医療現場でまず押さえるべきは、「ツムラ」「クラシエ」はメーカー名であり、処方名(例:葛根湯、小青竜湯など)そのものと同義ではない点です。実務では「同じ処方名でもメーカーが違えば中身が完全一致とは限らない」ため、先入観で“同じ薬”として扱わない姿勢が安全側です。
ツムラの医療用漢方は、製品番号(TJ-〇〇)で体系化され、用法用量・禁忌・相互作用・副作用(重大な副作用を含む)が電子添文前提で整理されています。たとえば、ツムラの医療用漢方製剤一覧には、用量(多くは成人1日7.5gを2〜3回分割だが、9.0gや10.5g、15.0g、18.0gの例外がある)が明記され、さらに「間質性肺炎」「偽アルドステロン症」「ミオパチー」「腸間膜静脈硬化症」などの注意喚起が一覧化されています。これは医療用として、モニタリングや中止判断を含む運用が求められることを意味します。
一方、クラシエも医療用漢方を持ちますが、一般用(OTC)のラインナップも強く、患者側の“店頭での選択”に入り込みやすいのが特徴です。医療従事者の立場では、外来・薬局で「市販のクラシエを飲んでいます」「以前ツムラで出た処方と同じですか?」という相談が起きたときに、医療用と一般用の設計差、そして同名処方でも生薬量が同一とは限らない点を、短時間で説明できる準備が重要になります。
検索上位で繰り返し語られる“違いの核心”は、同じ処方名でも「配合生薬の種類・量・比率」がメーカーで異なる場合があることです。これは「漢方=処方名が同じなら同一」という誤解をほどく最重要ポイントで、医療者側の説明責任にも直結します。
具体例として葛根湯がわかりやすいです。ある解説では、ツムラ葛根湯エキス顆粒とクラシエ葛根湯エキス顆粒で、カッコン(葛根)やマオウ(麻黄)などの生薬g数が異なることが、数値で提示されています。ツムラではカッコン4.0g、マオウ3.0g等とされる一方、クラシエではカッコン8.0g、マオウ4.0g等と示され、同じ“葛根湯”でも生薬量が倍近い項目がある、という情報です。もちろん、ここで注意したいのは「量が多い=必ず良い/効く」という短絡に流れないことです。漢方は患者の体質・病態・季節などを踏まえて使われ、濃度が高いほど良いわけではなく、効きすぎによる副作用懸念も出ます。
この“同名処方のゆらぎ”が、患者の体感(味、香り、服用後の熱感、汗の出方、眠気など)や継続性に影響することは、現場感としても理解しやすいはずです。服薬指導では「同じ葛根湯でもメーカーが変わると、飲み心地や体感が変わる可能性がある」ことを先に伝えるだけで、変更後の不信感や自己中断を減らせます。
メーカー差が臨床で“効く”のは、実は成分だけではなく剤型・粒度・溶け方といった服用体験です。ある薬局系の解説では、ツムラは顆粒(荒い粒状)が特徴、クラシエは粉薬(細かい粒状)が特徴として整理されています。粒が粗い・細かいという差は、口腔内の残りやすさ、水への分散性、嚥下のしやすさに関係し、アドヒアランスに地味に効きます。
医療従事者としては、ここを“好みの問題”で終わらせず、具体的な指導に落とすのが有用です。たとえば以下のような説明は、患者の行動を変えやすいです。
・🫗「口に含んでから水」より「少量の水に溶いてから一気に」へ切り替える
・🥄スプーンで練ってオブラート・ゼリーを併用する(嚥下が苦手な高齢者や小児)
・⏰食前/食間などのタイミングを、生活パターンに合わせて再設計する(継続できることが最優先)
また、味や香りの違いは「飲めない理由」になりやすく、医療者が軽視すると中断の温床になります。メーカー変更が避けられない状況(在庫、採用品目、後発相当の切替など)では、「味が変わるかもしれない」「ただし処方としての狙いは同じ」という“事前の予告”が、結果的に安全性にもつながります。なぜなら、患者が違和感を感じたときに、勝手に中止せず相談してくれる確率が上がるからです。
品質の話は抽象的になりがちですが、医療者向けには「何を根拠に同等性を語るか」が重要です。一般論として、同じ名前の漢方薬でもメーカーで生薬成分や成分量が異なりうる背景に、日本薬局方や一般用漢方製剤の承認基準では製法が単一に固定されていない、という説明がされています。つまり“同名=完全一致”が制度上も必ずしも保証されない、という捉え方が現実的です。
クラシエについては、一部の生薬で日本薬局方基準に加えて独自規格を設定し、品質確保や保存にも注意を払っていること、さらに海外に生産拠点(青島華鐘製薬有限公司)を設立し日本の製造と同様の基準に基づいた生産を行っている、という記載があります。ここは、患者から「海外製造って大丈夫?」と聞かれたときの説明材料になります。重要なのは、国名で判断するのではなく、規格・試験・管理基準といった“中身の管理”で評価する姿勢です。
ツムラの医療用については、製品一覧に「警告」「禁忌」「相互作用」「重大な副作用」などが具体的に整理されている点が、情報提供の強みです。特に漢方で見落とされがちな有害事象として、甘草(カンゾウ)由来の偽アルドステロン症・低カリウム血症、麻黄(マオウ)含有製剤と交感神経刺激薬等の併用注意、そして間質性肺炎などが挙げられ、医療用としての安全管理が前提に置かれています。メーカー差を語るなら、こうした安全情報へのアクセス性(電子添文の参照のしやすさ)も、実務上は“差”になりえます。
検索上位は「成分量」「剤型」「ラインナップ」で止まりがちですが、医療従事者の現場では“切替時の事故をどう防ぐか”が、実は一段重要です。独自視点として、メーカー変更を「処方名が同じなら問題ない」と扱った瞬間に起こり得るリスクを、あらかじめ設計しておくのが実務的です。
ポイントは3つあります。
・📝薬歴・問診で「メーカー」まで確認する
患者が「葛根湯」としか言わないとき、一般用(OTC)か医療用か、メーカーはどこか、剤型は何かで中身が変わり得ます。特にOTC併用は“自己判断の継続”になりやすく、医療用へ上乗せされると、麻黄や甘草の重複で副作用リスクが上がります。
・⚠️「違和感が出たときの行動」を先に決める
メーカー変更後に「効かない」「動悸がする」「むくむ」「咳が出る」などが起きたとき、患者が自己中止・市販薬追加に走ると情報が途切れます。そこで、息切れや咳嗽・発熱など間質性肺炎が疑われる症状が出たら中止して速やかに連絡、というように、電子添文で求められる行動を患者の言葉に翻訳して渡すのが安全です(医療用の注意喚起として整理されています)。
・🔁「同等」ではなく「同目的」を説明する
同名処方でも微妙に設計が違う可能性がある以上、「全く同じです」と断言するより、「狙いは同じ、ただし飲み心地や体感は変わることがある」と説明した方が、クレーム予防にも臨床的にも有利です。結果として、服薬継続や副作用の早期発見につながります。
なお、ここで役立つ“意外な補助線”が、ツムラ医療用一覧にある「用量が例外的に9.0g/日、10.5g/日、15.0g/日、18.0g/日となる処方が明記されている点です。患者が「前より量が増えた/減った」と感じたとき、単なる気のせいではなく、処方ごとの規格差・用量差が背景にある場合もあるため、数字で落ち着いて説明できます。
(ツムラ医療用の用量・警告・禁忌・相互作用・重大な副作用の整理は、医療従事者が“変更時の安全管理”を設計する材料になります)
ツムラ医療用漢方(用量・警告・禁忌・相互作用・重大な副作用の一覧)
https://medical.tsumura.co.jp/sites/default/files/resources/pdf/products/index/484.pdf
葛根湯での生薬量比較(ツムラ/クラシエ/コタロー例、剤型差の説明材料)
https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/zcbgs