DAS28の数値が高いほど治療効果が出ていると勘違いしている医師が約3割います。

DAS28(Disease Activity Score 28)は、関節リウマチ(RA)の疾患活動性を定量的に評価するためのスコアです。1990年代にオランダのNijmegenグループによって開発され、現在は国際的な標準ツールとして広く使用されています。
「28」という数字は、評価対象となる28関節の数を指します。両側の肩・肘・手首・MCP(中手指節)関節(各5関節)・PIP(近位指節間)関節(各5関節)・膝関節が含まれます。足関節や足趾は含まれない点に注意が必要です。
計算式は2種類存在します。
各変数の意味は以下のとおりです。
手計算は複雑です。現在は専用の計算ツールやアプリを使うのが標準的です。日本リウマチ学会のサイトでも計算ツールが提供されており、診察室でその場で算出できます。
参考:日本リウマチ学会によるDAS28解説
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/das28/
DAS28の数値は4段階に分類されます。この分類が治療方針の決定に直結します。
| 疾患活動性 | DAS28-ESR | DAS28-CRP |
|---|---|---|
| 🟢 寛解(Remission) | < 2.6 | < 2.6 |
| 🔵 低活動性(Low) | 2.6 〜 ≤ 3.2 | 2.6 〜 ≤ 2.9 |
| 🟡 中活動性(Moderate) | 3.2 〜 ≤ 5.1 | 2.9 〜 ≤ 4.6 |
| 🔴 高活動性(High) | > 5.1 | > 4.6 |
重要なのは、ESRとCRPで閾値が異なる点です。同じ患者であっても、どちらの計算式を使うかで判定が変わるケースがあります。これは見落としがちです。
たとえば、DAS28-ESRで3.3(中活動性)と判定された患者が、DAS28-CRPでは2.8(低活動性)と判定されることがあります。施設間で使用する計算式が異なると、治療評価の比較が困難になります。つまり施設内で統一が原則です。
T2T(Treat to Target)戦略においては、DAS28 < 2.6の寛解または低疾患活動性を治療目標とすることが推奨されています。ACR/EULARガイドラインでも同様の目標値が設定されており、3〜6ヶ月ごとの定期評価が標準とされています。
参考:ACR/EULARリウマチ管理ガイドライン(英語)
https://www.rheumatology.org/Practice-Quality/Clinical-Support/Clinical-Practice-Guidelines/Rheumatoid-Arthritis
DAS28の信頼性は、評価者の手技に大きく依存します。同じ患者であっても、評価者が変わるとスコアが変動することが研究で示されています。評価者間信頼性(inter-rater reliability)を高める訓練が必要です。
🔎 評価手順のポイント
VASスケールは0〜100mmのアナログ尺度で、「最高の状態」を0、「最悪の状態」を100として患者が自己評価します。患者の主観が入るため、来院状況(混雑・待ち時間など)によって数値がぶれることも珍しくありません。これは現場あるあるです。
一方、圧痛関節数と腫脹関節数は別々にカウントします。腫脹があっても圧痛のない関節、その逆も当然あります。両者を混同しないように、記録シートを使ったカウントが推奨されます。
日本では多くの施設でDAS28計算シートや電子カルテ内の計算ツールが整備されています。毎回同じ担当者が評価することで、経時的な変化をより精度高く追うことができます。一貫性が大切です。
DAS28は有用なツールですが、万能ではありません。臨床現場では「DAS28が低いのに患者の症状が改善しない」という矛盾が起きることがあります。
主な限界を整理します。
IL-6阻害薬使用中はとくに注意が必要です。
トシリズマブ投与患者では、CRPがほぼ0になるケースが多く、DAS28-CRPが人工的に低下します。そのため、CDAI(Clinical Disease Activity Index)やSDAI(Simplified Disease Activity Index)など、炎症マーカーを含まないスコアとの併用が推奨されています。
CDAI = TJC28 + SJC28 + 患者全般評価(0〜10cm VAS)+ 医師全般評価(0〜10cm VAS)
CDAIは検査値不要で計算できるため、外来での簡易評価に向いています。これは覚えておくと便利です。
参考:CDAI・SDAIの解説(日本語)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/nihonriumachi/-char/ja
数値が一人歩きすることがあります。DAS28の改善が画像上の骨破壊進行と一致しないケースが報告されており、特に早期RAにおいて関節破壊がスコアに先行することがあります。
日本リウマチ学会が2023年に改訂した管理指針でも、DAS28のみでなく画像評価(関節超音波やX線)を組み合わせた包括的評価が推奨されています。DAS28だけが全てではないということです。
臨床現場で「隠れた疾患活動性」を見抜くには、以下の視点が有効です。
このような複合的な視点を持つことが、優れたリウマチケアの核心です。
DAS28は「出発点」です。数値の変化を追うだけでなく、患者の生活機能(HAQ:Health Assessment Questionnaire)との乖離にも目を向けると、より患者中心の治療評価が可能になります。HAQは0〜3の36項目で構成され、日常生活の機能障害度を測ります。DAS28と合わせて確認するのが理想的です。
治療目標の共有という観点でも、DAS28スコアを患者に「見える化」して説明することが重要です。「3.5から2.4になりました」と伝えるより、「活動性が中程度から寛解の範囲に入りました」と解釈を添えると、患者の治療継続モチベーションが高まることが示されています。
数字に翻訳が必要です。医療従事者が数値の意味をわかりやすく伝える姿勢が、長期的なアドヒアランス向上につながります。
参考:日本リウマチ学会 関節リウマチ診療ガイドライン
https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline/