リンデロンA液(点眼・点鼻用リンデロンA液)は、成分としてベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(ステロイド)とフラジオマイシン硫酸塩(抗菌薬)を含む「点眼、点鼻用合成副腎皮質ホルモン・抗生物質配合剤」です。
添付文書ベースの「点鼻等」の効能・効果は、アレルギー性鼻炎、進行性壊疽性鼻炎、鼻及び咽喉頭部における術後処置と整理されます。
ここで臨床上いちばん大事なのは、“鼻炎っぽい=とりあえず点鼻”にしないことです。アレルギー性鼻炎であっても、主症状がくしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉のどれか、鼻内所見で粘膜腫脹が主体か、感染徴候(膿性鼻漏、発熱、局所痛)が強いかで、薬剤選択と説明が変わります。
さらに本剤は抗菌薬配合であるため、「炎症を抑えたい」のか「感染を伴う炎症を抑えたい」のかを、処方側が一段言語化してから使うと、漫然投与を減らせます(特に“いつまで使うか”の出口戦略が立ちます)。
医療従事者向けの現場メモとしては、次のように患者説明の軸を作ると迷いにくいです。
用法・用量としては、「通常、適量を1日1~数回点鼻、ネブライザー又はタンポンにて使用し、症状により適宜増減する」とされています。
つまり、一般的な“回数固定の市販点鼻薬”とは違い、医療者側の裁量と観察が前提の薬剤です。だからこそ、患者側が自己判断で増量・長期化しないよう、最初に「何回まで」「何日で再評価」「悪化時の対応」をセットにして渡すのが安全です。
実務では「適量」が曖昧で指導がぶれやすいので、院内で次のような“運用ルール”を作ると教育コストが下がります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/c82dd4704c5eb9c223f26672395bf0b07d54d64a
なお、嗅覚障害の領域では、点鼻液を2~3滴ずつ滴下し、5分程度同一姿勢を保ち、朝晩2回行う、といった具体的な手技が紹介されています。
この「滴下後に姿勢を保持する」という要素は、一般の鼻スプレー指導よりも抜けやすく、効果差につながりやすいポイントです。
リンデロン(ステロイド)点鼻のやり方として、嗅裂(においのセンサーがある上方)への到達を意識した姿勢が複数提案されています。
具体的には、懸垂頭位(仰向けで頭を反らす)、Moffat position(座位で頭を床につける姿勢)、枕なし側臥位(枕なしで横向き、頭部を20~30°回旋し、上側の鼻腔に鼻中隔に沿って滴下)などです。
この話が「鼻 使い方」の記事で意外に重要な理由は、薬剤の“性能”より先に、薬液が届く場所で臨床効果が大きく変わるからです。特に嗅覚障害や上方病変では、通常の正面方向の点鼻では薬液が前方~下方に偏り、狙った部位に届きにくいことがあります。
したがって、医療者側は「点鼻=鼻の穴に入れれば同じ」という誤解を、簡潔な一言で崩すのがコツです。例えば「鼻の上の方に薬を届けるには、姿勢が治療の一部です」と伝え、姿勢+保持時間まで含めて手技として渡します。
患者が実施しやすい順に並べると、個人的には次の説明が通りやすいです。
加えて、薬液がのどに流れた場合は、うがい等で吐き出して飲み込まないようにする、という注意が明記されています。
「のどに落ちる=失敗」ではなく、「落ちたらこうする」というリカバリー動作まで指導すると、患者は続けやすく、誤嚥・不快感・自己中断を減らせます。
本剤は配合剤であり、注意点も「ステロイド由来」と「抗菌薬由来」が混在します。
鼻に関する副作用として、局所にフラジオマイシンの耐性菌または非感性菌による化膿性感染症が起こり得ることが示されています。
また、長期使用では下垂体・副腎皮質系機能の抑制やクッシング症候群といった全身性の影響が起こり得る旨が記載されています。
点鼻は局所投与であっても、“大量・長期”という条件がそろうと全身性作用の可能性がゼロではない、という前提で、漫然継続を避ける運用が必要です。
現場での観察ポイントを、患者にも共有できる表現に落とすと次のようになります。
ここで“意外と見落としやすい”のは、患者が「ステロイド=怖い」だけに意識が向き、抗菌薬配合による菌交代・耐性の話が抜けることです。抗菌薬入り点鼻は、使い方を誤ると「一時的に良くなったように見えて、別の菌でこじれる」構図を作り得るため、医療者は中止条件を明文化して渡すのが安全です。
参考:用法・用量、禁忌や副作用など添付文書相当の項目がまとまっている
医療用医薬品 : リンデロン (点眼・点鼻用リンデロンA液)
参考:嗅覚障害での点鼻姿勢(懸垂頭位、Moffat position、枕なし側臥位)と、2~3滴・5分保持・朝晩2回、のどに流れたら吐き出す等の具体手技
https://hamacho-ent.com/blog_clinic/1299