新型コロナウイルス感染症の5類移行後も、公立病院では継続的な感染症対策が求められています。感染力が強く根治薬がない状況に変化はなく、公立病院の責務として「ゼロコロナ」政策を継続する必要があります。
この状況下で、公立病院では以下のような診療制限が実施されています。
民間病院のコロナ対応撤退により、公立病院への負荷が増加する傾向にあります。これにより「民間病院のコロナ対応撤退」→「公立病院のコロナ負荷増」→「一般医療の制限」という悪循環が懸念されています。
感染症法に基づく届出義務も重要な要素です。一類から四類感染症の患者を診断した際には、直ちに管轄保健所への届出が必要です。この過程で適切な症状評価と治療薬選択が求められます。
特定機能病院である国公立大学附属病院では、医薬品安全使用の妥当性評価が体系化されています。禁忌・適応外使用に該当する医薬品のリスクとベネフィット評価が重要な要素となっています。
ハイリスクな禁忌・適応外使用の妥当性評価において、34病院が以下の基準を設定しています。
これらの基準により、症状に応じた適切な治療薬選択が可能となっています。委員会での審査内容には、薬剤選択理由、代替治療に対する優位性、予想される有害事象とモニタリング方法が含まれます。
注射抗がん薬の禁忌・適応外使用については、レジメン審査委員会と禁忌・適応外委員会の両委員会で審査が行われており、32病院でこの体制が確立されています。各委員会の検討内容は以下の通りです。
公立豊岡病院の事例では、薬剤師による訪問薬剤管理指導が症状緩和に大きな効果を示しています。2011年4月から2016年3月までの5年間で、65例の在宅指導を実施し、がんによる症状緩和の依頼が43例(66.1%)と最も多い結果となりました。
薬学的介入の内訳は以下の通りです。
処方提案の429例のうち340例(79.3%)が実際の処方に反映され、薬剤師の介入により身体症状が改善した症例は32例(49.2%)に達しました。
この取り組みの特徴は、病院内の専門医やチームとの連携にあります。院内チームとのスムーズな連携により、迅速かつ詳細な薬学的アセスメントが可能となり、患者のQOL改善に寄与しています。
終末期がん患者の在宅療養支援が最も多いケースとなっており、公立病院の薬剤師が地域医療における症状緩和ケアの中核的役割を担っていることがわかります。
膠原病診療における治療薬の進歩は目覚ましく、公立病院でも最新の治療選択肢が提供されています。関節リウマチ治療では、従来の限られた治療選択肢から大きく発展し、「生物学的製剤」「JAK阻害薬」と呼ばれる新薬の普及により劇的な改善が得られる患者が増加しています。
膠原病診療の特徴的な側面。
新規治療薬の導入により、患者同士が治療情報を共有する場面も見られるようになりました。「私も○○さんと同じ注射の薬(生物学的製剤)を使いたい」というリクエストが患者から出されることもあり、治療効果の高さが患者間での評判となっています。
免疫学の進歩とともに、膠原病疾患の診断・治療は継続的な向上を続けており、知見に基づく新薬の登場によりガイドラインも頻繁に改訂されています。公立病院では、これらの最新治療薬への適切なアクセスを提供する責任があります。
公立病院の特徴的な取り組みとして、多職種連携による包括的な症状管理システムがあります。これは民間病院とは異なる公立病院特有のアプローチといえます。
院内感染対策における多職種連携の実例。
この連携システムにより、症状の早期発見から適切な治療薬選択、効果判定まで一貫した管理が可能となっています。特に感染症症状については、迅速な対応が患者予後に直結するため、チーム医療の効果が顕著に現れます。
公立病院では、地域医療の最後の砦としての役割も担っており、重症例や複雑な症状を呈する患者の受け入れが多い傾向にあります。このような患者に対しては、標準的な治療プロトコールだけでなく、個別化された症状管理と治療薬選択が必要となります。
また、公立病院特有の教育機能も重要な要素です。医学生や薬学生の実習受け入れを通じて、次世代の医療従事者に対する症状管理と治療薬選択の教育を行っています。この教育過程で、最新のエビデンスに基づく治療法が継続的に更新され、医療の質向上に寄与しています。
公立病院における症状管理と治療薬選択は、単なる医学的判断を超えて、社会的責任、教育的役割、地域医療の継続性確保という多面的な要素を含んでいます。これらの要素を統合した独自のアプローチが、公立病院の特徴的な医療提供体制を形成しています。
参考リンク:院内感染対策マニュアル作成のための手引きについて
厚生労働省 院内感染対策マニュアル