大腸炎は大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こす疾患で、特に潰瘍性大腸炎は厚生労働省から指定難病として認定されています 。この病気は活動期と寛解期を繰り返し、血便を伴う下痢、腹痛などの症状を特徴とします 。原因は完全には解明されていませんが、免疫異常、遺伝的要因、腸内細菌叢の変化などが複合的に関与すると考えられています 。
参考)https://www.nanbyou.or.jp/entry/62
大腸炎の最も特徴的な症状は粘血便(ゼリー状の粘液に血液が混ざる便)です 。特に潰瘍性大腸炎では、血便を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛が代表的な症状として現れます 。初期症状としては下腹部の違和感があり、やがて下痢や便に血が混じるようになります 。病状が進行すると、血液以外に粘液や膿も混じった粘血便が生じやすくなり、炎症が広範囲に及ぶと体重減少を、出血量が多いと貧血を起こすこともあります 。
参考)https://www.onuki-clinic.com/colitis/
重症化すると発熱や腹痛が強くなり、さらには腸管からの大量出血、中毒性巨大結腸症、腸管の狭窄・閉塞、穿孔などの生命に関わる合併症を発症する可能性があります 。これらの症状は一般的に軽症から重症まで段階的に進行することが多く、適切な早期診断と治療が重要となります 。
参考)https://www.naishikyo-saito.com/ulcerative-colitis/
大腸炎は炎症の範囲によって主に3つのタイプに分類されます 。直腸炎型は炎症が肛門に近い直腸だけに限局しているタイプで、坐剤などの局所製剤が特に有効です 。左側大腸炎型は病変が結腸の脾彎曲部(下行結腸と横行結腸の境)まで広がったタイプです 。全大腸炎型は病変が脾彎曲部を越えて口側に広がっているタイプで、最も症状が重篤になりやすく、大腸がんのリスクも高くなります 。
参考)https://www.ibdstation.jp/aboutuc/type.html
病期による分類では、活動期(再燃期)と寛解期に分けられ、重症度による分類では軽症、中等症、重症、激症に分けられます 。一般的に病変範囲が広いほど症状が強く出やすくなり、全大腸炎型では手術率や死亡率が高くなる傾向があります 。特に発症時の重症度が重いほど、罹患範囲が広いほど手術率、死亡率が高くなることが報告されています 。
参考)https://www.nanbyou.or.jp/entry/218
大腸炎の発症には免疫異常が大きく関与しており、遺伝的要因、食生活、腸内細菌叢などの複数の要素が影響すると指摘されています 。しかし、明確な原因はまだ完全には解明されておらず、これが根治的な治療法がない理由の一つとなっています 。感染性大腸炎の場合は、ウイルス、細菌、または寄生虫感染による一時的な状態で、最も一般的な原因はサルモネラ菌や大腸菌(E. coli)です 。
参考)https://www.medparkhospital.com/ja-JP/disease-and-treatment/colitis
ストレスも大腸炎の重要な誘因の一つとして知られています 。過労や睡眠不足、不規則な食生活などがストレスと相まって症状を悪化させることがあり、特に20~40歳代のストレスを受けやすい年代に多く見られます 。大腸は精神の影響を受けやすい、きわめてデリケートな臓器であり、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の機能にも異常を来すことが知られています 。
参考)https://www.fukui-naishikyo.jp/acute_enteritis/
大腸炎の診断には、症状の経過、食習慣・生活習慣、既往歴・家族歴、服用中の薬などの詳細な問診が重要です 。確定診断には大腸内視鏡検査が必須であり、この検査により炎症の程度とその範囲が確認でき、組織を採取して病理検査を行うことも可能です 。大腸内視鏡検査では、潰瘍性大腸炎に特有の腸内の病変が目視で確認でき、大腸の血管が見えにくくなったり、びらんが見えたりします 。
参考)https://www.arima-clinic.com/ibd/
血液検査では炎症の程度や栄養状態を確認し、便検査では感染症の原因を特定することができます 。特にウイルス性の腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなど)や細菌性の感染(サルモネラ菌、病原性大腸菌など)の場合は、便検査によって感染症の原因を特定することが重要です 。腹部X線検査や腹部造影検査(小腸)、胃カメラなどの追加検査も症状に応じて実施されます 。
参考)https://www.senju-ge.jp/media/ulcerativecolitis-inspection
大腸炎の治療は現在のところ完治に導く方法はありませんが、炎症を抑えて寛解状態を長く維持する治療が可能です 。基本的な治療薬として5-ASA製剤(サラゾピリンやペンタサなど)が使用され、炎症を抑えるステロイドや免疫調整剤、生物学的製剤による治療も行われます 。近年は使用できる薬の種類が増え、より効果的に症状を抑えたり、粘膜障害を改善したりすることが期待できます 。
参考)https://www.kanazawa-naisikyou.com/ulcerative-colitis/
ステロイド製剤は強力な抗炎症効果を持ち、特に中等症以上の患者さんの治療の中心となります 。外来では多くの場合プレドニゾロン20mg~40mg/日の経口投与が行われ、重症例では入院してステロイド強力静注療法が実施されます 。血球成分除去療法も治療選択肢の一つであり、症状が重篤で薬物療法で十分な効果が得られない場合には外科手術も検討されます 。
参考)https://www.ibdstation.jp/aboutuc/treatment.html
大腸炎の管理において食事療法は重要な位置を占めており、活動期と寛解期で食事内容を調整する必要があります 。活動期では消化しやすく、高エネルギー・高たんぱく・低脂肪・低残渣(低食物繊維)の食事が基本となります 。卵、大豆製品、脂肪の少ない肉類(鶏肉など)、魚類など高たんぱくの食べ物を積極的に摂取し、脂肪の多い食品や揚げ物、不溶性食物繊維、香辛料などの刺激物は控えめにします 。
参考)https://www.mochida.co.jp/believeucan/enjoyfood/
寛解期では基本的に厳密な食事制限は不要で、バランスのとれた食事を心がけることが重要です 。ただし、暴飲暴食を避け、刺激の強い香辛料(からし、わさび、唐辛子、タバスコ、コショウ類など)は控えめにし、アルコール類は少量、コーヒーは薄いものであれば摂取可能です 。過去にお腹の具合が悪くなった食材や料理は避け、個人差が大きい病気であるため、少量ずつ試して安心して食べられるものを見分けていくことが大切です 。
参考)https://agmc.hyogo.jp/nanbyo/operation/operation09.html