スティーブンジョンソン症候群(SJS)の治療において最も重要なのは早期診断と早期治療です。発症から7日以内の治療開始が予後を大きく左右するため、医療従事者は初期症状を見逃さない診断力が求められます。
治療の基本原則として以下が挙げられます。
発疹部の局所処置に加えて、厳重な眼科的管理、補液・栄養管理、呼吸管理、感染防止が重要な治療要素となります。
SJSの薬物治療においてステロイド薬の全身投与が第一選択とされています。治療指針では以下のような段階的アプローチが推奨されています:
軽症例の治療。
重症例の治療。
ステロイド療法の効果判定は皮疹の進展停止と発熱の改善で行いますが、感染症のリスクや敗血症のマスキング効果に注意が必要です。
ステロイド療法で効果が不十分な場合や重篤例では、以下の補助療法が併用されます:
免疫グロブリン大量療法(IVIG)。
血漿交換療法。
これらの治療法については施設によって選択が異なり、患者の重症度や合併症に応じて個別に判断する必要があります。
SJSでは高頻度で眼合併症を伴うため、眼科的管理は治療の重要な柱となります。急性期から慢性期まで継続的な管理が必要です。
急性期の眼科治療。
重症例での全身治療併用。
偽膜形成と眼表面上皮のびらんを認める場合は、局所治療のみでは消炎が困難なため、皮疹が軽度であってもステロイド等による全身的治療が必要です。
慢性期の眼科管理。
新規開発された輪部支持型角膜形状異常眼用コンタクトレンズは、疾患状態の悪化抑制に基づく視力改善とドライアイ症状の緩和をもたらす画期的な治療選択肢です。
従来の標準治療に加え、近年は分子標的療法やバイオマーカーを用いた個別化医療への関心が高まっています。
TNF-α阻害薬。
インフリキシマブやエタネルセプトが炎症軽減に有効な可能性があり、重篤例での使用が検討されています。これらの薬剤は炎症性サイトカインを標的とした治療戦略として注目されています。
遺伝的背景を考慮した治療。
HLA-B5801やHLA-A3101などの遺伝的マーカーが薬剤感受性と関連することが判明しており、将来的には遺伝子検査に基づく個別化治療が期待されています。
禁忌薬剤の注意。
サリドマイドは死亡率を上昇させるため現在では禁忌とされており、治療選択においては十分な注意が必要です。
また、集学的治療として、敗血症性ショックやARDS、血球貪食症候群を合併した場合には、ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)や血漿交換療法の早期導入が有効である可能性が報告されています。
SJSの治療は日々進歩しており、最新のエビデンスに基づいた治療選択が患者の予後改善につながります。死亡率約3%という重篤な疾患であるため、医療従事者は常に最新の治療情報をアップデートし、多職種連携による質の高い医療提供が求められています。
医療現場では、皮膚科専門医、眼科専門医、薬剤師、看護師などの多職種チームによる包括的な治療アプローチが患者の予後を大きく左右するため、各専門領域の知識を統合した治療戦略の構築が重要です。