副腎皮質ステロイドの最も警戒すべき副作用の一つが感染症リスクの増大です。免疫抑制作用により、通常では問題とならない病原体に対しても感染しやすい状態となります。
主な感染症リスク:
・細菌感染症(肺炎、尿路感染症、皮膚感染症)
・ウイルス感染症(帯状疱疹、B型・C型肝炎の再活性化)
・真菌感染症(カンジダ、アスペルギルス)
・ニューモシスチス肺炎(特にプレドニゾロン20mg以上の場合)
感染症予防の具体的対策:
プレドニゾロン換算で20mg以上を使用する場合、ニューモシスチス肺炎の予防薬として**ST合剤(バクタ®)**を週2-3回投与することが推奨されます。ただし、皮疹や肝機能障害が出現した場合は代替薬への変更が必要です。
ステロイド性骨障害は、使用開始早期から発生する重要な副作用です。骨代謝に対する複数のメカニズムが関与し、可逆性と不可逆性の両方の変化を引き起こします。
骨代謝への影響メカニズム:
主な骨副作用:
骨副作用の管理:
骨壊死は不可逆的な合併症であり、早期診断にはMRI検査が有用です。股関節痛が出現した場合は迅速な精査が必要となります。
ステロイドは糖・脂質・電解質代謝に広範囲な影響を与え、ステロイド性糖尿病や高血圧などの生活習慣病を誘発します。
血糖代謝への影響:
糖尿病管理のポイント:
脂質代謝異常の対策:
高血圧の管理:
ステロイド開始後1-4週間で血圧上昇が認められることが多く、早期からの監視が重要です。
ステロイドによる精神神経症状は、用量依存性で出現し、患者のQOLに大きな影響を与えます。症状の多様性と個人差が大きいことが特徴です。
主な精神神経症状:
睡眠障害への対策:
気分障害への対応:
プレドニゾロン40mg以上で精神症状の出現頻度が高くなるため、高用量使用時は特に注意深い観察が必要です。症状は減量に伴って改善することが多いですが、完全な回復まで数週間から数ヶ月を要する場合もあります。
長期ステロイド使用により視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)が抑制され、急激な減量や中止により副腎不全が発症する可能性があります。これは生命に関わる重篤な合併症です。
副腎不全の病態:
副腎不全の症状: ⚠️
リスク軽減のための管理:
ストレス時の対応:
プレドニゾロン5mg以下まで減量できれば、副腎不全のリスクは著明に低下しますが、完全な回復には6-12ヶ月を要することがあります。
患者教育のポイント:
副腎不全は適切な管理により予防可能な合併症であり、医療者と患者の協力による長期的な観察が不可欠です。
日本リウマチ学会による副腎皮質ステロイドの詳細な使用指針
東邦大学医療センターによるステロイド治療の包括的な説明
田辺三菱製薬による外用ステロイドを含む副作用の詳細解説