サブイレウスの初期治療における保存的治療は、腸管の安静化と減圧が基本となります。絶食による腸管への負荷軽減と適切な輸液管理により、多くの症例で改善を期待できます。
主な保存的治療の内容
特に軽度のサブイレウスでは、絶食と点滴による保存的治療で約70%の症例が改善するとされています。治療期間は通常3-5日程度で、この期間内に改善がみられない場合は外科的治療を検討する必要があります。
腸管の張りが強い場合には、胃管やイレウス管を留置して腸管内圧を下げる減圧処置が効果的です。イレウス管は鼻腔から腸管まで挿入する長いチューブで、腸管内容物を持続的に吸引することで症状の改善を図ります。
サブイレウスに対する薬物療法は、消化管運動改善と症状緩和を目的として使用されます。近年、東洋医学的アプローチも注目されており、従来の西洋薬との併用により良好な結果が報告されています。
消化管運動改善薬
大建中湯は特に救急外来でのサブイレウス治療において効果が認められており、入院期間の短縮にも寄与する可能性があります。血中濃度上昇による作用ではなく、平滑筋への直接刺激や血管神経系への作用により腸管運動を促進すると考えられています。
制吐・鎮痛薬の選択
サンドスタチンは消化管閉塞に対して特に有効で、早期開始により重篤化を防ぎ、治療成功率を向上させる可能性があります。投与は皮下注が原則で、シリンジポンプによる持続投与が推奨されています。
保存的治療で改善がみられない場合や、絞扼性イレウスが疑われる場合には外科的治療が必要となります。最近では腹腔鏡手術の普及により、低侵襲治療が選択されることが増えています。
手術適応の判断基準
癒着性イレウスに対する手術では、癒着剥離術が基本となります。腸管損傷が軽度の場合は癒着部分のみを剥離しますが、損傷が激しい場合には腸管切除・吻合が必要となることもあります。
腹腔鏡手術の利点
専門施設では腹腔鏡手術により再発率を約12%まで低下させており、従来の開腹手術と比較して良好な成績を示しています。
サブイレウス治療中には様々な合併症が発生する可能性があり、適切な管理が治療成功の鍵となります。特に長期絶食による栄養状態の悪化や電解質異常に注意が必要です。
主な合併症とその管理
麻痺性イレウスを引き起こしやすい薬剤には注意が必要で、オピオイド系鎮痛薬、抗コリン薬、抗精神病薬、免疫抑制剤などが挙げられます。これらの薬剤を使用中の患者では、サブイレウスの発症リスクが高まるため、定期的な腹部症状の評価が重要です。
タクロリムスなどの免疫抑制剤では血中トラフ値とイレウス発現率に相関があるとされ、適切な薬物血中濃度管理が必要です。また、ビンカアルカロイド系抗がん薬では投与総量の増加により麻痺性イレウスのリスクが高まるため、累積投与量の管理が重要となります。
サブイレウス治療後のリハビリテーションは、早期回復と再発予防において重要な役割を果たします。適切な運動療法により腸管運動の正常化を促進し、QOLの向上を図ることができます。
術後早期リハビリテーション
術後患者においては、創部の状態確認と栄養状態の評価が重要です。糖尿病などの既往がある患者では創傷治癒遅延のリスクがあるため、より慎重な管理が必要となります。
運動療法の段階的アプローチ
抜糸後の運動制限については個人差がありますが、創部の状態が良好であれば通常の運動訓練は問題ないとされています。ただし、腹圧のかかる動作については医師との相談が必要です。
慢性偽性腸閉塞(CIPO)のような特殊な病態では、長期的な管理が必要となり、各種prokineticsや便秘薬を併用した継続的な治療が行われます。マグネシウム製剤やセンナ系製剤なども効果的で、患者の症状に応じて適切に選択する必要があります。