アキレス腱とコレステロール測り方と超音波評価

アキレス腱の「厚み」は、血中コレステロール高値が長く続いたサインとして注目されます。医療従事者が押さえるべき測り方(触診・超音波)と解釈、次の一手を整理しますが、あなたの現場ではどこから運用しますか?

アキレス腱とコレステロール測り方

アキレス腱とコレステロール測り方
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まず「何を測るか」を統一

セルフチェックは目安、医療では「アキレス腱厚(ATT)」を最大肥厚部で評価し、再現性を最優先します。

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超音波は標準化が鍵

体位・探触子角度・圧迫の強さで値がブレます。標準手技に沿えば外来でも短時間で実装可能です。

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所見が出たらFHを想起

アキレス腱肥厚は家族性高コレステロール血症(FH)を疑う強い手がかり。LDL-Cと家族歴の再確認が次のアクションです。

アキレス腱のコレステロール測り方:まず病態(黄色腫・肥厚)を押さえる


アキレス腱を「コレステロールの測定器」として扱うと誤解が起きやすいのですが、実際に見ているのは血液中の一時点の値ではなく、「LDLコレステロール高値が長期間続いた結果として腱に脂質が沈着し、腱が厚くなる」という“履歴”に近い情報です。国立循環器病研究センターの解説でも、FHではアキレス腱にもコレステロールがたまって厚くなること、そしてアキレス腱厚がFH診断の重要項目であることが示されています。
ここで重要なのは、アキレス腱肥厚=即FH確定ではない点です。超音波の標準的評価法でも、アキレス腱断裂、アキレス腱部痛、関節リウマチなど既往の影響、スポーツ歴などの影響に触れ、「両側を参考に」「既往歴を聴取し慎重に判定」することが明記されています。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ed51312b98749ecab181ec61a2a8d9809fc6a160

一方で、臨床的インパクトは大きく、見逃すと患者の将来が変わります。FHは動脈硬化が進みやすく、冠動脈疾患の発症が一般より早い傾向があるため、早期発見・早期治療が重要とされています。


医療従事者向けに言い換えるなら、「脂質異常症の人を見たとき、採血データだけで完結させず、身体所見として“腱”を見ると拾える患者がいる」という話です。触診で違和感を覚えた段階で、LDL-Cの過去値(治療前)や家族歴、早発冠動脈疾患の有無へと問診が自然につながります(超音波マニュアルでも、ATT肥厚と判断した場合はLDL-Cや家族歴を再確認するよう注意喚起されています)。

意外に知られていない現場の落とし穴は、「疼痛がない=腱は正常」と思い込みやすい点です。腱黄色腫は必ずしも痛みを伴うとは限らず、患者本人は“昔からこんなもの”として見過ごすことがあります。だからこそ、脂質異常症の診療では、足関節周囲に視線を落とす習慣が効いてきます。


アキレス腱のコレステロール測り方:セルフチェック(つまむ・幅)をどう扱うか

一般向け情報では、アキレス腱をつまんで厚みをみる方法が紹介されることがあります。例えばテレビ番組紹介ページでは、「椅子に座って足を組み、アキレス腱の一番細い部分をつまんで指の間の長さを測る」「1.5cm以上だとコレステロールが高い可能性」といった説明があります。
医療従事者としては、ここを“否定”から入るより、“位置づけ”を言語化する方が安全です。つまり、セルフチェックは「受診動機の補助」にはなるが、診断や重症度評価の根拠にはできない、と整理します。理由は単純で、つまみ方・角度・圧迫の強さ・足関節の肢位・浮腫や皮下脂肪などで値が揺れ、さらに「幅」と「厚さ」を混同しやすいからです(国循の説明でも、触診は横幅、X線は縦幅を測る矛盾が指摘されています)。


ただ、セルフチェックが“完全に無意味”かというとそうでもありません。患者が「最近太くなった気がする」「硬い感じがする」と言語化できること自体が、医療側の観察ポイントを明確にします。ここでのコツは、患者の言う“太い”をそのままATTと解釈せず、①両側差、②硬さ、③腫脹や疼痛、④断裂歴、⑤スポーツ歴、⑥脂質異常症の治療歴(いつから薬を飲み始めたか)をセットで聴取することです(既往やスポーツ歴に注意する点は標準的評価法にも記載があります)。

外来での実務上は、セルフチェックの訴えがあった患者に対し、次の流れが現実的です。


  • まずは足関節周囲を視診し、アキレス腱の輪郭が「皮膚から突出するように」目立たないか確認(FHでは突出するように肥厚することがあるとされています)。​
  • 触診で、左右差・硬さ・圧痛の有無を確認(ただし触診は定量評価が難しいことが問題点として挙げられています)。
  • 疑わしければ、超音波でATTを標準手技に沿って定量化し、LDL-C(未治療時の値)と家族歴へ展開します。​

なお患者説明では、「アキレス腱だけで血液のコレステロール値が何mg/dLかは分からないが、長く高い状態が続くと腱が厚くなることがある」と表現すると、誤解が減ります(国循でも、アキレス腱の厚さはLDL高値の状態の蓄積を反映すると考えられる旨が述べられています)。


アキレス腱のコレステロール測り方:超音波(ATT)標準的評価法と基準

医療現場で「測り方」を語るなら、主役は超音波です。日本超音波医学会・日本動脈硬化学会合同の標準的評価法では、FHが疑われる成人(15歳以上)で高LDL-C血症(未治療時LDL-C 180mg/dL以上)を認める場合に、超音波によるアキレス腱厚評価を実施することが適応として示されています。
体位は膝立ち位・座位・腹臥位が提示され、特に「座位」やベッド上での計測が推奨されています。さらに、足部を下腿軸と約90度に保ち、探触子と皮膚の角度を約90度にして観察する、といった“誰がやっても同じ値に寄せるための条件”が具体的に記載されています。

測定の最重要ポイントは、「最大肥厚部のATT最大値」を狙うことです。標準的評価法では、短軸像・長軸像ともに最大厚を測定し、アキレス腱がねじれながら踵骨に付着するため、単純な長軸描出では正しいATTを測れないこと、短軸像で最大肥厚部を同定してねじれ方向を考慮することが明記されています。

また、過大評価・過剰診断を避ける実務上の注意点も重要です。探触子を当てる方向でATTを過大評価しうること、皮膚を強く圧迫しすぎないこと、十分なエコーゼリー(またはゲルパッド)を使うことが繰り返し注意されています。

基準値は、超音波による「ATT肥厚」の診断基準値として男性6.0mm以上、女性5.5mm以上が提示されています。国循のプレスリリースでも、超音波のAT-T(厚さ)について男性6mm以上、女性5.5mm以上をFHの可能性が高い基準として設定したことが述べられています。

さらに“あまり知られていないが現場で効く”ポイントとして、標準的評価法は「健常者のATTは4~5mm程度」「FHでは4~20mm程度になることが多い」と幅をもって記載しています。つまり、境界域(例:男性5.8~6.0mm前後)や、治療早期介入例(若年から加療されている成人FHでは肥厚しないこともある)を想定し、所見が陰性でもFHを完全否定しない姿勢が必要です。

超音波で観察すべきは“厚さ”だけではありません。腱内に不均質で不整形な低エコー域(腱黄色腫を疑う所見)があり得ること、石灰化を疑う所見、線維構造(fibrillar pattern)の崩壊など、内部性状にも目配りするよう記載されています。

臨床での運用に落とすなら、次のチェックリストが使えます。


  • 🧍体位:座位またはベッド上、足関節90度を意識。​
  • 📡探触子:高周波リニア(例:7.5MHz)を使用。​
  • 🧴圧迫:ゼリーたっぷり、圧迫しすぎない。​
  • 📏測定:短軸で最大肥厚部を探し、ねじれ方向を考慮して最大厚を測る。​
  • 🧠解釈:男性6.0mm以上・女性5.5mm以上は「肥厚」としてFHを再評価(LDL-C、家族歴、治療前データ)。​

参考:超音波の具体的な体位・探触子角度・ATT測定手順(短軸・長軸、最大肥厚部、ねじれ考慮、基準値)がまとまっている
https://www.jsum.or.jp/uploads_files/guideline/shindankijun/measurement_achilles.pdf

アキレス腱のコレステロール測り方:所見が出た後の次アクション(FHスクリーニング連動)

ATT肥厚を捉えたら、次は「脂質異常症」一般論ではなく、FHをスクリーニングする動きに切り替えるのが合理的です。標準的評価法では、ATT肥厚と判断した場合にLDL-C値や家族歴を再度確認し、的確にFHを診断するよう留意する、と明確に書かれています。
現場で迷いがちなポイントは、「いま採血したLDL-Cがそれほど高くない」ケースです。すでにスタチン等で治療されている患者では、現在値だけ見ているとFHの可能性を落としてしまうため、未治療時のLDL-C、治療開始のきっかけとなった脂質値、家族内の早発冠動脈疾患を必ず拾いにいく必要があります(国循もFHの早期発見・早期治療の重要性に触れています)。


また、ATT肥厚を「冠動脈疾患リスクのマーカー」として扱う視点も実務的です。国循の研究紹介では、アキレス腱の厚さは年齢や性別、高血圧、糖尿病、喫煙など他のリスクと独立して冠動脈疾患や頸動脈硬化の重症度に関係することが示された、と説明されています。


ここは患者説明にも使えます。「この所見は、血管の動脈硬化リスクが高い可能性を示すサインになり得るので、採血だけでなく全身のリスク評価を一緒に進めましょう」という形です。すると、患者の納得感が上がり、家族への受診勧奨(カスケードスクリーニング)にもつながりやすくなります。


医療者の実装としては、次の順番が無理がありません。


  1. 超音波でATTを両側測定し、最大値・左右差・内部性状を記録(再現性確保)。​
  2. 脂質:LDL-Cの“未治療時”情報を収集し、治療歴と照合。​
  3. 家族歴:第一度近親者の早発冠動脈疾患、脂質異常症、突然死などを確認。
  4. 動脈硬化:頸動脈エコー等の評価を検討(ATTが重症度に関係する可能性が示されているため)。
  5. 必要に応じ専門医・専門外来へ紹介し、ガイドラインベースの治療強化につなげる。

参考:超音波でアキレス腱厚を評価でき、AT-T(厚さ)だけでなくAT-W(横幅)や断面積も計測できること、基準値設定の背景、臨床的意義が分かる
https://www.ncvc.go.jp/pr/release/20170801_press/

アキレス腱のコレステロール測り方:独自視点「ねじれ」と“測定誤差”を教育設計に落とす

検索上位の多くは「何mm以上で異常」「超音波で測れる」といった結論に寄りがちですが、チーム医療で実際に差が出るのは“測定誤差の制御”です。標準的評価法が繰り返し強調している通り、探触子の当て方で過大評価のリスクがあり、さらにアキレス腱はねじれ構造を持つため、最大肥厚部と方向を外すと「薄く見える」「厚く見える」が起こり得ます。
この特性を逆手にとって、施設内教育は「ねじれを理解できたか」を到達目標にすると実装が安定します。例えば、新人教育では“短軸で最大肥厚部を探す→ねじれ方向に長軸を合わせて確認→ATT最大値を決める”の手順をチェックリスト化し、合否判定を「値」ではなく「プロセス」で見る方が再現性が上がります(短軸・長軸で最大厚を測り、ねじれ方向を考慮することが明記されています)。

もう一つの独自ポイントは、レポートの書式です。ATTだけを書いて終わると、後から見返した時に「どの体位で、どの条件で、どちらの足で、最大肥厚部をどう同定したか」が不明になり、継時比較が難しくなります。標準的評価法には、体位の推奨、圧迫しすぎない、測定単位は0.1mm、画面を大きくして測定する、など“品質管理の要素”が具体的に並んでいるため、これをそのままテンプレ項目に落とすと監査にも強くなります。

現場向けテンプレ例(そのままカルテの定型文にしやすい形)。

  • 📝体位:座位/腹臥位下垂位、足関節90度。​
  • 📝プローブ:リニア高周波、ゼリー十分、圧迫最小。​
  • 📝測定:短軸で最大肥厚部同定、ねじれ方向考慮、ATT最大値(mm、0.1mm単位)、左右。​
  • 📝所見:低エコー域(腱黄色腫疑い)有無、石灰化疑い有無、線維パターン。​
  • 📝解釈:男性6.0mm以上/女性5.5mm以上で肥厚、LDL-C・家族歴を再確認。​

この“教育設計”まで踏み込むと、単なる情報提供記事ではなく、医療従事者が明日から動ける記事になります。あなたの施設で超音波計測を誰が担うのか(医師・臨床検査技師・放射線技師)、そして結果を誰がFHスクリーニングに接続するのか、役割分担を明確にして運用すると、アキレス腱所見が「見つけて終わり」になりません。




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