透析患者における尿量の変化は、透析開始からの年数と密接に関連している。大平整爾らの研究によると、透析治療開始後の経年的変化は以下のようなパターンを示す:
この経時的変化は、残存腎機能の自然な低下によるものであり、透析治療そのものが直接的な原因ではない。透析導入時には正常腎機能の10〜15%程度の機能が残っているが、これらも時間とともに徐々に失われていく。
透析患者の排尿量変化に関する詳細なデータと経年変化のパターンについて
無尿状態の発生メカニズムは、腎臓の糸球体濾過機能の段階的な喪失にある。正常時、腎臓の糸球体では1日約150〜180リットルの原尿が生成され、そのうち99%が再吸収されて1.0〜1.5リットルの尿として排出される。
透析患者では以下のプロセスで無尿化が進行する。
慢性腎臓病では、腎機能の回復は期待できないため、残存腎機能も進行性に低下し、最終的に完全な腎機能廃絶状態に至る。
大阪大学腎臓内科による透析患者の腎機能変化と無尿化プロセスの説明
透析導入後であっても、残存腎機能の評価は患者管理において重要な意味を持つ。残存腎機能は以下の方法で評価される。
200〜300ml程度の尿量でも残存していると、体重管理や電解質バランスの維持において大きなメリットがある。そのため、長期透析患者においても定期的な尿測は継続される。
残存腎機能の保護は透析患者の予後改善に直結するため、ACE阻害薬やARBなどの腎保護薬の適切な使用や、脱水の回避が重要となる。
無尿期に入った透析患者では、水分管理が治療成功の鍵となる。透析間での体重増加は理想的には前回透析終了時体重の3〜4%以内に収めることが推奨される。
水分制限の具体的方法。
血圧管理への影響。
無尿期では、体液量コントロールが血圧管理の中心となる。ドライウェイト(目標体重)の適切な設定により、昇圧薬に依存しない血圧管理が可能になることも多い。
透析効率の観点から、過度な体重増加は単回透析での除水速度を上昇させ、血圧低下や筋痙攣などの透析中合併症のリスクを増大させる。
無尿期透析患者に対する医療スタッフの役割は多面的である。看護師は患者の日常生活指導において中心的な役割を担い、以下の点に注意深く対応する必要がある。
日常生活指導のポイント。
心理的サポート。
排尿という基本的な生理機能の喪失は、患者にとって大きな心理的負担となる。「普通の生活ができなくなった」という喪失感に対し、適切なカウンセリングやピアサポートの提供が重要である。
家族指導。
家族に対しても水分制限の重要性や緊急時の症状について十分な説明を行い、患者の生活をサポートする体制を整える必要がある。
透析無尿は避けられない経過であることを患者・家族が理解し、適切な管理方法を身につけることで、QOLの維持が可能であることを伝えることが重要である。