タフルプロストラタノプロスト違い比較選択副作用緑内障治療

タフルプロストとラタノプロストは緑内障治療の第一選択薬ですが、薬理学的特性や副作用プロファイルに違いがあります。両薬剤の効果、受容体親和性、使い分けのポイントについて医療従事者向けに詳しく解説します。どちらを選択すべきでしょうか?

タフルプロストとラタノプロストの違い

タフルプロストとラタノプロストの主な違い
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受容体親和性の違い

タフルプロストはFP受容体親和性がラタノプロストの約12倍高く、より強力な眼圧下降効果が期待できます

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保存剤の有無

タフルプロストは防腐剤無添加製剤が基本で、角膜上皮障害のリスクが低く、ラタノプロストには保存剤含有と防腐剤フリー製剤の両方が存在します

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副作用の発現頻度

結膜充血の発現率はタフルプロストで26.5~36.7%、ラタノプロストでやや低く、使用感ではタフルプロストを選択する患者が多い傾向があります

タフルプロストとラタノプロストの化学構造と受容体親和性の差異

 

 

タフルプロストとラタノプロストは、どちらもプロスタグランジンF2α誘導体に分類される緑内障治療薬ですが、分子構造と受容体への結合力に明確な違いがあります。タフルプロストの活性代謝物は、ヒトFP受容体に対する親和性がラタノプロストの約12倍、イソプロピルウノプロストンの1,700倍という高い結合力を持っています。この受容体親和性の違いは、臨床的な眼圧下降効果の差として現れる可能性があります。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/8/2/8_134/_pdf

分子レベルでの作用機序を見ると、両薬剤ともに点眼後に眼内でカルボン酸体に代謝され、プロスタノイドFP受容体を刺激します。刺激を受けた受容体は、ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進することで眼圧下降作用を発揮します。ラタノプロストの作用機序も同様にぶどう膜強膜流出経路からの流出促進ですが、房水産生量には影響を与えません。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068905.pdf

臨床試験データでは、タフルプロストとラタノプロストの眼圧下降効果はほぼ同等であることが示されています。原発開放隅角緑内障および高眼圧症患者を対象とした研究では、ラタノプロスト継続群で開始時17.2±2.2mmHgから8週後16.3±3.1mmHgへ、タフルプロスト切り替え群で開始時17.0±2.0mmHgから8週後15.9±2.1mmHgへと、両群ともに有意な眼圧下降が認められました。別の臨床試験でも、タフルプロスト群で平均眼圧が切替え前17.0±3.4mmHgから4週間後15.7±3.1mmHgへ有意に下降し、ラタノプロスト点眼と同等またはそれ以上の効果が確認されています。

 

参考)2群並行比較によるラタノプロストとタフルプロストの眼圧下降効…

タフルプロストとラタノプロストの副作用プロファイル比較

両薬剤の副作用には共通点と相違点があり、患者個々の状態に応じた選択が重要です。タフルプロストの主な副作用は結膜充血(26.5~36.7%)、眼そう痒症(12.2%)、眼刺激(8.2%)と報告されており、すべて軽度でした。一方、ラタノプロストでは6か月間の使用で睫毛異常、虹彩色素沈着、眼瞼色素沈着の順に副作用が多く認められました。

 

参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/114_436.pdf

結膜充血に関しては、タフルプロスト切り替え群で改善傾向が見られています。切替え前に充血があった9眼のうち7眼で改善が確認され、点状表層角膜炎がある23眼では12眼で改善しました。眼刺激症状については、ラタノプロスト継続群でかすみ感の訴えが2例から4例に増加したのに対し、タフルプロスト切り替え群では「しみる」と訴える症例が5例から2例に減少しました。

 

参考)ラタノプロストからタフルプロストへの切替え効果 (臨床眼科 …

プロスタグランジン関連薬に特徴的な副作用として、虹彩・皮膚への色素沈着、睫毛の異常な伸長、上眼瞼溝深化(DUES)があります。これらの副作用は同じプロスタグランジン製剤でも薬剤によって発現頻度が異なり、薬剤変更で改善する可能性があります。DUESは可逆性の副作用であり、中止または変更すれば元に戻ることが知られています。睫毛の異常伸長については、長く太く多くなる傾向があり、点眼後に皮膚付着した液成分を拭き取ることが推奨されます。
参考)緑内障点眼あれこれ~プロスタグランジン関連薬~

重大な副作用として、タフルプロスト点眼液では虹彩色素沈着が報告されています。ラタノプロストでもぶどう膜炎、虹彩炎、角膜上皮障害、眼瞼炎などが発生する可能性があります。副作用により試験を中止した症例は、タフルプロスト群で1例(2.0%)であり、眼充血および眼瞼炎の発現により中止しましたが、副腎皮質ステロイド薬投与により約2か月で回復しました。

 

参考)https://www.feldsenfpharma.co.jp/dcms_media/other/Tafl-2.pdf

タフルプロストとラタノプロストの保存剤と製剤特性の違い

保存剤の有無は、長期使用における安全性と忍容性に大きく影響します。タフルプロストは基本的に防腐剤無添加(preservative-free)製剤として開発されており、角膜上皮障害や接触性皮膚炎のリスクが低減されています。一方、ラタノプロストには保存剤含有製剤と防腐剤フリー(PF)製剤の両方が存在します。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8225154/

防腐剤無添加製剤は、特殊な二重ボトル構造のPFデラミ容器を使用することで、1回使い切りではないにもかかわらず清潔さを保つことができます。
点眼薬は開封後繰り返し使用されるため、通常は細菌などの微生物による二次汚染防止の目的で防腐剤が添加されていますが、防腐剤の細胞毒性による角膜上皮障害やアレルギー反応が臨床上の問題となってきました。

 

参考)PF点眼薬(防腐剤無添加)|ロートニッテン株式会社

韓国の緑内障患者を対象とした多施設前向き研究では、防腐剤フリータフルプロスト、防腐剤フリードルゾラミド/チモロール、保存剤含有ラタノプロストを比較し、眼表面疾患を有する患者における有効性、患者満足度、安全性が評価されました。12週間の観察期間で、OSD Index(OSDI)スコアの変化が主要評価項目とされ、眼圧(IOP)の変化や患者報告による治療満足度も評価されました。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8874539/

保存剤に関するもう一つの重要な知見として、保存剤含有プロスタグランジン製剤から防腐剤フリータフルプロストへ変更した研究があります。118名の患者が以前にラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロストのいずれかの保存剤含有製剤を使用しており、防腐剤フリータフルプロストへ変更後、眼圧は効果的にコントロールされ、眼症状と臨床所見が改善しました。中等度から重度の充血を示す患者は、ベースライン時の51名(43.2%)から最終観察時には2名(1.9%)に減少しました。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3104790/

タフルプロストとラタノプロストの臨床選択基準と使い分け

緑内障治療における薬剤選択では、眼圧下降効果、副作用プロファイル、患者の眼表面状態、コンプライアンス、経済性などを総合的に判断する必要があります。プロスタグランジン関連薬は眼圧下降効果に優れ、全身的な副作用もないため緑内障治療の第一選択となっています。

 

参考)https://kango-oshigoto.jp/media/article/62183/

患者の使用感に関する調査では、タフルプロスト切り替え群16例のうち7例がタフルプロストの継続を希望し、5例はどちらでもよいと答えており、使いやすさではタフルプロストを選択する患者が多い傾向が見られました。これは、刺激感の軽減や充血の改善といった自覚症状の改善が関与していると考えられます。​
眼表面疾患を有する患者では、防腐剤フリー製剤の選択が推奨されます。特に、点状表層角膜炎や結膜充血が認められる症例では、保存剤含有製剤から防腐剤フリータフルプロストへの変更により、臨床所見と自覚症状の両方が改善することが報告されています。長期使用が必要な緑内障治療において、眼表面への影響を最小限に抑えることは、治療継続性の観点からも重要です。​
正常眼圧緑内障患者においても、タフルプロストは有効な治療選択肢となります。正常眼圧緑内障を対象とした第III相試験では、タフルプロスト群で有意な眼圧下降が認められ、副作用発現率はプラセボ群と比較して高かったものの、すべて軽度であり、副作用による中止例は1例のみでした。​
多剤併用療法を受けている患者において、ラタノプロストからタフルプロストへの変更による追加の眼圧下降効果も報告されています。既存のプロスタグランジン製剤で目標眼圧に到達していない症例では、受容体親和性の高いタフルプロストへの変更を検討する価値があります。ただし、同じプロスタグランジン製剤間での変更であるため、作用機序が異なる他の薬剤との併用も選択肢として考慮すべきです。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/d0cd8e86a9a1c7e2be39800861fee105c059581b

タフルプロストとラタノプロストの薬価と医療経済性における独自視点

医療経済性の観点から、薬価と治療コストの比較は医療機関運営と患者負担の両面で重要な検討事項です。ラタノプロストの薬価は後発品で151円/mL程度であり、1本(2.5mL)あたり約377.5円となります。一方、タフルプロストの後発品は279.1円/mL程度で、1本あたり約697.75円とラタノプロストの約1.85倍の価格設定となっています。

 

参考)商品一覧 : 眼圧降下薬

防腐剤フリー製剤を選択する場合、ラタノプロストPF点眼液も選択肢となります。PFデラミ容器を使用した防腐剤無添加のラタノプロスト点眼液は、特殊容器のため容器が大きくなっていますが、治療に必要な量(2.5mL)は十分に含まれています。防腐剤フリー製剤の薬価は通常の製剤より高く設定される傾向がありますが、眼表面疾患を有する患者や長期使用が見込まれる症例では、副作用による追加治療コストを考慮すると、費用対効果が高い可能性があります。

 

参考)https://www.rohto-nitten.co.jp/upload/product/60/shidousen_latanoprostpf_7.pdf

興味深い点として、プロスタグランジン製剤の中では、長期療法における有効性でビマトプロスト0.03%が最も効果的であり、その後にラタノプロスト0.005%、トラボプロスト0.004%が続くという報告があります。ただし、副作用の発現率はラタノプロストが他のプロスタグランジン製剤より低い傾向にあり、忍容性と効果のバランスを考慮した選択が求められます。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9596770/

治療効果が不十分な場合の配合剤への移行も考慮すべき選択肢です。タフルプロストとチモロールマレイン酸塩の配合剤や、ラタノプロストとチモロールの配合剤が存在し、単剤併用よりも薬価が抑えられる場合があります。中国では防腐剤無添加のプロスタグランジン誘導体含有配合剤も承認されており、今後日本でも選択肢が増える可能性があります。

 

参考)薬価からみた緑内障点眼比較 価格ランキング

医療経済性を考慮した薬剤選択では、初期治療コストだけでなく、副作用による追加治療費、患者のコンプライアンス向上による長期的な視野保存効果、ジェネリック医薬品の利用可能性なども総合的に評価する必要があります。眼圧コントロール不良による視野障害進行は不可逆的であるため、適切な薬剤選択により視野障害の進行を抑制できれば、将来的な失明リスク低減と医療費削減につながります。

 

正常眼圧緑内障を対象としたタフルプロストの臨床試験データ(日本眼科学会雑誌)
プロスタグランジンF2α誘導体製剤の薬理学的特性の比較(日本薬理学雑誌)