抗SS-A抗体が陰性でも、シェーグレン症候群の診断が成立することがあります。
抗SS-A抗体の名称の「SS」は、シェーグレン症候群(Sjögren's Syndrome)に由来します。 一次性シェーグレン症候群では約80%の患者に検出され、口腔乾燥(ドライマウス)や眼球乾燥(ドライアイ)といった外分泌腺の機能低下を特徴とする自己免疫疾患です。 crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/160.html)
ただし、注意が必要な点があります。シェーグレン症候群の診断基準(旧厚生省1999年改訂)において、抗SS-A抗体陽性かつ抗SS-B抗体陽性の感度は83.7%、特異度は91.5%と報告されていますが、 これは逆に言えば約16%の患者は抗体が陰性のまま診断されうることを意味します。抗核抗体が陰性でも抗SS-A抗体は検出されうるため、抗核抗体のスクリーニングだけでは見落とすリスクがあります。 crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/194.html)
抗SS-A抗体の対応抗原は主に細胞質に存在するため、抗核抗体(ANA)検査が陰性であっても別途測定が必要なケースがあります。これは見落とし防止のための重要な知識です。
参考:シェーグレン症候群の診断基準と難病指定情報(難病情報センター)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/267
抗SS-A抗体の疾患特異性は高くありません。これが原則です。 data.medience.co(https://data.medience.co.jp/guide/guide-06050021.html)
膠原病疾患における陽性率を疾患別に整理すると、シェーグレン症候群(SS)が60〜70%と最も高く、次いでMCTDが29%、SLEが32%、強皮症が21%、炎症性筋疾患が19%、関節リウマチが15%という数字が報告されています。 関節リウマチ(RA)を例にとると、二次性シェーグレン症候群はRAの30%以上に合併すると知られており、RA管理中に抗SS-A抗体陽性が判明した場合は、シェーグレン症候群の合併を常に念頭に置く必要があります。 yodosha.co(https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758123617/37.html)
また、SLEでは抗SS-A抗体が皮膚症状(亜急性皮膚エリテマトーデス:SCLE)と深く関連するため、皮疹の性質からSLEサブタイプの推定にも役立ちます。つまり陽性=シェーグレン症候群、という固定観念は危険です。
抗SS-A抗体が陽性だった場合は、他の膠原病スクリーニング(抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗Scl-70抗体など)を組み合わせて鑑別診断を進めることが推奨されます。 crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/194.html)
参考:抗SS-A抗体と抗SS-B抗体の使い分け(CRCグループ 検査Q&A)
https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/160.html
あまり知られていませんが、抗SS-A抗体は母体から胎児へ胎盤を経由して移行します。 その結果、胎児・新生児に先天性完全房室ブロック(CHB)や新生児ループスを引き起こすことがあります。これは重篤な合併症です。 test-directory.srl(https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/065450200)
先天性完全房室ブロックは、新生児期にはすでに不可逆的な変化が進行していることが多く、胎児期からの管理が不可欠とされています。 胎児心エコーによる経時的な心機能評価が推奨され、抗SS-A抗体陽性妊婦を担当する際は産科・小児循環器科との連携が欠かせません。先天性房室ブロックの発症率は、抗SS-A抗体陽性母体で約1〜3%と報告されており、一見低い数字に見えますが、抗SS-A抗体陽性妊婦の数を考えると、現場で遭遇する可能性は無視できません。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-16K10114/16K10114seika.pdf)
妊娠管理の実務では、国立成育医療研究センターが公開している「抗SS-A抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き」が標準的なリファレンスとして活用されています。 ncchd.go(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/699ba3ce063e73aa36e1461f8196a7bada02fca6.pdf)
参考:抗SS-A抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き(国立成育医療研究センター)
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/699ba3ce063e73aa36e1461f8196a7bada02fca6.pdf
抗SS-A抗体は、一般的に膠原病のマーカーとして知られていますが、それ以外の疾患でも陽性になることがあります。意外ですね。 yodosha.co(https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758123617/37.html)
原発性胆汁性胆管炎(PBC)や間質性肺炎、さらには未分類膠原病疾患においても抗SS-A抗体の陽性が認められます。 PBCは肝臓の胆管が慢性炎症によって破壊される疾患で、AMA(抗ミトコンドリア抗体)が主な診断マーカーとして知られていますが、自己免疫機序を共有するため抗SS-A抗体との重複が見られることがあります。間質性肺炎においても、膠原病関連間質性肺炎(CTD-ILD)の一部が抗SS-A抗体陽性を示す点は、呼吸器内科でも把握すべき情報です。 yodosha.co(https://www.yodosha.co.jp/webg/series/book/9784758123617/9784758123617_37.html)
疾患横断的に抗SS-A抗体が陽性となるケースを知っておくことで、「膠原病内科への紹介が必要かどうか」の判断がより精度高くなります。各科の主治医が抗SS-A抗体の意義を正確に理解していることが、患者利益に直結します。
「抗核抗体が陰性だから、抗SS-A抗体は測定しなくていい」という運用は誤りです。 crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/160.html)
抗SS-A抗体の対応抗原であるRoタンパクは主に細胞質に存在し、通常のHEp-2細胞を用いた蛍光抗核抗体(FANA)検査では検出感度が低くなる特性があります。つまり、FANA陰性であっても、抗SS-A抗体専用のCLEIA法やEIA法での測定を別途行わない限り、見落としが生じる可能性があります。 これは検査オーダーの設計段階で意識すべき構造的な問題です。 test-directory.srl(https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/065450200)
実際の臨床では、乾燥症状や光線過敏症を訴える患者でANA陰性の場合、「自己免疫疾患は否定的」と判断してしまうケースが散見されます。しかし抗SS-A抗体単独陽性の症例は存在し、その場合はANA陰性シェーグレン症候群やSLEとして扱う必要があります。見落とさないことが基本です。
スクリーニング効率を上げるためには、①乾燥症状 ②光線過敏症 ③原因不明の関節痛 ④繰り返す流産歴——これらを訴える患者には、ANA結果にかかわらず抗SS-A抗体の測定を検討する運用フローの整備が推奨されます。 yodosha.co(https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758123617/37.html)
参考:SRL総合検査案内 抗SS-A/Ro抗体(CLEIA法の臨床意義)
https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/065450200
参考:羊土社 「この患者さんリウマチ・膠原病かも?」抗SS-A抗体陽性の解釈
https://www.yodosha.co.jp/webg/series/book/9784758123617/9784758123617_37.html