リハビリテーション医療における低出力レーザー治療は、赤外線の中でも特に生体深達度の高い波長帯を利用した物理療法です。レーザー光の波長や出力に応じて疼痛緩和や創傷治癒等に利用されており、医療現場での応用が広がっています。
この治療法の最大の特徴は、皮膚表面から約90%減衰しても、残りの約10%のレーザーが深部組織に到達し、痛みを伝達する神経活動を効果的に抑制することです。富山大学の研究によると、皮膚の上から坐骨神経にレーザーを照射すると、痛み刺激による神経活動のみが選択的に抑制されることが実証されています。
従来のレーザー治療では効果が50%程度でしたが、出力を100mWから1000mWにアップすることで、有効率が80%近くまで向上することが確認されています。この向上により、「手術、薬物に続く第三の療法」として注目されています。
レーザー治療による疼痛緩和のメカニズムは多面的であり、以下の作用が相互に働きます:
特に星状神経節照射では、交感神経の要所である「大きな神経のツボ」にアプローチすることで、ストレスや不規則な生活による自律神経失調症状の改善が期待できます。
筋肉や関節への照射により組織の奥まで到達したレーザーの光子は、細胞に吸収され光化学反応を起こします。この反応により血行改善、痛みの緩和、炎症の抑制、組織の修復など様々な効果をもたらします。
リハビリテーション分野では、この治療法により部分的に神経過敏になっている状態を鎮めたり、脳卒中などの原因で筋肉が硬くなっている部位の神経活動を抑制する効果も確認されています。
低出力レーザー治療の適応症例は幅広く、以下のような疾患・症状に効果が認められています。
運動器系疾患:
神経系疾患:
その他の症状:
東邦大学の原田教授によると、関節痛など慢性の痛みでは80%近くに鎮痛効果があることが報告されています。特にスポーツ障害においては、高出力のものと比べて副作用の心配がなく、素早く痛みを抑えることができる利点があります。
治療頻度は週1回、合計4-5回の照射が一般的で、大半の症例で照射直後から6時間以内に治療効果が現れます。最初の照射でペインスコア10点から4点以下になった有効例が25例中14例に認められており、即効性の高さが特徴です。
リハビリテーション医療におけるレーザー治療のエビデンスは蓄積されつつありますが、効果の十分な証明には課題も残されています。現在、リハビリテーション医療以外の領域ではレーザー照射の効果が証明され、様々な疾患に対し積極的に治療に導入されているものの、物理療法としては効果の検証が十分とは言えない状況です。
しかし、実際の臨床現場では以下のような治療成績が報告されています。
疼痛緩和効果:
血流改善効果:
組織修復効果:
特筆すべきは、神経伝導の抑制、抗炎症作用により、治療中に痛みを感じることなく低侵襲で疼痛緩和効果を発揮する点です。また、繰り返し治療により効果の持続期間が長くなり、自律神経のバランスが整ったところで症状が安定する傾向があります。
従来の疼痛緩和を中心としたレーザー治療に加え、新たなアプローチとして以下の領域での応用が注目されています。
予防医学への応用:
認知機能・神経可塑性への影響:
統合的リハビリテーション:
近赤外線治療器(スーパーライザー)では、従来の赤外線照射器では届かない深部組織にもアプローチ可能で、星状神経節への照射療法により自律神経系の包括的な調整が期待できます。
また、帝人ファーマ株式会社と富山大学の共同研究により、経皮的レーザー照射の詳細なメカニズムが解明されつつあり、低出力レーザーのさらなる普及や適応疾患の拡大が期待されています。
この分野の発展により、薬物療法に頼らない非侵襲的な治療選択肢として、患者QOLの向上と医療費削減の両立が可能となる可能性があります。
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