作が多い職業・スポーツで多発します。
代表的な原因動作は以下の通りです。
医療従事者では、外科系・歯科系を中心に意外と高頻度で見られます。重い器具を長時間グリップし続ける状況は、ゴルフや野球のスイング動作と力学的に類似しています。これは見落とされがちな事実です。
発症を理解するうえで重要なのが腱付着部の血行です。内側上顆付近の腱は血流が乏しい部位で、一度変性が進むと「炎症」というより「腱症(テノパシー)」の状態になります。 炎症モデルだけで管理すると治療が長引く原因になるので注意が必要です。
関連)https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/golf-elbow.html
急性期の基本は、まず患部の負担を徹底的に減らすことです。
安静とアイシングが最初のステップです。氷嚢で1回20分・1日数回の冷却を行い、炎症症状(熱感・腫脹)を抑えます。 冷やしすぎが原則です。
関連)https://www.s-treatment.com/15943521226240
薬物療法はNSAIDs(ロキソプロフェン・セレコキシブなど)の内服・外用が標準です。 胃腸への影響を考慮し、長期連用は避けて期間を限定して使用します。
関連)https://www.nozomi-sekkotuin.jp/symptoms/jouwankotuuti/
装具療法として、エルボーバンド(肘用ベルト)やテーピングで内側上顆への牽引力を分散させます。
関連)https://tokyo-jointclinic.jp/tsunashima/treatment/elbow/golf-elbow/
| 治療手段 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| アイシング | 急性炎症・疼痛軽減 | 1回20分を超えない |
| NSAIDs内服/外用 | 消炎鎮痛 | 胃腸障害・腎機能に注意 |
| エルボーバンド | 付着部への牽引力を軽減 | 長時間装着で血流低下・筋力低下 |
| ステロイド注射 | 強力な抗炎症 | 繰り返すと腱脆弱化→再発悪循環 |
ステロイド注射については、短期的な痛みの緩和に強力な効果を発揮します。 しかし複数回繰り返すと腱の脆弱性が惹起され、注射で治まっては再発するという悪循環に入る症例が臨床上多く報告されています。 これは要注意です。
ステロイドは「緊急の痛み管理」として最小回数で使うのが原則です。
痛みが和らいだ段階から、積極的なリハビリ移行が再発予防の核心です。 安静だけでは腱組織の質的回復は期待できません。
関連)https://www.zamst-online.jp/brand/supporter/52551/
リハビリは「ストレッチ → 等尺性収縮 → 等張性収縮 → エクセントリック収縮」の段階的な負荷漸増が基本です。
関連)https://rehacon.net/golf-elbow-pain-treatment-rehabili/
エクセントリック(遠心性)収縮トレーニングは、特に腱症への効果が注目されています。健側の手を補助しながらゆっくり手首を伸展方向に戻す動作を繰り返すことで、変性した腱組織のリモデリングを促します。
関連)https://rehacon.net/golf-elbow-pain-treatment-rehabili/
具体的なプログラム例。
物理療法では、超音波治療・低周波電気治療・ハイボルテージが補助的に使われます。 血流改善と筋緊張緩和を狙いますが、運動療法の代替にはなりません。
関連)https://m-seikei.net/hand_format/golfers-elbow/
スポーツや仕事への復帰目安はおよそ4〜6週間が一つの基準です。 ただし疼痛が完全消失し、かつ患側の握力が健側の85〜90%以上に回復していることを確認してから復帰させることが再受傷予防のポイントです。これが条件です。
関連)https://www.zamst-online.jp/brand/supporter/52551/
保存療法を6〜12か月継続しても改善しない症例では、手術または最新の低侵襲治療を検討します。
近年注目されているのがモヤモヤ血管(異常新生血管)に対する動注治療(カテーテル治療・TAME)です。
関連)https://www.west-umeda-clinic.com/elbow/
慢性的な腱症では、痛みの原因として炎症だけでなく異常な新生血管の増生とそれに伴う神経線維の増殖が関与します。 この異常血管に対して、動脈から細い針を刺して薬液を注入・塞栓する動注治療が開発されています。
関連)https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/golf-elbow.html
外側上顆炎(テニス肘)に対するTAME施行後、動作時痛が88%軽減したという報告があります。 内側上顆炎でも同様のアプローチが応用されており、日帰り治療で実施可能な点も注目です。
関連)https://iuhw.repo.nii.ac.jp/record/2000206/files/32206AS530.pdf
手術療法は、それでも改善しない難治例の最終手段です。 内側上顆の屈筋・回内筋群起始部を部分的に切除し、変性・瘢痕化した組織を除去して修復します。多くの場合、術後のリハビリで良好な成績が得られます。
難治例を見極めるポイント。
尺骨神経障害の合併は意外と見逃されやすいです。
参考:異常新生血管(モヤモヤ血管)と慢性腱症の関係、カテーテル治療(動注治療)の概要が詳しく掲載されています。
上腕骨内側上顆炎・ゴルフ肘 | 岡崎静脈瘤・痛みのクリニック
医療従事者が患者に治療を提供しながら、自分自身も同じ疾患に罹患するというパラドックスがあります。外科医・歯科医・理学療法士・作業療法士などは、前腕屈筋群の反復使用が職業上不可避であり、再発リスクが常に存在します。
再発予防で最も重要なのはフォームと環境の修正です。
エルボーバンドの活用も効果的です。ただしバンドは処置・運動中のみ装着し、休憩時・就寝時は外すことが原則です。 長時間の装着で血流が悪化し、逆効果になります。
関連)https://tokyo-jointclinic.jp/tsunashima/treatment/elbow/golf-elbow/
また、ウォーミングアップを怠らないことも再発防止の重要な習慣です。冷えた状態で器具を力強く把持する動作は、内側上顆への集中荷重を一気に高めます。手術開始前の前腕ストレッチ1〜2分は、わずかな手間で大きなリスク回避につながります。
参考:上腕骨内側上顆炎の治療法・保存療法・リハビリについての詳細な医学情報(MSDマニュアル)
上腕骨内側上顆炎 - MSDマニュアル家庭版
参考:ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の痛みの原因・治療・リハビリを専門家が詳解しています。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の痛みの原因と治療方法・リハビリについて解説 | リハビリテーションコンサルタント
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