ロコモ度テスト2ステップの正しい測定と評価の実践ガイド

ロコモ度テストの2ステップテストは、正しく測定できていますか?基準値の見方から年齢別の評価方法、臨床での活用ポイントまで、医療従事者が現場で即使える知識をまとめました。あなたの現場での評価は本当に正確でしょうか?

ロコモ度テスト2ステップの正しい測定と臨床評価ガイド

40歳未満の男性でも、実に21.7%がすでにロコモ度1に該当しています。


📋 この記事の3つのポイント
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2ステップテストの正しい測定手順

2歩幅(cm)÷身長(cm)で算出する「2ステップ値」は、下肢筋力・バランス・柔軟性を総合評価できる指標。測定の際は靴を履き、滑りにくい床で実施することが原則です。

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判定基準と年齢別の目安値

2ステップ値1.3未満でロコモ度1、1.1未満でロコモ度2、0.9未満でロコモ度3と判定。40代男性の平均は1.54〜1.62、女性は1.49〜1.57が目安です。

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臨床現場での活用と介入のポイント

10m歩行テストより狭いスペースで実施可能で、床効果が生じにくいという特長があります。介入後の変化も捉えやすく、リハビリ評価指標として有用性が高い検査です。


ロコモ度テスト2ステップテストとは何か:歩幅で何が分かるのか



2ステップテストは、日本整形外科学会が2013年に策定したロコモ度テストの3つの構成要素の一つです。「立ち上がりテスト」「ロコモ25(25項目問診票)」と並ぶ、移動機能評価の中核を担うテストとして位置づけられています。


このテストの本質は、「身体を水平方向へ移動する機能」を測定することにあります。つまり、大股で2歩歩いたときの最大歩幅を計測し、それを被験者の身長で割った「2ステップ値」という指数を使います。単なる歩幅の長さではなく、身長比で補正することで体格差が反映される仕組みです。


注目すべき点は、この値が一つの指標でありながら、下肢の筋力・バランス能力・関節の柔軟性という複数の機能を同時に映し出す点です。たとえば、下肢筋力が弱ければ一歩を大きく踏み出すことができません。バランス能力が低ければ着地時に体勢を崩してテスト失敗になります。関節可動域が制限されていれば、自ずと歩幅は狭まります。これが基本です。


研究上も、2ステップ値は歩行速度や6分間歩行距離と有意に高い相関が示されており(ICC=0.84)、信頼性の高い評価ツールとして認められています。さらに、10m歩行テストやTUGと比較したとき、体育館やリハ室のような広い場所を要さずに実施できるという実用的な強みがあります。


ロコモ度 2ステップ値 状態の目安
正常(非ロコモ) 1.3以上 移動機能に問題なし
ロコモ度1 1.1以上〜1.3未満 移動機能の低下が始まっている
ロコモ度2 0.9以上〜1.1未満 移動機能の低下が進行している
ロコモ度3 0.9未満 社会参加に支障をきたしている


参考リンク:日本整形外科学会公式サイトにてロコモ度テストの測定方法・判定基準が確認できます。


ロコモ度テスト「2ステップテスト」 | ロコモONLINE(日本整形外科学会)


ロコモ度テスト2ステップの正しい測定手順と現場での注意事項

測定の正確さが結果の信頼性を決めます。手順は一見シンプルに見えますが、実際には現場で見逃しやすいポイントがいくつかあります。


まずスタートラインを設定し、両足のつま先をそろえます。そこからできる限り大股で2歩進み、最後に両足をそろえて静止します。このときバランスを崩した場合は試技失敗として最初からやり直しです。2歩分の距離(最初のつま先位置から着地点のつま先まで)をメジャーで測定し、5mm単位で記録します。2回実施して、良い方の値を採用します。


計算式は次の通りです。


  • 2ステップ値 = 2歩幅(cm)÷ 身長(cm)


身長160cmの方が2歩で200cmを歩いた場合、2ステップ値は1.25となり、これはロコモ度1の範囲です。ちなみに身長160cmで2ステップ値1.3を達成するためには、2歩で最低208cm(=160×1.3)が必要になります。


測定時の必須確認事項


  • 🧤 介助者を配置する:バランスを崩した際の転倒予防のため、必ず近位監視か補助者を置く
  • 👟 かかとが低く底が平らな靴を履く:素足や靴下のみは滑りやすく危険、靴の着用が原則
  • 🏃 準備運動を行う:ウォームアップなしの測定は関節への負担と誤差の原因になる
  • 🚫 ジャンプ禁止:踏み切りや跳躍を伴うとテスト本来の評価から逸脱する
  • 🦯 装具使用は許可、杖使用は不可:装具を使用している場合はそのまま使用してよい


腰や膝に強い痛みがある場合は、無理に測定を行わないことが大前提です。また、測定距離の計測は両方のつま先の位置を基準にするため、計測者が毎回同じルールで運用することが誤差を防ぐになります。これが条件です。


参考リンク:厚生労働省の資料で、ロコモ度テストの実施方法と判定基準が一覧でまとめられています。


ロコモ度テスト(厚生労働省PDF)


ロコモ度テスト2ステップの年齢別基準値:対象者の結果をどう読むか

2ステップ値は「1.3未満がロコモ度1」という一律の基準値が広く知られていますが、それだけでは不十分です。医療従事者として対象者を適切に評価するためには、年齢別の平均値と比較する視点が欠かせません。


以下は、ロコモ チャレンジ!推進協議会のワーキンググループ調査データに基づく年齢別の目安値です。


年代 男性(目安範囲) 女性(目安範囲)
20〜29歳 1.64〜1.73 1.56〜1.68
30〜39歳 1.61〜1.68 1.51〜1.58
40〜49歳 1.54〜1.62 1.49〜1.57
50〜59歳 1.56〜1.61 1.48〜1.55
60〜69歳 1.53〜1.58 1.45〜1.52
70歳以上 1.42〜1.52 1.36〜1.48


たとえば、40代の男性患者が2ステップ値1.45を示した場合、ロコモの診断基準(1.3以上)だけを見れば「非ロコモ」と判定されます。しかし同年代の平均値(1.54〜1.62)と比較すると、大きく下回っている状況です。つまり、現時点では正式なロコモ診断に至らないとしても、段階的な機能低下のサインとして捉え、予防的な介入を検討する重要な材料になります。


意外ですね。「基準値をクリアしていれば安心」というわけではありません。


特に注目したいのは、50代の値が40代よりもわずかに高い(男性で1.56〜1.61)という傾向が見られる点です。これは50代のデータに活動的な層が多く含まれる統計的な偏りとも考えられますが、加齢による単純な直線的低下ではないことを示しており、個別評価の重要性を示す根拠になります。


参考リンク:年齢別2ステップ値の平均と標準偏差グラフを含む評価シートが確認できます。


ロコモ度テスト②2ステップテスト(日本整形外科学会PDFシート)


ロコモ度テスト2ステップを使った臨床評価とリハビリへの応用

2ステップテストは、単独の評価ツールとして完結するのではなく、立ち上がりテスト・ロコモ25と組み合わせることで初めてロコモ度の総合判定が完成します。3つのテストそれぞれが独立した評価因子として歩行速度との有意な関連性を持ち、どれか一つでもロコモ度に該当すれば、最も移動機能低下が進んだ段階を最終判定結果として採用するルールになっています。


臨床場面での強みとして、10m歩行テストでは確保が難しい広い空間を必要としない点が挙げられます。在宅訪問リハビリや小規模なリハ室、さらには外来診察室に近いスペースでも測定を試みやすいという実用性があります。


また、理学療法や運動介入の前後比較においても2ステップテストは有用です。これは使えそうです。10m歩行テストなどでは比較的体力の高い高齢者において「床効果」(測定値が底打ちしてしまい変化を捉えにくくなる現象)が生じやすい問題がありますが、2ステップテストはこの床効果が生じにくい特性を持っています。介入前後の変化を数値として可視化しやすいため、患者さんへのフィードバックやモチベーション維持にも役立てられます。


3か月間のロコトレ(ロコモーショントレーニング)介入では、立ち上がりテストと2ステップテストによるロコモ度の変化として「改善19例(15%)・維持104例(80%)・悪化7例(5%)」という結果が報告されています(透析医会雑誌)。介入効果の確認手段として2ステップ値を定期的に追うことが、客観的なアウトカム管理につながります。


  • 💡 訪問リハビリ・在宅評価:10m以上の直線が確保できない環境でも、廊下や居室で実施しやすい
  • 📊 介入前後の変化確認:床効果が生じにくいため、元気な高齢者の微細な改善も捉えられる
  • 🤝 患者説明ツールとして:「自分の身長×1.3cm以上の2歩幅」というゴールを具体的に伝えられる


参考リンク:理学療法士・作業療法士向けに2ステップテストの臨床的意義を解説したページです。


理学療法士・作業療法士が意外と知らないロコモ度テスト(PT/OT/STスキルアップノート)


ロコモ度テスト2ステップが示す社会的背景:推計4160万人という現実

2024年に日本整形外科学会が発表した調査では、ロコモ度1〜3に該当する人が全体の41%に上り、20歳以上の人口に換算すると推計4160万人に及ぶという結果が示されました。これは日本人の3人に1人以上がロコモに該当するという計算になります。


ロコモは高齢者だけの問題ではありません。大規模疫学調査(ROAD study)によれば、40歳未満においても「ロコモ度1」に該当する人は男性で21.7%、女性で25.0%存在しています。60歳以上では男性65.7%、女性68%がロコモ度1以上に該当するという結果も報告されており、加齢とともに急速に割合が増加していく実態が明らかになっています。


ロコモ度3(2ステップ値0.9未満・社会参加に支障をきたしている状態)については、2020年に日本整形外科学会が新たに基準に追加しました。40歳以上で約580万人が該当するとされ、80歳を超える女性では実に44%がこの段階に該当するとも報告されています。


厚生労働省のデータに基づくと、6年間の要介護リスクはロコモ度1で1.03倍、ロコモ度2で1.09倍に対し、ロコモ度3では3.63倍と大幅に跳ね上がります。ロコモ度3になると要介護リスクが約3.6倍になるということです。この数字は、2ステップテストで「0.9未満」という一つの値を把握することが、どれほど重大な臨床情報を意味するかを示しています。


体幹筋面積は30代から男女ともに減少傾向にあり、900kcal/週以上の運動習慣(歩行に換算して1日45分以上)が筋面積減少の抑制因子となることも産業医科大学の研究で示されています。医療従事者として対象者に運動指導を行う際の根拠として活用できる数字です。


参考リンク:ロコモの推計患者数やリスク比のデータは、次世代の健康日本21策定に向けた厚生労働省の資料でも確認できます。


次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会資料(厚生労働省PDF)


参考リンク:勤労者ロコモの実態と産業保健現場での対応戦略について、専門家への詳細インタビューがまとめられています。


勤労者ロコモの実態と対応(健康保険組合連合会)






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