尿酸排泄促進薬 種類一覧と効果・副作用の比較

高尿酸血症治療で重要な尿酸排泄促進薬の種類や特徴、副作用を詳しく解説。各薬剤の比較や適切な使い分けについても医療従事者向けに専門的に解説しています。あなたの患者さんにはどの薬剤が最適でしょうか?

尿酸排泄促進薬の種類一覧と特徴

尿酸排泄促進薬の基本情報
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尿酸排泄のメカニズム

尿酸排泄促進薬は腎臓での尿酸再吸収を阻害し、血中尿酸値を低下させます

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薬剤の種類

ベンズブロマロン、プロベネシド、ドチヌラドなど、各薬剤の特性を把握しましょう

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副作用管理

尿路結石や肝障害などの副作用リスクを理解し、適切な管理が重要です

尿酸血症の治療において、尿酸値を適切にコントロールすることは痛風発作の予防や腎障害の改善に不可欠です。治療薬は大きく分けて「尿酸生成抑制薬」と「尿酸排泄促進薬」の2種類があります。本記事では、特に尿酸排泄促進薬に焦点を当て、その種類や特徴、副作用について詳しく解説します。

 

尿酸排泄促進薬は、腎臓に作用して尿酸が尿中に排泄される量を増やすことで血中の尿酸値を低下させる薬剤です。主に尿酸の排泄が低下している「排泄低下型」の患者さんに処方されることが多いのが特徴です。

 

尿酸排泄促進薬の作用機序と基本的な特徴

尿酸排泄促進薬は、腎臓の尿細管で尿酸が血管内に再吸収されるのを阻害する作用を持っています。通常、尿酸は腎臓でろ過された後、その大部分が尿細管で再吸収されますが、尿酸排泄促進薬はこの再吸収プロセスを抑制します。その結果、尿中に排泄される尿酸量が増加し、血液中の尿酸値が低下するのです。

 

一般的に高尿酸血症の患者さんの約60%が排泄低下型と言われており、特にメタボリックシンドロームや腎臓病・心不全を合併している患者さんに多く見られます。そのため、これらの背景疾患を持つ患者さんには尿酸排泄促進薬が選択されることがあります。

 

しかし、注意すべき点として、尿酸排泄促進薬の使用により尿中の尿酸濃度が高まるため、尿路結石のリスクが増加します。このリスクを軽減するために、十分な水分摂取や尿アルカリ化薬(ウラリットなど)の併用が推奨されています。

 

尿酸排泄促進薬の主要な種類一覧と特徴比較

現在、日本で使用可能な主な尿酸排泄促進薬は以下の4種類です。それぞれの特徴を比較しながら解説します。

 

1. ベンズブロマロン(商品名:ユリノームなど)

ベンズブロマロンは長年使用されてきた尿酸排泄促進薬で、尿酸降下作用が強いという特徴があります。しかし、重篤な肝毒性が報告されたことから、世界的には使用が大幅に制限されています。

 

効果:尿酸降下作用が強力
用法:通常、1日1〜2回の服用
特記事項:導入後少なくとも半年間は肝機能の慎重なフォローが必要
適応:主に高血圧症を合併している患者さん、一部の腎機能低下症例
肝障害のリスクはあるものの、実際に肝障害を起こす確率は非常に低いとの報告もあります。しかし、添付文書上では導入後半年間は肝機能の慎重なフォローが必要とされているため、他の高尿酸血症治療薬が使用できない場合に処方されることが多くなっています。

 

2. プロベネシド(商品名:ベネシッド/ベネシットなど)

プロベネシドは最も古い高尿酸血症治療薬の一つで、元々はペニシリンの効果を高めるために使われていた薬剤です。尿酸低下作用は偶然発見されました。

 

効果:尿酸降下作用は比較的弱い
用法:通常、1日2〜3回の分割服用が必要
特記事項:併用禁忌薬が多い
適応:現在はほとんど処方されることがない
尿酸を下げる効果が十分ではなく、その後のユリノーム(ベンズブロマロン)の登場によって、最近ではほとんど処方されることがなくなっています。また、ワルファリンやアスピリンなど、併用が難しい薬が多いという特徴もあります。

 

3. ブコローム

ブコロームは腎臓で尿酸の再吸収を抑制する薬剤です。

 

効果:尿酸降下作用は比較的穏やか
用法:通常、1日2〜3回の服用
特記事項:中毒性表皮壊死症のリスクあり
適応:現在は他の薬剤が優先されることが多い
主な副作用には、貧血、発疹、胃痛、腹痛、下痢、食欲不振、吐き気、眠気などがあります。また、重大な副作用として中毒性表皮壊死症が報告されています。

 

4. ドチヌラド(商品名:ユリス)

ドチヌラドは比較的新しい選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)です。

 

効果:選択的に尿酸排泄を促進する
用法:1日1回の服用
特記事項:従来の尿酸排泄促進薬より選択性が高い
適応:新規の高尿酸血症患者、他剤で効果不十分な場合
ドチヌラドは従来の尿酸排泄促進薬と比較して、尿酸のトランスポーターであるURAT1により選択的に作用する点が特徴です。これにより、尿酸特異的な効果が期待できます。

 

以下の表で各薬剤の特徴を比較してみましょう。

 

薬剤名 商品名 効果 服用回数 主な特徴 主な副作用
ベンズブロマロン ユリノーム 強い 1〜2回/日 効果が強い 肝障害
プロベネシド ベネシッド 弱い 2〜3回/日 古い薬剤 溶血性貧血、併用禁忌多い
ブコローム - 中程度 2〜3回/日 穏やかな効果 中毒性表皮壊死症
ドチヌラド ユリス 中〜強 1回/日 選択性が高い 一般的な副作用

尿酸排泄促進薬の副作用と服用時の注意点

尿酸排泄促進薬にはさまざまな副作用が報告されています。患者さんの安全な治療のためにも、これらの副作用を理解し、適切に対応することが重要です。

 

一般的な副作用

  • 胃腸障害:胃痛、腹痛、下痢、便秘、吐き気などの消化器系の症状
  • 皮膚症状:発疹、かゆみなど(まれに重篤な皮膚症状を引き起こすことも)
  • 肝機能障害:特にベンズブロマロンでは肝機能のフォローが必須
  • 尿路結石:尿中尿酸濃度の上昇による結石形成リスクの増加

重大な副作用

  • 肝障害:ベンズブロマロンでは、急性肝不全などの重篤な肝障害が報告されています。発熱、倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛、黄疸などの症状が現れた場合は、すぐに医師に相談する必要があります。
  • 中毒性表皮壊死症:ブコロームなどで報告されている重篤な皮膚症状です。高熱や皮膚の広範囲が赤くなる、目が充血するといった症状が現れた場合は注意が必要です。
  • 血液障害:プロベネシドでは溶血性貧血や再生不良性貧血などの重篤な血液障害が報告されています。

服用時の注意点

  1. 十分な水分摂取:尿路結石のリスクを軽減するために、1日2リットル程度の水分摂取を心がける
  2. 尿アルカリ化薬の併用:尿酸が尿中で結晶化しにくくするために、ウラリットなどの尿アルカリ化薬を併用することがあります
  3. 定期的な肝機能検査:特にベンズブロマロンを使用する場合は、投与開始後半年間は定期的に肝機能検査を行う必要があります
  4. 併用薬に注意:各薬剤によって併用禁忌や併用注意の薬剤が異なるため、服用中の他の薬剤との相互作用に注意が必要です
  5. アルコール摂取の制限:アルコールは尿酸値を上昇させるだけでなく、薬剤の肝障害リスクを高める可能性があるため注意が必要です

尿酸排泄促進薬の選択基準と処方のポイント

高尿酸血症の治療において、どの尿酸排泄促進薬を選択するかは患者さんの状態や背景疾患によって異なります。以下に、薬剤選択の主なポイントをまとめます。

 

病型による選択

高尿酸血症は「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」に分類されます。このうち、尿酸排泄低下型(全体の約60%)や混合型の患者さんには、尿酸排泄促進薬が理論的には適しています。しかし、実臨床では尿酸排泄促進薬の副作用リスクから、排泄低下型の患者さんにも尿酸生成抑制薬が選択されることが多いのが現状です。

 

腎機能による選択

  • 腎機能正常〜軽度低下:すべての尿酸排泄促進薬が選択肢となりますが、効果と安全性のバランスからドチヌラドが選ばれることが増えています。
  • 腎機能中等度〜高度低下:尿酸排泄促進薬は効果が減弱するため、主に尿酸生成抑制薬が選択されます。

肝機能による選択

  • 肝機能正常:すべての薬剤が選択可能です。
  • 肝機能障害あり:特にベンズブロマロンは注意が必要です。肝障害のリスクが低い他の薬剤を優先的に選択することが推奨されます。

併存疾患による選択

  • 尿路結石の既往:尿路結石のリスクが増加するため、尿酸排泄促進薬は原則的に避けるか、十分な水分摂取と尿アルカリ化薬の併用を徹底します。
  • 高血圧合併:ARBの一種であるロサルタンカリウムは尿酸排泄促進作用を持つため、高血圧を合併する高尿酸血症患者には選択肢となります。

他の薬剤との相互作用

尿酸排泄促進薬は他の薬剤との相互作用が多いため、服用中の薬剤を確認する必要があります。特にプロベネシドはワルファリンやアスピリンなど多くの薬剤と相互作用があります。

 

処方のポイントとしては、患者さんの病型だけでなく、腎機能や肝機能、併存疾患、服用中の薬剤、ライフスタイルなどを総合的に評価し、最適な薬剤を選択することが重要です。また、定期的な血液検査で効果と副作用をモニタリングし、必要に応じて薬剤の変更や用量の調整を行うことが推奨されます。

 

尿酸排泄促進薬と食事・生活習慣の相互作用

尿酸排泄促進薬による薬物治療は、適切な食事・生活習慣の改善とともに行うことで、より効果的な尿酸値のコントロールが可能になります。ここでは、尿酸排泄促進薬を服用している患者さんに特に重要な食事・生活習慣のポイントを解説します。

 

水分摂取の重要性

尿酸排泄促進薬を服用している患者さんにとって、十分な水分摂取は特に重要です。なぜなら、これらの薬剤は尿中の尿酸濃度を上昇させるため、尿路結石のリスクが高まるからです。

 

  • 1日2リットル以上の水分摂取を推奨
  • 特に起床時、就寝前、薬剤服用時には積極的に水分を摂取する
  • アルコール飲料は利尿作用があり脱水を招くため注意が必要

食事の注意点

尿酸値を下げるための食事療法の基本は、尿酸排泄促進薬を服用している場合でも同様ですが、いくつか特に注意すべき点があります。

 

  • プリン体の摂取制限:レバー、魚卵、干物などプリン体を多く含む食品は控えめにする
  • アルカリ性食品の積極的摂取:野菜や果物などのアルカリ性食品は尿のpHを上げ、尿酸の溶解度を高める
  • アルコール制限:特にビールは尿酸値を上昇させるだけでなく、薬剤の肝障害リスクを高める可能性がある

運動と体重管理

適度な運動と適正体重の維持は、尿酸値のコントロールに重要です。

 

  • 有酸素運動の推奨:ウォーキングや水泳など、急激な筋肉の分解を伴わない有酸素運動が適している
  • 過度な運動を避ける:激しい運動や無酸素運動は、乳酸が尿酸の排泄を妨げるため注意が必要
  • 減量のペース:肥満がある場合は減量が効果的だが、急激な減量は尿酸値を上昇させるので注意

服薬アドヒアランスの重要性

尿酸降下薬による治療は長期にわたるため、服薬アドヒアランスの維持が重要です。

 

  • 規則的な服薬:処方された用法・用量を守り、自己判断で中断しない
  • 定期的な通院:尿酸値や肝機能などのモニタリングのために定期的に受診する
  • 副作用の早期発見:異常を感じたら自己判断せず、すぐに医師に相談する

治療効果の評価

尿酸排泄促進薬による治療効果は、定期的な検査で評価します。

 

  • 治療目標値は原則として6.0mg/dL以下(痛風結節がある場合は5.0mg/dL以下)
  • 治療開始後は1〜3ヶ月ごとに尿酸値をチェック
  • 特にベンズブロマロンを服用している場合は、定期的な肝機能検査が必要

尿酸排泄促進薬は単独で使用されることもありますが、生活習慣の改善や他の薬剤との併用によって、より効果的な治療が可能になります。また、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立て、定期的な評価と調整を行うことが重要です。

 

日本糖尿病学会誌に掲載された尿酸排泄促進薬と糖代謝に関する研究
高尿酸血症の治療において、尿酸排泄促進薬は重要な選択肢の一つです。しかし、その効果と副作用のバランス、患者さんの状態に合わせた適切な薬剤選択が治療成功の鍵となります。医療従事者として、これらの薬剤の特徴を十分に理解し、患者さんに最適な治療を提供することが求められています。