卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤の分類と特徴
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤の主要分類
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世代別分類
プロゲスチンの種類により第1〜4世代に分類され、アンドロゲン作用が段階的に軽減
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用量別分類
エストロゲン含有量により中用量、低用量、超低用量に分類
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投与法別分類
28日周期型、連続投与型(フレックス)、段階型に分類
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤の世代別分類とプロゲスチンの違い
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤は、含有されるプロゲスチンの種類により第1世代から第4世代まで分類されます。各世代の特徴は以下の通りです。
第1世代:ノルエチステロン(NET)
- 最も古いタイプのプロゲスチン
- アンドロゲン作用が比較的強い
- 体重増加や多毛などの副作用が出やすい
第2世代:レボノルゲストレル(LNG)
- 避妊効果が高い
- アンドロゲン作用は第1世代より軽減
- 緊急避妊薬としても使用される
第3世代:デソゲストレル(DSG)
- アンドロゲン作用がさらに軽減
- ニキビや多毛の副作用が少ない
- 静脈血栓症のリスクがやや高い可能性
第4世代:ドロスピレノン(DRSP)
- 最新世代のプロゲスチン
- 抗アンドロゲン作用および抗鉱質コルチコイド作用を有する
- 浮腫軽減効果が期待できる
世代が進むにつれてアンドロゲン作用は「NET→LNG→DSG→DRSP」の順に弱くなり、副作用プロファイルが改善されています。
超低用量LEP製剤と低用量OC製剤の使い分け
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤は、使用目的により保険適用のLEP製剤と自費のOC製剤に分類されます。
LEP製剤(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠)
- 月経困難症、子宮内膜症などの治療目的
- 保険適用が可能
- エストロゲン含有量:20μg(超低用量)〜35μg(低用量)
OC製剤(経口避妊薬)
- 避妊目的での使用
- 自費診療
- 同成分でも適応が異なる
超低用量と低用量の使い分け
エストロゲン含有量により、さらに細分化されます。
- 超低用量(ULD):エチニルエストラジオール20μg
- 血栓症リスクの軽減
- 頭痛、吐き気などの副作用軽減
- 不正出血のリスクは増加
- 低用量(LD):エチニルエストラジオール35μg
- 不正出血の抑制効果が高い
- 血栓症リスクはやや高い
臨床では、まず超低用量から開始し、不正出血が頻繁な場合は低用量へ変更するのが一般的です。
フレックスタイプ配合剤の連続投与法と適応
フレックスタイプの代表であるヤーズフレックス配合錠は、国内初の連続服用可能なLEP製剤です。
ヤーズフレックス配合錠の特徴
- エチニルエストラジオール20μg(超低用量)
- ドロスピレノン3mg(第4世代プロゲスチン)
- 最長120日間の連続投与が可能
- 休薬期間は4日間
連続投与のメリット
- 年間出血回数の大幅な減少(年3〜4回程度)
- 休薬期間に伴う症状の軽減。
- 骨盤痛
- 頭痛
- 腹部膨満感
- 乳房痛
投与方法と注意点
- 最低21日間は連続投与を行う
- 2日を超える不正出血が続いた場合は休薬(リセット)
- 経験上、3〜4シート目での不正出血が多い
- 1相性のため、休薬後は飲みかけのシートから再開可能
フレックスタイプは月経関連症状の軽減に特に有効で、月経困難症や子宮内膜症患者のQOL向上に寄与します。
中用量配合剤プラノバールの臨床応用
プラノバール配合錠は、日本で長期間使用されている中用量の卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤です。
成分と特徴
- ノルゲストレル0.5mg(第2世代プロゲスチン)
- エチニルエストラジオール0.05mg(中用量)
- 効果は強いが副作用も強い
- 長期投与には不向き
主な適応症
- 機能性子宮出血
- 月経困難症
- 月経周期異常(稀発月経、頻発月経)
- 生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期調整
- 過多月経
- 子宮内膜症
- 卵巣機能不全
用法・用量
- 機能性子宮出血:1日1錠を7〜10日間連続投与
- 月経移動:状況に応じて調整
有効性
国内臨床試験において、機能性子宮出血に対する有効率は70.4%(152/216例)を示しています。
プラノバールは効果が確実である一方、吐き気や頭痛などの副作用が出やすいため、短期間の治療や緊急時の止血目的で使用されることが多いです。
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤選択時の血栓症リスク評価
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤の処方において、血栓症リスクの評価は極めて重要です。
血栓症リスク因子
- 年齢(40歳以上で著明にリスク上昇)
- 喫煙歴
- 肥満(BMI 30以上)
- 家族歴(血栓症、心血管疾患)
- 既往歴(血栓症、心疾患、脳血管疾患)
- 長期臥床
- 手術予定
エストロゲン製剤別リスク
- エチニルエストラジオール:血栓症リスクが最も高い
- エストラジオール:比較的リスクが低い
- 結合型エストロゲン(プレマリン):中等度のリスク
投与経路による違い
- 経口投与:肝初回通過効果により血栓症リスクが高い
- 経皮投与(パッチ、ジェル):リスクが比較的低い
- 筋肉注射:安定した血中濃度を維持
リスク軽減のための選択指針
- 40歳以上では経皮製剤を優先
- 喫煙者には処方を避ける
- 超低用量製剤の選択
- 定期的な血液検査による監視
血栓症は生命に関わる重篤な副作用であるため、患者の背景を十分に評価し、リスク・ベネフィットを慎重に検討した上で処方することが不可欠です。
バイエル薬品の臨床情報については以下が参考になります。
ヤーズフレックス配合錠の詳細情報