メタノールエタノール違いと中毒症状治療

メタノールとエタノールの違いを、代謝・中毒・検査・治療の観点から医療従事者向けに整理します。現場で「アルコール」と一括りにされがちな場面で、どこを見て判断すべきでしょうか?

メタノールとエタノール違い

メタノールとエタノール違い:臨床で迷わない要点
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毒性の本体は「代謝産物」

メタノールはギ酸が蓄積して代謝性アシドーシス・視機能障害へ、エタノールは主に中枢抑制と低血糖などが前面に出ます。

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潜伏期があるのがメタノール

メタノールでは無症状期の後に急変し得るため、「飲んだ直後に軽い=安全」と判断しないのが重要です。

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治療はADH阻害+透析+補助療法

エタノール投与やホメピゾールで代謝を止め、必要なら血液透析でメタノール/ギ酸を除去し、重炭酸でアシドーシスを補正します。

メタノールエタノール違い:代謝とギ酸の機序


医療現場で「メタノールが危ない」と言うときの本体は、親化合物そのものというより“代謝産物”である点です。メタノールは肝臓などでアルコール脱水素酵素(ADH)によりホルムアルデヒドへ、さらにギ酸へと酸化され、ギ酸が毒性の中心になります。
ギ酸はアニオンギャップ型の代謝性アシドーシスの主要因となり、視神経障害・失明に結びつくことがあるとされています。


参考)http://biomed.papers.upol.cz/doi/10.5507/bp.2015.023.pdf

一方で、ギ酸は葉酸依存性反応で二酸化炭素へ解毒されますが、この解毒速度よりも産生が上回ると蓄積しやすくなります。


参考)302 Found

さらに押さえておきたいのが、エタノールが“同時に存在すると”メタノールの代謝を遅らせ得る点です。エタノールとメタノールのADHに対する親和性は約20:1でエタノール側が高い、とされ、エタノールがADHを占有するとメタノールが代謝経路に入りにくくなります。

この性質が、治療としてエタノールを投与する考え方(ADH競合)につながります。

メタノールエタノール違い:中毒症状と潜伏期間

メタノール中毒の臨床で怖いのは「最初は酩酊っぽいだけ」に見える時間帯があり、その後に重篤化し得ることです。メタノール中毒では、ギ酸による毒性が出るまで潜伏期間があり、6~30時間という記載があり、半日~1日程度でアシドーシスや視神経症状が出現し得るとされています。
症状としては、早期の酩酊状態に続いて、頭痛・嘔気・嘔吐・腹痛などが出て、複視、視野狭窄、色覚異常などの眼症状、さらに過呼吸、昏睡、痙攣へ進行し得ると整理されています。

ここでのポイントは「視覚症状+代謝性アシドーシス」という組み合わせを見たら、まずメタノール(や他の有毒アルコール)を疑う思考回路に切り替えることです。

エタノールについては、同じ“アルコール”でも、一般に議論の中心は中枢神経抑制や低血糖などで、メタノールのようにギ酸蓄積による遅発性の失明を軸に組み立てません(ここが臨床トリアージ上の大きな違いです)。

メタノールエタノール違い:検査と分析(GC/MS)

有毒アルコールの診療では「疑い」だけでなく、可能なら定量値が治療選択の根拠になります。日本中毒学会系の資料では、メタノールは①解毒・拮抗剤(エタノール)が存在する、②分析依頼頻度が高い、③定量分析値が治療法の選択基準となる、といった理由で分析すべき品目に挙げられると述べられています。
現場の分析としては、ヘッドスペースGC法やGC/MSが紹介されており、血液・尿などでメタノールを定量し、さらにギ酸も測れることが強調されています。

また、メタノール中毒では「メタノール自体は主に酩酊」だが「ギ酸が失明や致死的経過に関与」するため、ギ酸の定量が重症度判断や治療モニタリングに有用という位置づけです。

注意点として、簡易検査(呈色反応など)は“アルコールの存在”のスクリーニングにはなっても、メタノールに特異的ではなく飲酒でも陽性になり得るため確定診断にはならない、と整理されています。

したがって、救急外来や集中治療で「強いアシドーシス+飲酒/溶剤摂取疑い」がある場合、簡易検査の結果に過度に依存せず、臨床像から治療を前倒ししつつ確定分析へつなぐ戦略が重要になります。

メタノールエタノール違い:治療(エタノール・ホメピゾール・透析)

メタノール中毒の治療は、大きく「代謝させない」「酸を是正する」「体外へ出す」の3本柱で考えると整理しやすいです。資料では、アシドーシスがあるとギ酸の毒性がさらに増加するとされ、炭酸水素ナトリウム静注による補正が必要とされています。
体外除去として、メタノールとギ酸は血液透析で効率よく除去できるとされ、適応としてメタノール30mL以上の服用、アシドーシス、血中メタノール濃度50mg/dL(0.5mg/mL)以上、中枢神経および眼症状の出現などが挙げられています。

また、胃洗浄は「摂取後1時間以内」など限定的で、メタノールは吸収が早く、活性炭もほとんど吸着されないため効果がないとされています。

解毒(代謝阻害)は、ADHに対する親和性が高いエタノールを投与して競合阻害させる考え方が説明されています。具体的には、代謝性アシドーシス、血中メタノール濃度20mg/dL(0.2mg/mL)以上、摂取が確実で何らかの症状がある場合に有用とされ、初回0.6g/kg、維持0.1g/kg/時を2~3日程度投与し、血中エタノール濃度のモニタリングや低血糖に注意する、と記載されています。

さらに補助療法として、ギ酸の代謝促進を狙うロイコボリン療法、ADHの特異的拮抗剤である4-メチルピラゾール(ホメピゾール)療法が挙げられています。

ここでの“違い”を実務に落とすなら、エタノールは中毒原因にも治療薬にもなり得る一方、メタノールは原因としては致命的になり得る、という非対称性をチームで共有することが事故予防にも直結します。

メタノールエタノール違い:独自視点(葉酸と感受性)

検索上位の解説では「メタノール→ギ酸→失明」は頻出ですが、臨床的に“意外と差が出る”のが葉酸(テトラヒドロ葉酸)状態です。環境保健クライテリア(EHC)では、メタノールの毒性は「メタノールからギ酸への変換」と「葉酸経路でギ酸を二酸化炭素へ代謝する能力」の両方に左右され、ヒトの感受性決定要因として「エタノール同時摂取」と「肝臓における葉酸の状態」が重要と述べています。
同じ摂取量でも重症度が揺れる背景として、ギ酸の解毒(代謝)側の能力差があり得る、という視点は、症例の“ばらつき”を説明する助けになります。

EHCでは、葉酸欠乏リスクが高い集団として妊婦、高齢者、品質の悪い食事を摂取している人々、アルコール中毒者などが挙げられています。

この視点を現場に応用すると、患者背景(栄養状態、慢性飲酒、併存疾患)を聴取する意味が「一般論」ではなく、ギ酸のクリアランスに関わる可能性があるという実務的価値になります。

また、治療選択としてロイコボリン療法が“ギ酸代謝を促進する”目的で言及されるのも、この代謝経路の存在を前提にした発想です。

参考:メタノールの毒性機序(ギ酸・葉酸経路)、潜伏期、感受性因子(エタノール同時摂取、葉酸状態)
https://www.nihs.go.jp/hse/ehc/sum3/ehc196/ehc196.pdf
参考:臨床像、分析(GC/MS)、透析適応、エタノール投与量、ロイコボリン/4-メチルピラゾール
https://jsct.jp/shiryou/archive2/no12/




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