水中毒の症状は重症度によって軽度・中度・重度の3段階に分類されます 。軽度の水中毒では呂律が回りにくい、頭痛や胸やけ、頻尿・夜尿、1日で4%前後の体重増加などの症状が現れます 。多尿や頻尿は腎臓が過剰な水分を処理しようとする反応であり、初期の重要な警告サインです 。[1][2][3]
中度に進行すると意識がもうろう状態になり、興奮・暴力的な状態、多量の尿失禁、嘔吐や痙攣、短時間での急激な体重増加が見られます 。この段階では患者の行動制限と身体的な管理・監視が必要となります 。
参考)https://brand.cleansui.com/journal/4538.html
重度の水中毒では意識障害、重篤な痙攣、吐血、肺水腫など生命に危険が及ぶ症状が出現します 。血清ナトリウム値が125mEq/L以下に急激に低下すると、けいれんや昏睡といった生命に対する危険を有する症状が現れ、医療的介入による集中的な治療が必要になります 。
参考)https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/588/005588_hanrei.pdf
水中毒の主な原因は、腎臓の処理能力である1時間あたり0.8~1.0Lを超える水分を過剰摂取することです 。特に溶質を含んでいない純粋な水を短時間で大量に摂取すると、血液中のナトリウム濃度が急激に低下し、低ナトリウム血症を引き起こします 。[5][6][7]
水中毒は精神疾患患者、特に統合失調症患者に多く発症します 。統合失調症患者の20%以上に多飲水行動が見られ、そのうち1~6%が水中毒を発症すると報告されています 。これらの患者では抗利尿ホルモンの過剰分泌やコルチコイドの欠乏なども関与しています 。
参考)https://www.kango-roo.com/word/20573
近年では精神疾患以外にも、マラソンなどの持久系スポーツ中の過度な水分摂取による水中毒の報告が増加しています 。オーストラリア国軍では2001~16年に10万年人あたり6.9例の水中毒が発生し、教育プログラムの実施により過去10年で23.3%減少したという興味深いデータがあります 。
参考)https://www.kango-roo.com/work/1413/
水中毒の診断は血液検査によるナトリウム濃度の測定で行われます 。血液中のナトリウム濃度が135mEq/L未満になると低ナトリウム血症と診断され、水中毒の可能性が考慮されます 。体重増加、多尿、血清ナトリウム値の低下といった特徴的な所見により診断が確定します。[12]
基本的な治療は水分摂取の制限です 。これにより体内の水分バランスを回復し、ナトリウム濃度を正常範囲に戻すことが期待されます 。精神疾患患者の場合は、隔離や拘束措置がとられることもあります 。
医療機関では、ナトリウムを含む点滴や薬剤を使用して血清ナトリウム濃度を徐々に正常化させる治療が行われます 。高張食塩水やフロセミドを併用する治療法もありますが、急激な補正は危険なため慎重に行われます 。水中毒が腎疾患やホルモン異常などの基礎疾患によって引き起こされている場合は、その原因となる疾患の治療も重要です 。
参考)https://shin-inc.co.jp/mizu-chudoku-masaka/
水中毒の予防には適切な水分摂取量の管理が重要です 。水の摂取量は1日2L程度に抑え、一度に大量の水を飲まず、こまめに分けて摂取することが推奨されます 。目安として30分~1時間おきにコップ一杯程度が適切です 。[13][10]
水分補給時には塩分と糖分の補給を怠らないことが重要です 。特に大量の汗をかいた後は塩分摂取を心掛ける必要があります 。経口補水液は人間の体液に近い成分で作られており、ナトリウム濃度はスポーツドリンクの2倍~4倍含まれているため、水中毒予防に効果的です 。
参考)https://shinewater.jp/magazine/post/water-poisoning_quantity/
スポーツ時には水ではなくスポーツドリンクを選択することが大切です 。マラソン中に汗で失う水分には電解質が含まれているため、水ばかり飲むとミネラルバランスが崩れ危険です 。経口補水液は自宅でも作ることができ、水1Lに対して塩3g、砂糖40gを加えることで簡単に調製可能です 。
参考)https://runnal.com/31817
水中毒による死亡例として、アメリカで行われた水飲みコンテストで約7Lの水を飲んだ女性が頭痛と腹部の膨らみを訴え、数時間後に死亡した事例があります 。これは「Hold Your Wee for a Wii」という、トイレに行かずに水が飲めるかという競技でした 。[6][15]
臨床データによると、水中毒患者の転帰は78%が回復しているものの、13%が死亡という深刻な統計が報告されています 。死亡症例の死因は49%が低ナトリウム血症に関連する合併症(脳および肺水腫など)、41%がその他の基礎疾患によるものです 。
参考)https://sndj-web.jp/news/001651.php
水中毒の発症要因には抗精神病薬の副作用も関与することがあります 。特に脳下垂体後葉ホルモンやバソプレシン誘導体を服用している患者では、水中毒のリスクが高まるため特に注意が必要です 。高血圧症、心臓病、腎臓病などの持病がある方は、塩分・水分の摂取量調整が困難な場合があるため、かかりつけ医への相談が重要です 。
参考)http://www.marunouchi.or.jp/kensyui/blog/dr-t%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%B6%E3%82%84%E3%81%8D%E3%80%80%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%A7%91%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E4%BA%BA%E3%81%AE%E6%B0%B4%E4%B8%AD%E6%AF%92/
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