集中治療室に入院した場合、特定集中治療室管理料という入院料が算定されます。この管理料は施設の体制によって1から6まで区分されており、最も高い特定集中治療室管理料1では7日以内が14,406点(約144,060円)、8日以上が12,828点(約128,280円)となっています。3割負担の患者の場合、入院料だけで1日目から7日目は約4万円、8日目から14日目は約3万6千円の自己負担が発生します。clinicalsup+4
特定集中治療室管理料は施設の医療体制や設備基準によって区分されており、管理料1・2は「スーパーICU」とも呼ばれ、専任医師が常時ICU内に勤務し、特定集中治療の経験を5年以上有する医師を2名以上含むことが求められます。一方、2024年度の診療報酬改定で新設された管理料5・6は宿日直を行う医師の配置が認められており、7日以内が8,890点(約88,900円)と比較的点数が低く設定されています。mhlw+2
各管理料には重症度や医療・看護必要度の基準も設けられており、管理料1・2ではSOFAスコア5以上の患者が10%以上、管理料3・4ではSOFAスコア3以上の患者が10%以上という要件があります。これらの基準は、真に集中治療を必要とする重症患者の受け入れを促進するための指標となっています。mhlw+3
特定集中治療室管理料に加えて、実際に使用する医療機器や処置によって費用は大きく増加します。人工呼吸器は約5万円/日、体外式膜型人工肺(ECMO)は約20万4千円/日、人工透析は約8万円/日が追加されます。さらに、医学管理料として呼吸ケアチームや栄養サポートチームが関わると数千円の加算、毎日の血液検査・レントゲン・CT・エコーなどの検査料で数万円、大量の抗生剤・昇圧剤・鎮静剤・血液製剤などの投薬・注射料で数万円、中心静脈カテーテルの挿入・管理や気管切開などの処置料で数万円が必要となります。ryo-taro-rehabilitation+1
これらを合計すると、ICUでは1日あたり50万円から100万円近くの総医療費がかかることも珍しくありません。10日間のICU入院で総額1,000万円に達する可能性もあります。ただし、これはあくまで保険診療でかかる公的医療費の総額であり、患者の実際の自己負担額は3割(高齢者の場合2割)となります。jstage.jst+2
国立病院機構における事例では、無保険の外国籍患者がB型劇症肝炎でICUに31日間入院し、保険診療でかかる公的医療費のみで総額約600万円となったケースが報告されています。この事例では血漿交換などの人工肝補助療法に1日約40万円の追加費用がかかりました。jstage.jst
ICUの入院費用は高額療養費制度の対象となるため、月額の自己負担には上限が設けられています。この制度により、1ヶ月の自己負担上限額は所得に応じて約9万円から20万円程度(標準的な所得の場合)となります。例えば、年収約370万円から770万円の方で医療費が100万円かかった場合、窓口負担は30万円ですが、高額療養費として21万2,570円が支給され、実際の自己負担額は8万7,430円となります。askdoctors+3
高額療養費制度を利用する際は、70歳未満の方は医療機関の窓口に「限度額適用認定証」を提示する必要があります。この認定証を事前に取得しておくことで、窓口での支払いが自己負担限度額までで済み、一時的な高額の支払いを避けることができます。70歳以上の方は原則として認定証の提示は不要ですが、住民税非課税世帯や一定の所得区分に該当する場合は認定証が必要です。mhlw+1
注意すべき点として、高額療養費制度は暦月(月の初めから終わりまで)単位で計算されるため、月をまたいで入院した場合は各月ごとに自己負担上限額が適用されます。例えば1月26日から2月4日まで10日間ICUに入院した場合、1月分と2月分でそれぞれ約9万円から20万円程度を支払う必要があり、月初から月末までに入院を完了できる場合と比較して自己負担額が増加します。ryo-taro-rehabilitation
ICUにおいては、一般病棟と異なり差額ベッド代(特別療養環境室料)は発生しません。これは、ICUへの入室が病棟管理の必要性など治療上の理由によるものであり、患者の希望によるものではないためです。一般的に、治療上の必要性から差額ベッド室に案内された場合や、病院の都合で差額ベッド室しか空いていない場合には、患者から同意書によるサインを取っていなければ差額ベッド代を支払う必要はありません。coopkyosai+2youtube
一方、高額療養費制度の対象外となる費用もあります。入院時の食費負担は1食あたり460円(1日3食で1,380円)が標準負担額として患者負担となります。2週間の入院では食事代だけで約2万円が必要です。また、病衣やタオルなどのレンタル費用、テレビカード代、個人的な日用品などの費用も全額自己負担となります。kaigo.homes+1
海外と比較すると、日本のICU費用は公的医療保険制度により大幅に抑えられています。アメリカのニューヨークでは、ICU(集中治療室)の費用が1日8万ドルから10万ドル(約1,200万円から1,500万円)かかることもあり、日本の医療費水準が国際的に見て抑制されていることがわかります。medifellow+2
ICUの平均在室日数は施設によって異なりますが、一般的には3.4日から4日程度とされています。多くの患者は46.9%が1日以内、88.0%が1週間未満、96.2%が特定集中治療室管理料対象内の2週間未満に退室しています。ただし、重症例では2週間以上の長期入室となるケースもあり、全体の約3.8%を占めます。hosp.jihs+1
平均入院日数4日でICU費用を試算すると、特定集中治療室管理料1の場合で入院料だけで約16万円(3割負担で約4.8万円)、医療機器や処置を含めた総医療費では200万円から400万円(3割負担で60万円から120万円)となる可能性があります。しかし、高額療養費制度の適用により、実際の自己負担額は月額約9万円から20万円程度に抑えられます。medical0810+2
長期入室が必要な場合、特に急性期NST(栄養サポートチーム)が介入した症例では平均在室日数が12.3日と長期化する傾向があります。このような長期入室症例は、どの病棟でも診ることが困難な重症例であり、ICUの重要な機能の一つとなっています。医療従事者としては、患者家族に対して入院期間の見通しと費用負担について適切な情報提供を行うことが重要です。i-care-u+2
ICUの費用について患者家族に説明する際は、まず高額療養費制度の存在を明確に伝えることが重要です。総医療費が高額であっても、実際の自己負担額は月額約9万円から20万円程度に抑えられることを説明し、過度な不安を与えないよう配慮します。限度額適用認定証の事前取得により窓口での一時的な高額支払いを避けられることも併せて案内すべきです。hokepon+4
家族が患者の状態を理解し、医療費に関する不安を軽減できるよう、ICU医師や看護師は定期的な病状説明の機会を設けることが推奨されます。集中治療室では患者の状態が日々変化するため、治療方針や予想される入院期間、それに伴う費用についても柔軟に情報を更新していく必要があります。家族が質問しやすい雰囲気を作り、疑問や不安に耳を傾けながら困難な状況にある家族に寄り添うことが、医療従事者の重要な役割です。spch+1
また、ICUでは差額ベッド代が発生しないこと、食事代は自己負担となること、月をまたぐ入院では各月ごとに高額療養費制度が適用されることなど、具体的な費用の内訳を説明することで、家族が費用計画を立てやすくなります。医療ソーシャルワーカーとも連携し、経済的な支援制度や医療費の支払い計画について相談できる体制を整えることも、患者家族への包括的なサポートとして重要です。mhlw+4
厚生労働省の高額療養費制度に関する詳細な情報は以下で確認できます。
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
日本集中治療医学会による集中治療室の使用状況とアウトカムに関する研究報告も参考になります。