水疱瘡(=水痘)はVZVによる全身性発疹性疾患で、急性期は掻痒が強く、掻破がびらん化→二次感染の入口になりやすいのが臨床上の困りごとです。だから外用の位置づけは「見た目をきれいにする」よりも、皮疹の管理(湿潤を抑える、掻破を減らす、清潔操作を保つ)にあります。
国立感染症研究所(感染症情報)の水痘詳細では、通常の外用として「石炭酸亜鉛化リニメント(カルボルチンクリニメント;カチリ)など」が行われると明記されています。つまりカチリは、水痘診療の“伝統的で標準的な”対症療法の選択肢に含まれます。特に「かゆみが強い」「ジュクつきやすい」「掻いてしまう」症例で、外用の介入余地が大きいです。
参考)301 Moved Permanently
では、カチリの「効果」は何か。医療用医薬品情報(KEGG)では、フェノール(2%)の防腐・消毒・鎮痒作用と、酸化亜鉛の収れん作用に加えて、塗擦後に水分が蒸発してトラガントの薄膜が残り皮膚を保護する、と整理されています。ここが医療者向けに最も誤解なく説明できる“効果の中身”です。ウイルス複製を抑える抗ウイルス薬とは別物で、皮膚局所の症状緩和と皮膚バリアの補助が主戦場になります。
参考)医療用医薬品 : カチリ (カチリ「ヨシダ」)
臨床現場での説明文言は、患者側の納得感に直結します。例えば「カチリ=水疱瘡に効く」という表現だけだと、“病気を治す薬”と誤解されやすいので、次のように言い換えると安全です。
この3点が言えれば、“効果”の定義が対症療法として揺れません。
また意外と見落とされがちなのが、カチリの「薄膜形成」という説明です。水痘は紅斑→丘疹→水疱→痂皮化と時間で姿を変え、同一患者でもステージが混在します。その混在皮疹に対して「保護膜を作りつつ乾燥させる」設計は、掻破のトリガー(湿潤・刺激)を減らす上で理にかなっています。
外用が対症療法であるほど、使い方が効果を左右します。水痘の外用では「塗り広げる」より「病変に乗せる」感覚のほうが、摩擦や水疱の破綻を起こしにくく、二次感染リスクの面で合理的です。実際に小児科クリニックの解説でも、カチリは塗り伸ばすのではなく発疹・水疱に“乗せるように”塗り、清潔な指で水疱をつぶさないのがコツ、と具体的に書かれています。
医療者向けに実務へ落とすなら、患者指導は次の要点が使いやすいです(入れ子にせず、現場でそのまま渡せる形にします)。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/914b8a4e5ce033e2da4dbfcd7debc6c54652774b
参考)水ぼうそう(水疱瘡、水痘)
注意点として、カチリは“誰にでも安全にたっぷり”ではありません。フェノールを含むため、刺激感などの皮膚症状が出ることがあり得ますし、びらんが強い局面では刺激が問題化しやすいことがあります(このあたりは施設のルールや医師判断に従うのが現実的です)。患者が「しみる」「赤くなる」「痛い」と訴えるときは、外用量・塗布部位・頻度の見直し、別剤への切替、二次感染評価の優先順位を上げるのが安全です。
水疱瘡の“病勢そのもの”を変え得るのは、原則として抗ウイルス薬側です。国立感染症研究所(感染症情報)では、重症水痘や免疫不全者など重症化が予測される場合にはアシクロビルが第一選択で、免疫正常者でも経口投与が症状を軽症化させるのに有効と考えられている、と整理されています。ここで重要なのは「外用でやり切る」のではなく、重症化リスク・年齢・発症からの時間で治療設計が変わる点です。
さらに同ページでは、免疫正常者に対する経口アシクロビルは「発症48時間以内に50~80mg/kg/日を4~5日間」が適当とされる一方、全例にルーチン投与する必要はない、とバランスの取れた記載になっています。つまり、医療者としては「カチリで様子見」か「抗ウイルス薬も併用」かを二者択一で語るのではなく、時間軸とリスクで層別化して説明するのが筋です。
患者・家族が誤解しやすいポイントは、「カチリを塗っているのに新しい発疹が出る=効いていない?」という不安です。水痘は数日にわたり新しい発疹が次々と出現し、紅斑・丘疹・水疱・痂皮が混在するのが特徴なので、外用をしていても新規発疹が出ること自体は病態として珍しくありません。ここを先に説明しておくと、受診・再受診の判断が“症状の質”に向き、無駄な不安が減ります。
また、二次感染が起きた場合は外用のレイヤーが変わります。国立感染症研究所(感染症情報)では、二次感染を起こした場合には抗生物質の外用や全身投与が行われる、と明記されています。カチリを継続するかどうかは病変の湿潤・びらんの程度にもよるため、現場では「膿・悪臭・急な疼痛増強・発赤拡大」があれば、まず二次感染評価へ舵を切るのが実務的です。
水痘は空気感染・飛沫感染・接触感染で広がり、潜伏期間は2週間程度(10~21日)とされています。特に家庭内では感染が一気に広がりやすく、家庭内接触での発症率は90%と報告されているため、外用の説明だけでなく生活指導が重要です。厚生労働省の解説にも、家庭内での感染を防ぐために「水疱に触れた後の確実な手洗い」や「タオル共用を避ける」といった基本策が明記されています。
登園・登校の考え方は、医療者側がズバッと線を引いて説明するほどトラブルが減ります。国立感染症研究所(感染症情報)では学校保健安全法上「すべての発しんが痂皮化するまで出席停止」とされている、と記載されています(ただし医師が感染のおそれがないと認めた場合は例外あり)。この「痂皮化」というワードは、保護者説明で最も再現性が高い指標です。
ここでカチリの立ち位置が、実はコミュニケーションの武器になります。カチリを塗ることで皮疹が乾燥しやすくなり、痂皮化が進む見た目の変化が出やすいので、家族が「治ってきている」ことを視覚的に理解しやすい側面があります(もちろん、治癒の本体は免疫応答と自然経過であり、カチリは補助です)。説明の際は「感染性がなくなるサイン=全部かさぶた」を軸に、日々の観察ポイントとして共有すると、家庭の不安と受診負荷を同時に下げられます。
参考:水痘の原因・潜伏期間・感染経路、ワクチンと家庭内対策(手洗い・タオル共用回避)、緊急接種72時間以内の考え方
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansensenshou/chickenpox.html
参考:水痘で「カチリなどの外用」が通常行われる位置づけ、感染性の期間、出席停止(痂皮化まで)、抗ウイルス薬の考え方(重症化リスク・投与タイミング)
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水痘の外用は「白い塗り薬だから同じ」と誤解されがちで、処方・調剤の現場では取り違えがヒヤリハットになり得ます。実務で典型なのは、亜鉛華単軟膏(酸化亜鉛10%など)と、フェノール・亜鉛華リニメント(カチリ)を同一視してしまうケースです。薬剤師向けの事例解説では、医師が「カチリを処方したつもりだった」とし、カチリは亜鉛華単軟膏とは性状が全く異なる、と説明して処方変更に至った例が紹介されています。
この「外用の取り違え」は検索上位の一般向け記事ではあまり前面に出ませんが、医療従事者向けブログなら価値が高いポイントです。理由は、患者アウトカムというより“医療安全と業務効率”に直結するからです。カチリはフェノール由来の鎮痒・防腐の要素と、塗布後の薄膜形成(トラガント)が特徴で、同じ白色でも基剤・使用感・乾燥のさせ方が違い、患者指導も変わります。
参考)水痘患者への亜鉛華単軟膏の処方を疑義照会|リクナビ薬剤師
現場での再発防止策としては、次の運用が効きます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/54acb93bdf55ba0242cb855be8fd6fc07a0edf5e
カチリの“効果”を患者に伝えるだけでなく、医療者間で「何を処方し、何を期待し、何をモニターするか」を言語化することが、結果として水痘診療の質を上げます。外用が対症療法であるほど、こうした足場固めが効いてきます。