スローケー(旧製品名)は、現在は代替として「塩化カリウム徐放錠600mg」を用いることが多く、1錠あたりカリウム 8mEq を含む徐放製剤として整理すると臨床で迷いにくくなります。
この「1錠=8mEq」という換算は、処方監査・投与量設計・切替時の議論で共通言語になり、まずここを起点に“総mEq/日”を出して全体像を作るのが安全です。
具体例として、1回2錠を1日2回なら 2錠×2回×8mEq=32mEq/日、1回1錠を1日3回なら 24mEq/日というように、処方を数分で見える化できます。
ただし同じ「32mEq/日」でも、投与回数・食後/食間・服薬アドヒアランスで血清Kの動きは変わり得るため、mEqは“量の骨格”であり、実装は別途設計が必要です。
臨床で意外に見落とされるのは、徐放錠の「大きさ」と「噛めない」制約です。
高齢者や嚥下が不安定な患者では、飲みにくさが服薬中断→低K再燃の原因になりやすく、mEqの理屈が正しくても結果が伴わないことが起こります。
経口カリウム製剤は「急ぎでない」低カリウム血症の補正に重要で、特に入院患者では“軽度のうちに拾って補う”という運用が、重症化を防ぐ実務になります。
一方で、低カリウム血症の原因が下痢・利尿薬などの喪失なのか、アルカローシス・インスリン・β2刺激薬などの細胞内シフトなのかで、補充の考え方が変わる点は押さえる必要があります。
また、偽性低カリウム血症(採血管内でのカリウム消費など)を疑う状況があれば、補充を急ぐほど“まず再確認”が患者安全に直結します。
「補充する」と決めた後も、補充は原因治療の代替ではない(例:下痢が続けばKも抜け続ける)ため、原因介入とセットで設計するのが基本です。
実務上は、以下の順で設計するとブレにくいです。
・原因は喪失かシフトか(下痢、利尿薬、アルカローシス、インスリンなどを点検)
・経口でいけるか(嚥下、腸管通過障害のリスク、内服可否)
・総mEq/日と回数(1錠8mEqを基準に“現実に飲める形”へ落とす)
塩化カリウム徐放錠は、消化管通過障害のある患者では禁忌とされ、局所的な粘膜刺激作用で潰瘍・狭窄・穿孔を起こし得る点が重要です。
さらに「噛み砕かずに多めの水で服用」という制約があるため、嚥下や介助の現場では“飲めるかどうか”が安全性そのものになります。
ここは添付文書の理解だけでなく、病棟の運用として「錠剤が大きい→飲めずに残薬→処方は継続だが実際は未投与」というギャップを拾う仕組みが要ります。
薬剤師・看護師が「内服できていない」を早期に拾って処方設計を変えるほうが、単にmEqを増やすより安全で確実です。
また、経管栄養や嚥下困難では、粉砕不可・徐放設計の制約が一段と効いてきます。
このとき“同じmEq”を目指すより、「その患者が確実に入れられる形」を優先し、採血で追いかける運用のほうが結果として安定します。
カリウム製剤は「Kを入れる」だけでなく、どの陰イオン(Clか有機酸か)を一緒に入れるかで酸塩基に影響が出ます。
有機酸カリウム(グルコン酸K、L-アスパラギン酸Kなど)は代謝物が重炭酸イオンになり得るため、代謝性アルカローシスを合併している状況では補充として不向きになり得ます。
さらに臨床的に重要なのは、代謝性アルカローシスがある場合、有機酸カリウムの投与では塩化カリウム投与に比べて「カリウムとして血中に残る割合が約40%ほど」と推測されており、効率面でも差が出うる点です。
この背景として、細胞外主要陰イオンのClはHCO3−のように細胞内へ取り込まれにくく、結果としてK+を細胞外液に“留めやすい”という説明が臨床判断に役立ちます。
一方で、下痢や遠位尿細管性アシドーシスなど、代謝性アシドーシスを伴う低Kの病態では、有機酸カリウムが有効と言える場面があることも押さえておきたいところです。
ただし、低カリウム血症とアシドーシスが合併するときは「アシドーシス改善が低Kを悪化させ得る」ため、まずK補充を優先する考え方があり、結局は塩化Kが基本軸になりやすい、という整理が実務的です。
加えて、酸塩基評価のために動脈血ガスを毎回取るのが難しい現場では、静脈血ガスのpHが動脈より0.03程度低いとされ、アルカローシス/アシドーシスの“ざっくり確認”に静脈を活用する発想もあります。
参考リンク(経口カリウム製剤のmEq、スローケー代替、酸塩基と製剤選択、禁忌や飲みにくさの実務ポイント)
https://hokuto.app/post/M5b6VxkSi3nztpoJo9Mq
低カリウム血症の補正で「mEqは入っているのにKが上がらない」場面では、低マグネシウム血症の併存が実務上の盲点になります。
低カリウム血症の50%は低マグネシウム血症を合併すると言われ、低MgがあるとROMKチャネルからのカリウム排泄が亢進し、K補充の“効き”が落ち得るという説明は、チームに共有しやすい因果です。
この視点が独自性として効くのは、単なる「スローケー何錠=何mEq」ではなく、「なぜそのmEqが効いていないのか」を病態で説明できるからです。
実際の病棟では、Kの再検が続いているのにMgが測られていない、あるいは測っても補正計画に組み込まれていないことがあり、ここを埋めるだけで補正スピードが改善することがあります。
運用の型としては、以下を“同じチェックリスト”に入れると再現性が上がります。
・K補充開始/増量のタイミングでMgも同時に確認する 🧪
・低MgがあればKと並行補正を検討する(特に補正抵抗性のとき)
・「mEqを増やす前に、効かない理由(下痢継続、利尿薬、アルカローシス、低Mg、内服できていない)」を一度棚卸しする 🔎
この棚卸しを行うと、mEq設計が“机上の換算”から“患者に届く設計”へ変わり、スローケー相当製剤の価値が出ます。