関節液検査の算定要件と関節穿刺の正しい選び方

関節液検査の算定は令和4年度改定で新設されたばかり。関節穿刺(処置・検査)との選択ルール、細菌顕微鏡検査との併算定禁止など、知らないと査定を受ける落とし穴を整理しました。正しく算定できていますか?

関節液検査の算定と関節穿刺の正しい選び方

処置の関節穿刺(120点)で算定すると、外来管理加算(52点)がまるごと消えます。


この記事のポイント
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関節液検査は令和4年度改定で新設

偏光顕微鏡を用いた関節液検査(50点)は2022年4月に新設。「結晶性関節炎が疑われる」「関節水腫がある」の2条件を満たす場合のみ算定可能です。

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関節穿刺・関節腔内注射は同日同関節で1項目のみ

処置の関節穿刺(120点)・検査の関節穿刺(100点)・関節腔内注射(80点)の3つは、同一日・同一関節なら主たる1項目しか算定できません。

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細菌顕微鏡検査(D017)との併算定は禁止

関節液検査とD017排泄物・滲出物の細菌顕微鏡検査を同時に行った場合、主たるもののみの算定です。両方をそのまま請求すると査定リスクがあります。


関節液検査の算定が新設された背景と50点の意味


関節液検査(D009-2)は、令和4年(2022年)4月の診療報酬改定で新たに収載されました。それ以前は、関節液を採取して結晶を調べても、検査実施料として明確に算定できる項目がなかったのです。意外ですね。


新設の背景には、痛風や偽痛風ピロリン酸カルシウム結晶沈着症)の確定診断における偏光顕微鏡の重要性があります。痛風では針状の尿酸ナトリウム(MSU)結晶が、偽痛風では菱形~桿状のピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶が関節液中に検出されます。この結晶の確認こそが確定診断のゴールドスタンダードとされており、保険点数として評価されたのは臨床上の必然でした。


所定点数は50点で、1点10円換算で500円の算定です。少額に見えますが、これは検体検査実施料のみの話であり、別途「尿・糞便等検査判断料(月1回34点)」が加算されます。つまり、実際に算定される合計点数は50点+34点=84点、金額では840円相当になります。見た目より大きい、ということですね。


検体検査判断料は月1回算定できる点も押さえておきましょう。同月内に他の尿・糞便等検査(尿一般検査など)を実施していれば、判断料はいずれか一方のみで重複算定となりますが、すでにその月に判断料を算定済みであれば追加は不要です。つまり計算上は、同月に尿検査なども行っているクリニックでは、関節液検査50点のみが追加算定の対象になるケースが多いといえます。


厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要」(関節液検査新設の根拠)


関節液検査の算定要件を正確に把握する

関節液検査の算定要件は、点数表の通知に明確に規定されています。条件が2つあり、どちらも満たす必要があります。


1つ目は「関節水腫を有する患者であること」です。関節水腫とは、関節腔内に過剰な滑液(水)が貯留した状態を指します。膝関節でよく見られ、パトパトと波動を触れる状態です。レセプト上は「関節水腫」「膝関節水腫」などの病名が必要であり、これがなければ算定の根拠を欠くことになります。病名が原則です。


2つ目は「結晶性関節炎が疑われる患者であること」です。急性単関節炎の所見があり、痛風や偽痛風を疑う臨床的根拠がある場合に限られます。「関節水腫がある」というだけでは不十分で、「結晶性関節炎の疑い」を示す病名または診療録への記載が必要です。


さらに見落とされやすいのが「一連につき1回に限り算定する」という制限です。この「一連」の解釈については注意が必要で、同一関節への複数回の穿刺を同一日に行った場合は1回の算定です。ただし「一連の疾患経過」という意味でも実質的には複数回の算定は困難であるため、繰り返し請求しようとすると査定の対象になりやすい点に注意すれば大丈夫です。


項目 内容
区分番号 D009の2(検体検査実施料)
点数 50点
検査判断料 尿・糞便等検査判断料(34点/月1回)
算定要件① 関節水腫を有する患者
算定要件② 結晶性関節炎が疑われる者
算定制限 一連につき1回に限り
併算定禁止 D017細菌顕微鏡検査と同時は主たるもののみ


シスメックス「プライマリケア関節液検査」(算定要件の詳細と通知文)


関節液検査の算定で関節穿刺(処置・検査)とどちらを選ぶべきか

ここが現場で最も混乱しやすいポイントです。整形外科やリウマチ科では、関節に針を刺す行為が日常的に行われますが、その「目的」によって算定区分が大きく変わります。


点数表上、関節への穿刺行為には主に3つの区分が存在します。


  • 関節腔内注射(G010):注射の項目、80点。薬剤を関節内に注入する目的。
  • 関節穿刺(処置 J116):処置の項目、120点。関節液を抜去して腫脹・疼痛を軽減する目的。
  • 関節穿刺(検査 D009):検査の項目、100点。関節液を採取して検査提出する目的。


これら3つは、同一日・同一関節に行った場合、いずれか1項目のみの算定が原則です。針を1回刺すという行為自体は同じであり、目的によって区分が決まるルール、ということですね。


では「水を抜いて(処置)かつ検査に出した(検査)場合はどうなるか?」という疑問が生じます。この場合は、主たる目的・主たる行為に基づいて、どちらか点数の高い方で算定します。水を大量に抜く治療目的が主であれば処置の関節穿刺(120点)を選ぶのが一般的です。一方、診断目的で少量を採取して結晶検査に提出する場合は検査の関節穿刺(100点)を選びます。


注意が必要なのは「処置の関節穿刺(120点)を選ぶと外来管理加算が算定できなくなる」点です。外来管理加算は52点ですが、処置を行った場合は算定不可です。つまり、120点の処置を選んでも、52点の外来管理加算を失うことになります。実際のケースによっては、検査の関節穿刺(100点)で算定した方がトータルの点数が高くなるケースもあります。これは使えそうです。


佐々木グループ「それって採取?それとも処置?〜具体事例をもとに解説」(算定区分の考え方)


関節液検査と細菌顕微鏡検査(D017)の併算定禁止ルール

関節液検査の通知に、もう1つ重要な制限があります。「当該検査とD017排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する」というルールです。


D017細菌顕微鏡検査は、グラム染色などを行って細菌の有無を迅速に確認する検査です。関節液中に細菌がいるかどうかを調べる化膿性関節炎の鑑別目的で実施されることがあります。この検査と関節液検査(結晶の確認)を同時に実施した場合、高い方の点数のみ算定するのが原則です。


D017の点数は67点(ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌等の各種細菌)で、関節液検査の50点より高い場合があります。実施料のみで比べると、D017(67点)>関節液検査(50点)となる区分もあるため、主たるものとして高い方を算定することが求められます。両方算定した場合、査定対象になる点は要注意です。


現場ではしばしば、結晶性関節炎の疑いと化膿性関節炎の鑑別目的で両方の検査を同時に依頼することがあります。臨床的には理にかなった判断ですが、保険請求上は「主たるもののみ」のルールが適用されます。実際にどちらが「主たる検査か」は医師の判断や診療録の記載に基づきますが、レセプトへの記載と整合性をとることが重要です。査定リスクがある場面として覚えておけば、実務上のミスを防げます。


ファルコバイオシステムズ「関節液一般検査(細胞数・細胞分類・結晶成分)」(通知文・算定要件の参照)


関節液検査の算定でよくある誤請求パターンと実務対策

現場の実態として、関節液検査の誤算定はいくつかのパターンに集約されます。新設から間もない項目であるため、算定自体を知らないケースや、逆に要件を確認せず算定してしまうケースが見受けられます。


誤算定パターン①:病名の不備


「関節穿刺を行ったから算定できる」と考えて請求したものの、レセプト上に「関節水腫」や「結晶性関節炎の疑い」が病名として挙がっていない場合、算定根拠を欠くとして返戻・査定になるリスクがあります。関節炎の病名があっても、「結晶性」という要素が含まれていなければ要件を満たしません。病名の整備が条件です。


誤算定パターン②:処置の関節穿刺と関節液検査を両方算定


関節液を抜いて(処置)、その液を外注に出した(検査)場合、処置の関節穿刺(J116:120点)と関節液検査(50点)の両方を算定してしまうケースがあります。しかし関節液検査は検体検査実施料であり、採取のための手技料は別に定められています。「採取料(関節穿刺・検査目的:100点)+関節液検査(50点)+判断料(34点)」という組み合わせが正しい算定です。処置目的の関節穿刺と組み合わせる場合は、算定区分の選択を再確認する必要があります。


誤算定パターン③:一連の疾患で複数回算定


「先月も今月も穿刺してその都度外注に出した」という場合、各月に算定しようとするケースがあります。ただし「一連につき1回」という制限の解釈によっては、同一疾患の一連経過中に複数回算定することが認められないケースも生じます。厚生局への確認や算定コメントの記載を推奨します。


レセプト点検時には、以下の確認フローを活用すると実務の精度が上がります。


  • 🔎 病名に「関節水腫」が含まれているか
  • 🔎 病名に「結晶性関節炎の疑い」「痛風」「偽痛風」など結晶性の根拠があるか
  • 🔎 同月内で複数回の算定がないか
  • 🔎 D017細菌顕微鏡検査と同日同時算定になっていないか(主たるもののみか)
  • 🔎 関節穿刺(処置)と関節液検査の両方が同一関節・同一日に算定されていないか


「診療報酬点数早見表」(医学通信社)や「今日の診療」「保険診療の手引き」(東京都医師会)は、こうした算定ルールの根拠確認に便利です。不明点が残る場合は、所在地管轄の地方厚生局に問い合わせるのが最も確実です。この一手間が査定リスクを下げる近道、ということですね。


東京都医師会「保険診療の基礎知識 検体検査」(算定制限・判断料の解説)




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