透析無尿いつから始まる時期と患者の対処法

透析導入後、患者さんの尿量は年数とともに減少し、最終的に無尿状態となります。透析開始からどの程度で無尿になるのか、その過程と患者への影響について詳しく解説。透析患者にとって重要な排尿状態の変化を理解していますか?

透析無尿いつから

透析導入後の無尿化プロセス
2年経過で変化開始

透析導入から2年以上経つと500ml以上の尿量を保つ患者が急激に減少

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6年経過で無尿率上昇

透析歴6年以上では500ml以上の尿量を保つ患者がほぼいなくなる

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腎機能の完全廃絶

残存腎機能の徐々な低下により最終的に無尿状態に到達

透析導入後の尿量変化パターン

透析患者における尿量の変化は、透析開始からの年数と密接に関連している。大平整爾らの研究によると、透析治療開始後の経年的変化は以下のようなパターンを示す:

  • 1年未満:多くの患者が200ml以上の尿量を維持
  • 2〜3年:1日尿量500ml以上の患者が急激に減少
  • 6年以上:500ml以上の尿量を保つ患者はほぼ皆無となり、100ml未満の無尿に近い状態の患者が大幅に増加

この経時的変化は、残存腎機能の自然な低下によるものであり、透析治療そのものが直接的な原因ではない。透析導入時には正常腎機能の10〜15%程度の機能が残っているが、これらも時間とともに徐々に失われていく。
透析患者の排尿量変化に関する詳細なデータと経年変化のパターンについて

透析無尿発生のメカニズム

無尿状態の発生メカニズムは、腎臓の糸球体濾過機能の段階的な喪失にある。正常時、腎臓の糸球体では1日約150〜180リットルの原尿が生成され、そのうち99%が再吸収されて1.0〜1.5リットルの尿として排出される。
透析患者では以下のプロセスで無尿化が進行する。

 

  • 糸球体の機能廃絶:残存する糸球体数の減少により原尿生成量が低下
  • 尿細管機能の低下:水分・電解質の再吸収能力が減弱
  • ホルモン調節機能の喪失:ADH(抗利尿ホルモン)に対する反応性の消失

慢性腎臓病では、腎機能の回復は期待できないため、残存腎機能も進行性に低下し、最終的に完全な腎機能廃絶状態に至る。
大阪大学腎臓内科による透析患者の腎機能変化と無尿化プロセスの説明

透析患者の残存腎機能評価

透析導入後であっても、残存腎機能の評価は患者管理において重要な意味を持つ。残存腎機能は以下の方法で評価される。

 

  • 24時間蓄尿による尿量測定:最も基本的かつ重要な評価法
  • クレアチニンクリアランス測定:残存糸球体濾過率の評価
  • 尿素窒素クリアランス:代謝老廃物除去能力の指標

200〜300ml程度の尿量でも残存していると、体重管理や電解質バランスの維持において大きなメリットがある。そのため、長期透析患者においても定期的な尿測は継続される。
残存腎機能の保護は透析患者の予後改善に直結するため、ACE阻害薬やARBなどの腎保護薬の適切な使用や、脱水の回避が重要となる。

 

透析無尿期の水分管理戦略

無尿期に入った透析患者では、水分管理が治療成功の鍵となる。透析間での体重増加は理想的には前回透析終了時体重の3〜4%以内に収めることが推奨される。
水分制限の具体的方法

  • 飲水量の計算:前日の尿量 + 不感蒸泄量(約500ml)+ 透析除水予定量
  • 食事からの水分摂取:食材に含まれる水分量の把握
  • 塩分制限:1日6g以下で口渇感を軽減

血圧管理への影響
無尿期では、体液量コントロールが血圧管理の中心となる。ドライウェイト(目標体重)の適切な設定により、昇圧薬に依存しない血圧管理が可能になることも多い。

 

透析効率の観点から、過度な体重増加は単回透析での除水速度を上昇させ、血圧低下や筋痙攣などの透析中合併症のリスクを増大させる。

 

奈良県による透析患者の水分管理と栄養指導のガイドライン

透析無尿に対する医療スタッフの対応

無尿期透析患者に対する医療スタッフの役割は多面的である。看護師は患者の日常生活指導において中心的な役割を担い、以下の点に注意深く対応する必要がある。

 

日常生活指導のポイント

  • 体重測定の習慣化:毎日同じ時間、同じ条件での測定指導
  • 症状観察の教育:浮腫、息苦しさ、動悸などの早期発見方法
  • 緊急時対応:体重急増時の医療機関受診基準の明確化

心理的サポート
排尿という基本的な生理機能の喪失は、患者にとって大きな心理的負担となる。「普通の生活ができなくなった」という喪失感に対し、適切なカウンセリングやピアサポートの提供が重要である。

 

家族指導
家族に対しても水分制限の重要性や緊急時の症状について十分な説明を行い、患者の生活をサポートする体制を整える必要がある。

 

透析無尿は避けられない経過であることを患者・家族が理解し、適切な管理方法を身につけることで、QOLの維持が可能であることを伝えることが重要である。