悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚の色素細胞(メラノサイト)やほくろの細胞(母斑細胞)ががん化したものです 。日本人に最も多い末端黒子型黒色腫は、手のひらや足の裏、爪などに発生することが特徴的です 。
参考)https://www.msdoncology.jp/melanoma/about/
早期診断のために重要なのがABCDEルールです。これは、A(形の非対称性)、B(境界の不整)、C(色の不均一)、D(直径6mm以上)、E(変化の有無)を指しており、これらの特徴がある色素性病変は悪性黒色腫の可能性があります 。
参考)https://ueno-keisei.net/mole-cancer/
悪性黒色腫の多くは、褐色から黒色のシミ(色素斑)や腫瘤として皮膚の表面にあらわれます 。特に注意すべきポイントは、思春期以後に気づいた黒~茶色のシミが数ヵ月以内に大きくなって6~7mmを超えてきた場合や、成人以後に指の爪に黒い線が入り、数ヵ月以内に数mm以上の幅になったりした場合です 。
参考)https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html
悪性黒色腫の診断における最も重要なツールは、ダーモスコピー検査です 。これは皮膚病変を10~30倍に拡大して観察する機器で、肉眼では確認できない特徴的な所見を捉えることができます 。
参考)https://p.ono-oncology.jp/cancers/mela/04_inspection/01.html
ダーモスコピーを用いると、足の裏などの皮膚表面に刻まれた「皮溝」と丘のように高くなった「皮丘」の観察が可能になります。正常なほくろでは皮溝部に色素が沈着しますが、悪性黒色腫では皮丘部に黒い色素が見られます 。
参考)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000288/
ダーモスコピーによる診断法に習熟した皮膚科医が早期の病変を診断した場合、診断精度が4~9倍向上すると報告されています 。確定診断のためには、病変を切除して採取した組織を顕微鏡で調べる生検が行われ、その後、転移の有無を調べるための画像検査(CT、MRI、PETなど)が実施されます 。
参考)https://momodani-hifuka.com/symptoms/symptoms05/
悪性黒色腫の治療における基本は外科的切除です 。特に早期ステージにおいては根治を目指す上で最も効果的な方法であり、腫瘍とその周囲の皮膚を十分に切除する「広範囲切除」が原則となります 。
参考)https://dojin.clinic/column/4930/
進行した症例に対しては、近年大きな治療の進歩が見られています。免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる治療薬が使用されており、免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体薬として点滴で投与されます 。また、BRAF阻害薬とMEK阻害薬を組み合わせた分子標的薬による治療も行われています 。
参考)https://p.ono-oncology.jp/cancers/mela/10_method/01.html
5年生存率はステージごとに大きく異なり、ステージI期で約90%以上、ステージII期で約70~80%、ステージIII期で約40~60%、ステージIV期で約15~20%となっています 。早期発見・早期治療により完治が期待できることから、定期的なセルフチェックと専門医受診が重要です 。
参考)https://ic-clinic-ueno.com/column/melanoma/
悪性黒色腫の最も重要な予防策は適切な紫外線対策です 。UV-Aは皮膚の深部に到達してメラノサイトに影響を与え、UV-Bは表皮に直接ダメージを与えてDNA損傷を引き起こします 。
参考)https://www.hiro-clinic.or.jp/dermatology/derma/dermatology-basics/skin-disease-guide/melanoma-prevention-uv-nutrition-checkup/
具体的な予防方法として、SPF30以上かつPA+++の広スペクトラム日焼け止めクリームを使用し、2時間に1回の塗り直しを基本とします 。また、UPF(紫外線保護係数)入りの衣類や長袖の薄手素材、つばの広い帽子、サングラスなどを活用した物理的防御も重要です 。
生活時間の調整も効果的で、紫外線強度が最も高い午前10時~午後2時の外出を避け、外出の時間帯を工夫することが推奨されます 。日常的なセルフチェックとして、ABCDEルールによる自己観察と定期的な専門医受診を習慣化することで、早期発見につながります 。
悪性黒色腫の進行度は、TNM分類に基づきステージ0からIVまでに分けられます 。ステージ0はメラノサイトが表皮内にとどまっている極めて早期の状態で、転移はありません 。
参考)https://www.hiro-clinic.or.jp/dermatology/derma/dermatology-basics/skin-disease-guide/melanoma-stages-treatment/
ステージI-IIは局所進行型で、腫瘍厚(Breslow厚)と皮膚表面の潰瘍の有無により細かく分類されます。I期では浅い厚さ、II期ではより厚く潰瘍形成を伴うものが含まれ、いずれもリンパ節転移には至っていないものの、再発リスクが増します 。
ステージIIIは近隣のリンパ節またはリンパ管への転移が認められる段階で、A、B、C、Dとさらに4段階に分類されているのが特徴です 。この段階では再発率が上がり、全身治療の併用が検討されます 。ステージIVは遠隔臓器への転移がある状態で、標準的に全身治療が必要になり、治療のゴールは延命および生活の質の維持となります 。
参考)https://p.ono-oncology.jp/cancers/mela/07_stage/01.html
悪性黒色腫は皮膚がんの中で最も悪性度が高い疾患ですが、早期発見・早期治療により完治が期待できます。近年の免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬の登場により、進行例においても治療成績は著しく改善しており、適切な知識と対応により、その脅威から身を守ることが可能です 。
がん情報サービス(国立がん研究センター)のメラノーマ(悪性黒色腫)に関する詳細情報
小野薬品工業による悪性黒色腫の検査と診断についての専門情報
MSDオンコロジーによる悪性黒色腫の原因と特徴に関する医療専門情報