HCO3は「エイチシーオースリーマイナス」と読み、正式には重炭酸イオン(bicarbonate ion)を指します。医療現場において、この読み方は血液ガス分析の際に頻繁に使用されるため、正確な発音と理解が必要不可欠です。
HCO3の読み方における重要なポイント。
この用語は国際的にも統一されており、英語圏では「バイカーボネート」と呼ばれることが一般的です。しかし、日本の医療現場では「重炭酸」または「HCO3マイナス」として表現されることが多く、略して「ビカルブ」と呼ぶこともあります。
医療従事者にとってHCO3の正確な読み方を知ることは、チーム医療における円滑なコミュニケーションを図る上で極めて重要です。特に緊急時における血液ガス分析の結果報告では、迅速かつ正確な情報伝達が患者の生命に直結するため、統一された読み方の習得が求められます。
HCO3の基準値は年齢や性別によって若干の違いがありますが、成人の場合は以下の範囲が正常とされています。
成人の基準値
HCO3は直接測定されるのではなく、Henderson-Hasselbalch式を用いてpHとPaCO2の測定値から計算によって求められます。これは医療従事者が理解しておくべき重要な概念の一つです。
HCO3の計算式と種類
実際の臨床では、HCO3(actual)を用いて評価を行います。この数値は体内の酸塩基平衡状態を直接反映するため、代謝性の酸塩基障害の診断において極めて重要な指標となります。
測定における注意点として、採血後の検体は速やかに測定する必要があります。時間が経過すると検体内でのガス交換により、正確な数値が得られなくなる可能性があります。また、採血時の空気混入も測定値に影響を与えるため、適切な採血手技の習得も重要です。
HCO3は人体の酸塩基平衡において、最も重要な緩衝系の主要構成要素として機能しています。血液中では塩化物の次に多い陰イオンであり、血漿の電気化学的中性の維持に不可欠な役割を果たしています。
HCO3の主要な生理学的機能
体内でのCO2処理過程において、HCO3は重要な役割を担っています。細胞代謝により産生されたCO2の大部分は、赤血球内で炭酸脱水酵素の働きによりHCO3として血漿中に運ばれ、肺で再びCO2として呼気に排出されます。
病態との関係
HCO3の変化は主に腎臓による調節を受けており、慢性的な酸塩基障害では腎臓がHCO3の再吸収や排泄を調節することで、体内のpHバランスを保とうとします。この代償機能の理解は、複雑な酸塩基障害の診断において極めて重要です。
血液ガス分析におけるHCO3の読み方と解釈は、段階的なアプローチが重要です。以下の5つのステップに従って systematic な評価を行います。
Step 1:pHの確認
Step 2:一次性変化の特定
Step 3:代償の評価
代償が適切に働いているかを以下の式で確認します。
実際の症例例
患者:60歳男性、糖尿病既往
血液ガス:pH 7.25, PaCO2 30 mmHg, HCO3 18 mEq/L
この場合の読み方。
このように体系的にHCO3を含む血液ガス分析を読むことで、正確な病態把握が可能になります。
HCO3の異常値には様々な病態が関連しており、その鑑別診断は臨床現場において重要なスキルです。特に代謝性アシドーシスの場合、アニオンギャップ(AG)の計算が必須となります。
HCO3低下(代謝性アシドーシス)の原因
AG開大性(AG > 12 mEq/L)。
AG正常性(AG ≤ 12 mEq/L)。
HCO3上昇(代謝性アルカローシス)の原因
補正HCO3の計算
AG開大性アシドーシスでは、隠れた代謝性アルカローシスを見逃さないために補正HCO3を計算します。
補正HCO3 = 実測HCO3 + Δ AG
Δ AG = 実測AG - 正常AG(通常12)
この計算により、複数の酸塩基障害が同時に存在する複雑な病態を正確に把握できます。例えば、DKAと同時に嘔吐がある患者では、AG開大性アシドーシスと代謝性アルカローシスが併存する可能性があります。
臨床現場では、HCO3の数値だけでなく、患者の症状、既往歴、使用薬剤、電解質バランスなどを総合的に評価することが、正確な診断と適切な治療につながります。特に重症患者や集中治療室での管理において、HCO3の継続的なモニタリングは予後改善に直結する重要な指標となっています。